丘の上から通信

okakara.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

カテゴリ:人を描く( 60 )


2019年 07月 17日

クラシックを聴きに来た婦人

もうずっと以前のこと、知人の方々に誘われて
某コンサートホールで催されたガラコンサートへ行ったときのことです。

少し早めに席について開演を待っていたとき、
一階席にお座りの女性の手元から、キラッ!と鋭く強い光が見え、
思わずオペラグラスでそっとそのお席を見てしまいました。

まだ開演前の天井の照明の光を集めて、遠く脇の三階席にいた私の目に届いた光は
その婦人がつけていたダイヤモンドの指輪からのようでした。
きっと大粒で上質の石に違いありません。
数度、素晴らしい輝きが私の目を射たのでした。

高級な宝石や宝飾品というものにはまったく興味がないくせに、
そういう光の振る舞いをさせるダイヤモンドという石の性質に魅了された一瞬でした。

f0229926_15181222.jpg


「クラシックを聴きに来た婦人」(c)Tomoko Okada

(イラストレーションの無断使用及び複製・転載を禁じます)



by team-osubachi2 | 2019-07-17 15:42 | 人を描く
2019年 07月 14日

青い風の吹く日

梅雨も後半ですが、なんとも鬱陶しいお天気がずっと続いています。
さすがに飽きてきました。

とはいっても、時間とお天気だけは、
どんな国の王様でも、お金持ちでも買うことができませんので、
草木や動植物と同じく、人もジッと晴れるのを待つしかありません。

乾いた風が吹く日が待ち遠しいこの頃です。


f0229926_17211929.jpg


「青い風が吹く日」(c)Tomoko Okada

(イラストレーションの無断使用及び複製・転載を禁じます)


by team-osubachi2 | 2019-07-14 17:26 | 人を描く
2019年 07月 11日

お運びの男性(ひと)

若いときに、都内の小さな映画館で観たフランス映画があります。
イブ・モンタンさん主演の『ギャルソン』です。
パリのブラッスリーでお運び(給仕)として働くアレックス(イブ・モンタン)。
彼には小さな夢があって、その夢のためにコツコツと働いているのですが、
彼を取り巻く世界に登場する人物は、当時の私にはいずれもずいぶんな大人に見えました。
「あんな(中年の)年代でも夢を抱いて働いたり、恋をしたり、するんだなあ〜」と
いかにも若造の私は当時思ったのでした。

20年ほど前、ポルトガルを一週間ほど旅したとき、
入った飲食店の(厨房はもちろんのこと)フロアで働く男性は
若者というよりは、中年男性が多かったように見えました。
(むしろアルバイトと思しき若い女子たちの役立たずぶりにうんざりもしましたが)
揃いの給仕服を着て、または前掛けのようなエプロンをして、
きびきびと働くおじさんたちの姿が私にはとても好ましく映りました。

日本でも、かつて「喫茶店」と言われた類いのお店よりも、
現代ならではの「カフェ」の方が今や数を増やしている感がありますが、
若者だけでなく、揃いの制服姿で、きびきびと立ち働く
“おじさんたち”がもっといても良いのでは無いかしらん?と思うこの頃です。



f0229926_08591228.jpg


「お運びの男性(ひと)」(c)Tomoko Okada

(イラストレーションの無断使用及び複製・転載を禁じます)


by team-osubachi2 | 2019-07-11 18:41 | 人を描く
2019年 06月 15日

瞬間のいろ

もう何年も前に美容院で読んだ雑誌のコラムを
いまでもときどき思い出します。

著者が渋谷で人を待っていたとき、
同じく待ち合わせをしていると思われる白杖を持った青年に気がつきました。
何気に見ていたら、しばらくして渋谷のすごい雑踏の中、白杖を使って歩く女子が現れ、
なんの迷いもなくまっすぐに青年が立っている場所へと歩いてきて、
無事に合流し笑顔で目的地へと向かった・・・というようなお話でした。

著者の方は歌人です。
その鮮やかな出会いの光景を見た彼が綴った文章は、私の中で像を結びました。
目が見えない若い二人の手と手が触れた瞬間、
二人にはどんないろが見えていたのでしょう。

コラムを読んだ私の頭の中に浮かんだ光景。
それがいまだに忘れられずにいて、ときどき思い返しては、
二人が見た瞬間のいろに想像をめぐらせています。


f0229926_09240282.jpg

「瞬間のいろ」(c)Tomoko Okada

*イラストレーションの無断使用及び複製・転載を禁じます


by team-osubachi2 | 2019-06-15 10:05 | 人を描く
2019年 05月 15日

子どもでいられる時間

子どもが子どもでいられる時間って、とっても短いんだということが、
このごろになってわかるようになりました。

でも、その分、子どもの想像の翼は大人のものよりはるかに大きいのでしょう。

だって、彼らは、どこにあるかも知らない野生の王国にだって
いとも簡単に飛んでゆけるのですから。

f0229926_19444946.jpg


『子どもでいられる時間』(c)Tomoko Okada


*イラストレーションの無断使用及び複製・転載をかたく禁じます


by team-osubachi2 | 2019-05-15 20:38 | 人を描く
2019年 03月 19日

新学期

学校はそろそろ春休み。
一年間を学び終えて、春、どんな気持ちだったかなと思い返してみると、
仲良くなった友達と次の学年も一緒のクラスになれるかどうか、
このことがとても気がかりだったように思います。
そして、どんな先生が担任になるんだろう?といったことでしょうか。

思えば、学生だったころの、わずか一時間、たった一日のなんと長かったことでしょう。
週に五日(当時は六日)も学校で半日を過ごすのですから、
好きな友だちがいるかいないか、気のあう仲間がいるかどうか、
相性がいい先生に当たるかどうか、はとても大きなことだったのだなあ〜と
今ごろになって気づくのでした。

そこここで田んぼの土や、土手の早緑と、まだほのかに冷たい風の匂いが
思い出とともに鼻先をくすぐってゆきます。


f0229926_15503310.jpg


「新学期」(c)Tomoko Okada

*イラストレーションの無断使用及び複製・転載をかたく禁じます


by team-osubachi2 | 2019-03-19 15:55 | 人を描く
2019年 03月 13日

卒業

三月になって、どこからともなく漂ってくる沈丁花の香り。
この花の香に鼻をくすぐられると、学年の終わりの頃に抱いていた
言葉には言い表せないような漠然とした不安感や、
じき一学年分だけ先輩になる期待感や、卒業という大きな節目を迎えて、
自分が少しだけ年をとって立派になったシニア感などなど、
(もちろんそんな感触は、四月には一番下っ端になってすぐに掻き消されてしまうのですが)
いろんな感情が入り交じった頃の記憶が鮮やかによみがえってくるのでした。

この春卒業を迎える若い人たち。ご卒業おめでとうございます。
喜びも、不安も、期待も諸々、今しか持ち得ない瑞々しい感性をいっぱいに抱いて、
次のステージへとどうか元気に羽ばたいていってください。


f0229926_16052054.jpg


「卒業」(c)Tomoko Okada

*イラストレーションの無断使用及び複製・転載をかたく禁じます


by team-osubachi2 | 2019-03-13 16:09 | 人を描く
2019年 02月 21日

本番中

おぼろげな記憶ですが、あれは何年生の時でしたか、
おそらく小学校の秋の学芸会ででしょうか、クラスで劇の発表会をしたときに、
講堂のステージに一度だけ立ったことがありました。

脇ながら役をあてがわれて半纏を着るように言われましたから、
日本の民話ものだったかもしれません。
端役も端役、一言だけ台詞もあったのか、なかったのか。
お芝居の中身よりも、また、緊張したであろう出番よりも、
記憶の大半を占めているのはなぜだか薄暗いステージ裏の、
例えばそれは跳び箱やマットといった体育用具の独特な匂いなのでした。

大人になって、お芝居を観ていても、
表舞台以上にバックステージに興味が湧くのは今も変わりありません。


f0229926_16045678.jpg


「本番中」©Tomoko Okada

*イラストレーションの無断使用及び複製・転載をかたく禁じます


by team-osubachi2 | 2019-02-21 16:23 | 人を描く
2019年 02月 13日

そうは思ってない

大人に叱られたとき、たいがいは素直にシュンとなってました。
でも、内心、どこかで「ホントにそうかな?」と思うことも
たくさんあったかもしれません。

叱られて、本当に身に沁みたことって、
たぶん片手で数えられるくらいしかないのかもしれません。

もっとも、こちらは叱られた経験ばかりで、
自分が子供を叱った経験がないので、実のところよくはわかりませんが。


f0229926_11553759.jpg


「そうは思ってない」©Tomoko Okada

*イラストレーションの無断使用及び複製・転載をかたく禁じます


by team-osubachi2 | 2019-02-13 11:58 | 人を描く
2018年 12月 02日

小雪の日

師走に入っても、関東地方はまだ暖かい空気に覆われているようです。
こういう陽気で何が助かっているかというと、野菜のお値段と光熱費でしょうか。
それでも、北国からは雪の便りがちらほらと聞かれるようになりました。

小学生のころ、映画『八甲田山』よろしく集団登下校で
学校まで約3キロほどの道のりを歩いて通ったものでしたが、
そんな日本海側の豪雪地帯から一転、高校卒業後に空っ風の吹く東京にやってきた当初は
真っ青な青空が広がる真冬にかなり面食らった覚えがあります。
それでも、関東に雪が降りそうな日に「雪の匂い」が感じられたときには
やはり懐かしさを覚えたものでした。
さすがに太平洋側での暮らしも長くなり、いまではその感覚も鈍ってきたように思います。

これから本格的な冬を迎えますが、日照りや雨と同じように、
雪もどうか大層に暴れることがありませんようにと祈るばかりです。

f0229926_23181805.jpg

「小雪の日」©Tomoko Okada

*イラストレーションの無断使用及び複製・転載をかたく禁じます


by team-osubachi2 | 2018-12-02 10:28 | 人を描く