丘の上から通信

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2013年 07月 31日 ( 1 )


2013年 07月 31日

珈琲の苦み

先日、珈琲を喫しにあるお店に立ち寄った。
むかし自分が社会人となり、小さなデザイン事務所で働き始める以前から
ずっとそこでひっそりと静かに営業を続けているお店だ。

お店に入ったのはほぼ1年ぶりだったろうか。
相変わらず古くて落ち着いた佇まいはまったく変わりなかったけれど、
ふとカウンターを見て、あれ?っと思った。
今日はマスターいないのかな・・・?

・・・と、丁寧に珈琲を淹れる老人の手元を見てハッとした。
あれ?この人、マスターだ!?
まじめに丁寧に珈琲を淹れる手つきは
まごうかたなきここの店主のものである。
かつてこっそり盗み見しながらスケッチしたあの手なのである。
以前に見たマスターの面差しが、自分の記憶とまるで違ってちょっと驚いた。

「誰ともほとんど口をきかない頑固一徹な変わり者」と
知る人たちが噂する店主ではあっても、決して険しい感じは受けなかった。
それが、頭部の大きな変わり様に、
顔つきにまでなんともいえない苦みのようなものが現れていて、
一年の間に人間こうも雰囲気が変わるものだろうか?と
という疑念から、何度となく店主の顔を横目に見てしまった。

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お店を出たあと、近くの知人のもとに寄り、
この店主を知る人にうかがったところ、
「最近は私もぜんぜん見ていないからわからないけど、
もう何年も前から『やめたい、やめたい』って言ってたって噂よ。
そんなに(風貌が)変わったんだったら、よほど何か苦労をなさったか、
あとは体を悪くされたのかもしれないわねえ」とのことだった。

深煎りで酸味の少ない珈琲は苦みが効いていて
どちらかといえば紅茶寄りの私は、ここのミルクコーヒーのファンである。
珈琲好きの人の間でよく知られるこのお店も、店主の意向で、
ちいさな看板が表通りに掲げられなくなるときがいずれくるのだろう。
お客にとって、その日は突然やってくるに違いない。

またちいさなスケッチブック片手に
喫茶店や珈琲店をめぐり歩きたい気持ちになった。

by team-osubachi2 | 2013-07-31 14:53 | 日々いろいろ | Comments(2)