丘の上から通信

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2018年 07月 23日

豆腐を買いに

子供のころ、実家のある小さな村にも二、三件はお豆腐屋さんがありました。
もしかしたら、私の“はじめてのお使い”は
お豆腐屋さんへ豆腐を買いにいくことだったかもしれません。
一番近いところは斜め向かいのお家でした。
そこがお休みの日は、道筋の角まで行ったところまで、
小銭と小さなお鍋かボウルを持って買いに行ったものでした。

うちの田舎は北アルプス立山連邦の雪融け水が涌き上がる地域で、
どのお宅も水は地下の水脈からポンプで家ごとの蛇口に汲み上げるものでしたから
どんな暑い夏でも、それはそれは冷たい水が出るのですが、
お店を入ったところの、つねに満々と水がたたえられたおおきな水槽(?)に、
その日出来上がった白くて大きな塊があって、
注文を伝えると(たいがいは絹ごしの一丁か二丁ですが)
黒くて薄いゴムの前掛けをしたおじさんがその水槽に手を入れ
塊のひとつから必要な分を包丁で切って
持っていったボウルや小鍋に入れてもらったものでした。
(子供心にもそのゴムの前掛けはなんとも合理的に思えて、
自分も水遊びするときに欲しかった記憶があります)

それがいつしか一軒、また一軒と徐々に姿を消し、
私が高校生になるころには、お豆腐は村のうちのよろず屋さんや
町のスーパーで買うものになってしまいました。

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かつてどこの村や町の片隅にあったお豆腐屋さんこそは
昭和のひところには絶滅危惧種みたいなお商売のひとつだったのだなあと
なくなってしまってから、その小商いの風情を懐かしく思い出すのでした。

もちろん、いまもコツコツとお商売をやっていらっしゃるお豆腐屋さんが
全国のまだどこかにあるに違いありません。
そんなお豆腐屋さんがもしもうちの近所にあるなら、ぜひ一丁買って帰って、
こんな暑い日のお昼や夕飯のおかずにして食べたいものだなあと思います。


「豆腐を買いに」©Tomoko Okada

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by team-osubachi2 | 2018-07-23 08:15 | 人を描く


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