2017年 04月 11日
Rehabilitation-11『鼻柱』
それまで務めていた広告制作会社を辞し、
バブル崩壊の世に二十代半ばでイラストレーターとして独り立ちしてからも、
いつの間にか四半世紀以上がすぎました。
家賃をはじめ必要な支払いと生活費が毎月毎月追いかけてきて、
楽ができた覚えなど一度もありませんが、
それでも腕一本脛一本、イラスト仕事だけで食べてこられたというのは
今思うとなんと夢のようで有難いことだったろうと思います。
ことに三十代のころは広告でも雑誌でも大きなお仕事をいただき、
勢いにのって、いっぱしに仕事が出来るような気になっていたものです。
けれども、時代の波というものでしょうか、
人生のターニング・ポイントを経てのちの自分の仕事ぶりといったら、
まるで迷路をさまよう鼠のように右往左往するばかり。
そうして自信を失くしていったあるとき、自分の鼻柱はボキッと折れてしまっていました。
あ・・・と思いました。
いったいいつの間に自分は「いっぱしに仕事が出来る人間」だなんて
そんなことを思い込むようになっていたのでしょう?
身動きのたびに壁のあちらこちらにぶつかって邪魔でしょうがないもの、
いってみれば意味をなさない自分勝手な矜持のような長い鼻柱が折れてしまうと、
面白いことに、その下には自分本来の鼻がちゃんとついていたではありませんか。w
長くもなく短くもない自分本来の鼻柱。そして気がついたのでした。
知らず知らず長くのびた自分の鼻柱を圧し折っていたのは、なんと自分自身だということを。
息をするのも身動きするのも楽で、自分本来の鼻柱でいるってなんて快適なんでしょう!
でも、気をつけないとピノキオのようにすぐにまた伸びてしまうかもしれませんが、
そのたびに自分で圧し折れる自分でいたいと思います、これからも。
by team-osubachi2
| 2017-04-11 22:00
| らくがき帖