木綿の袷もそろそろおしまい

暦によれば今日から七十二候の「雷乃発声」なんだそうだ。
えっと、「かみなりすなわちこえをはっす」って読むらしい。
はいはい、来た来た、もうばっちり春雷の季節。気温も気圧も乱高下する。

でも、この春雷で虫たちがお出ましになるそうだし、
季節も草木も生きものも、みんな新しく生まれ変わるには
ただのんびりと穏やかなだけじゃダメってことなのかもしれないね。

そんな気温の乱高下する中、
いま抱えてるお仕事の打ち合わせと取材に出かけてきた。

お訪ねしたのは、とある着付けの先生のお教室。

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お会いした方は、私などの若輩が云うのも失礼なのは承知で云わせていただければ、
お歳よりもうんと華やかでお美しい先生で、艶やかなお肌に、
ショートカットのお髪は自然なままのシルバーグレイ。
「普段は紬が好きなんですけども、今日はお目にかかると思いこれにしました」と
お召しの桜の江戸小紋がよくお似合いで、
お家のものを半幅に直されたという丸帯を洒落た結び方にされて、
実に若々しくお美しい先生でいらっしゃった。

取材した中味はいまは云えないけれど、夏にはカタチになっていることだろう。

取材先の先生の装いも素敵♡だったけれど、
この日同行した編集者さんのお召しものも私にはツボでとっても好ましかった。

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胸がキュンとなりそうな赤い矢絣お召の羽織♡の下は
小粋な縞木綿に更紗の帯といういでたちでいらした。

やあ〜、いいないいな!どちらの木綿ですか?とうかがえば、
山口はもと岩国藩の「柳井縞」という木綿なんだそうな。
「とても着やすいですよ」という編集者さんは
八掛けに男物の襦袢地をつけていて、そのちょっと男前でカッコイイ着物に
赤い羽織をあわせるってところがなんともニクい装いであった。

ひっそりとながら今も地方で織られている木綿があるって嬉しいことだ。
オーダーで織ってくださると聞いて、ちょっとドキドキ。お値段も優しい。
いつか私もどれか一反お願いしてみたいなあ♡

柳井縞/柳井縞の会HP
http://yanaijima.web.fc2.com/index.html

そういう私もこの日は書生気分の久留米絣に袖を通した。
こまかい井桁絣のこれはもう20年以上も着ている。
藍って染め終わった後も酸化するにつれ色が変化すると聞いたことがあるが、
はじめのころより明るかった藍の色もだいぶ濃くなった気がする。

木綿の袷もそろそろおしまい_f0229926_1052060.jpg

帯は友だちの絵理ちゃんがやってる『初屋』さんで出会った
ぜんまい織りの八寸に、清水焼の帯留め。

いよいよ桜花の本番を迎えて、ことさらな装いはしなくても
せめて小物くらいは桜ものを身につけたいじゃない?
桜が描かれたお扇子もこの季節の自分だけのお楽しみ。

木綿の袷もそろそろおしまい_f0229926_1045174.jpg

木綿はずっと単衣で着られます、っていうけれど
冷え性の私は袷も重宝にしている(裾さばきもいいしね)。
もっともよく袖を通すのは真冬と春先までで、
3月の花冷えの季節にはちょうどよかったりする。

はからずも、主役の先生は花のあるお召し物であったのに対して、
担当の編集者とイラストレーターはともに木綿の袷だったのを見て、
縁の下のチカラ持ちにはふさわしい着物だなと思ったことだった。
Commented by 朋百香 at 2016-03-30 14:41 x
tomokoさま
こ〜んなお打ち合わせなら、楽しいですね。この編集者さんはいつもお着物なんですか?この組み合わせ、ただ者ではありませんねぇ。
それに、なになに八掛に男物の襦袢地・・・恐れ入りました。
「柳井縞」というのも気になるところです。
「夏にはカタチに・・・」はい、楽しみにお待ちしております。

Commented by sogno-3080 at 2016-03-30 16:46
やっぱり私は振りから覗くお襦袢の色にめろめろ~♡♡
この前のと同じかしら。着物の色が違うとまた別の色にも
見えたりしますが?
取材の様子聞かせて頂いていると、本がますます楽しみに
なってきますね。
Commented by セージグリーン at 2016-03-30 19:44 x
先生のお召し物は、ちょうどこの時期にぴったりの色柄、
御髪の色によく映えるでしょうね。
そしてお二人揃って藍の木綿とは、今から息もぴったり。
編集者の方の矢絣も、柄の大きさがジャストだわ!
渋い着物と帯に紅白が映えて、なになに、帯締めがさりげなく
リフレインしていますよ。
Tomokoさんのおみ帯、細かい井桁の着物に優しさが加わって、何とも絶妙なバランスです。
細かい縞に絣はやはり王道ですね。
どんな企画でしょうか、、、楽しみです。
Commented by team-osubachi2 at 2016-03-30 20:00
朋百香さん
この担当さんは、お家ではお召ではないようですが、
人とお会いするとかお出かけするときなどなるべく着物で出かけるのだそうです。
もともと和文化に造詣が深い方でいらして、着始めたのは六〜七年くらいっておっしゃってたかな?
もうすでにご自分の美学がおありでした。
柳井縞ねえ、いいですよねえ?!館山唐桟ほどのしなやかさには欠けるようですが、
見た感じ打ち込みもしっかりしていそうで、着込めばいい風合いになりそうだなあ〜なんて涎たらしてます。笑
仕事、がんばりまっす!!
Commented by team-osubachi2 at 2016-03-30 20:11
sognoさん
はい、例の半襦袢の袖であります〜。半襟をね、付け替える前にもっかい着とこ思いまして。笑
さすがにこの年齢で金赤の朱を下に着るには、まだ枯れ具合が足りないんだろうなあって思っちゃいます。
(亡くなられた扇橋師匠がうんと枯れてから高座で黒紋付の下に着てらした金赤のお襦袢の着こなしには叶いませぬようで。
こんなの見つけました。えれえ若いころのですが)
https://www.youtube.com/watch?v=-6ooEUXO38k)よりも
これくらい濃いピンクの方が案外合わせやすいものだなあ、と思いました。
いかがですか?白い生地を染めてみませんか〜〜?
Commented by team-osubachi2 at 2016-03-30 20:27
セージグリーンさん
小柄ですが、華のある方だなあ〜と思いました。
お好きだとおっしゃる紬もお似合いと思いますが、この小紋の色目もとてもピッタリで・・・♡
担当さんの帯締めも見ていて桜重ねを思い起こすようで
こんな春コーディネートもいいものだなあと思いました。
私の八寸は、半分がほのかに鴇色系の糸、もう半分側はかすかに薄紫系の糸が織りこまれていて、
関西巻きにすればもっとシックな前帯になります。
無地帯ともまた違う感じで長く重宝しそうな帯です。
Commented by 神奈川絵美 at 2016-03-30 22:26 x
こんにちは!今日の記事のお写真、いつもにも増して「きゅんきゅん」するものばかりです!赤い矢絣、可愛い~もし私が着たら、張り倒されそうですが(笑)。永遠のザ・着物という感じがします。ぜんまい八寸に清水焼の帯留めも、ストライクです☆
Commented by まぁ at 2016-03-31 01:55 x
あら、どれも素敵ですね
洒落た結び見たかったなぁと思いますがあまり撮るのも失礼だったかしら?
紫ですが手持ちの反物に編集者さんの着物に似た縞があり江戸小紋風ながらウール
和裁出来ないので普段着に何万もかけて仕立てるのも考え物で…
元気な内に母に仕立てて貰えば良かったなぁ
Commented by fuko346 at 2016-03-31 09:45
みなさん それぞれに自分に合うものがわかっていらして、そして自分の個性を引き立たせることをご存じの方々だなあと拝見しました。
Tomokoさんのよそおい、、、私は帯がつぼにどん、とはまっておりまして、じいっと見ています笑

木綿 このところ二箇所 その土地に根付いたものを見たばかりですが こういうものもあったのですね。
きっと各地にまだまだありますよね。
うれしくなりました。
(欲しい)(^.^)
Commented by kuma at 2016-03-31 19:38 x
はい 木綿はまだまだあります
TOMOKOさんのように木綿も袷を持ってると冬暖かく重宝です
藍絣はだんだん洗うほどに色が冴えるといいますね
きまってますTOMOKOさん
私もそろそろ木綿の単衣出そ
Commented by team-osubachi2 at 2016-03-31 19:50
絵美さん
赤い矢絣の羽織にはことにキュンと成ります〜♪
担当さんは絵美さんよりおねえさん世代と思いますので
絵美さんにも赤い羽織どしどしお召しいただきたく。(^ ^)b
でも不思議ですよね〜、赤いと着物では気恥ずかしいのに
コートやことに羽織だとイケル!っていうマジック♪
帯留めは玉を選んで、好みの色で紐を組んでもらったものですが
たまご色にしてちょうどよかったかなって思います。春によく登場させてます♡
Commented by team-osubachi2 at 2016-03-31 19:57
まぁさん
すみません、先生の変わり結び、写真は撮ったのですが、
結び方をそのまま仕事に使いますので、ここにはアップしませんでした。
(きっとまぁさんも見たことがある結び方を思います〜)
そのウールの反物、仕立てあがったら小粋にお召になれますね。
まあ、いいセーターを一枚買うつもりで仕立てるか、
そのままにしておくか、悩むところですね。
Commented by team-osubachi2 at 2016-03-31 20:13
fukoさん
十人十色の着こなし、似合い方、ありますですね。
私のぜんまい織の八寸、うんうん、Fukoさんお好きかも。笑
コンディションもいいのに、とってもお買い得品でした。
(大丈夫か〜?絵理ちゃん、いいの、それは儲けにならないけど、でもいいの、って云って/笑)

Fukoさんが訪ねられた木綿の故郷もよさげなものが生き残っていそうで、ああ、いいなあ、嬉しいなあって思いますですよね。木綿ラブ♡
今日は世田谷美術館へ行ってきましたが、ナポレオン時代のドレスの白くてうす〜〜〜いコットンに施された刺繍布や19世紀のコットンプリントが素晴らしかったなあ〜と、西洋は西洋でまた木綿ラブでした♡(シルクとレースもスゴかったですけど)お時間がありましたら、オートクチュール展とここ世田谷美術館、オススメです。
Commented by team-osubachi2 at 2016-03-31 20:23
kumaさん
そうなんですね、知りませんでした〜。
いやあ、もともとただの着物好きってだけで
染織にはド素人ですし、知らないことっていっぱいありますですね。
木綿の袷はあったかいですよね。そりゃまあ、ちょこっと重さは増しますが、ほんと冬場に重宝しています。
そりゃ麻を着ていた時代からみると、木綿の普及って劇的なあったかさだったんじゃないでしょうか。
うちはですね、この間から念願のベッド暮らしになったんですが、マットの上に煎餅のままの布団を敷いて寝ています。寸法があわないので、遠からず布団をベッドの大きさにあわせて打ち直してもらおうと考えています。描け布団も木綿なんですが、これも打ち直ししてもらおうと思ってます。棉はいいですねえ〜♡
あ、富山の銘菓に「五郎丸屋の薄氷」ってお菓子があるんですけど、箱の中に棉の敷き布団と掛け布団みたいに棉が詰めてあるのですよ。ほわほわです〜♪棉はいいですねえ〜♡笑
by team-osubachi2 | 2016-03-30 11:03 | 着物のこと | Comments(14)

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


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