ようこそ!新歌舞伎座

昨日、ついに開場なった新歌舞伎座の初日・第一部の公演を観て、
興奮冷めやらぬ心持ちで帰宅し、ふと気がついた。

そうだ、3年前、先代歌舞伎座のさよなら公演は
最後の千秋楽の日(2010年4月27日)、
亡くなられた団十郎さんの助六をいっとうおしまいに観たのだった。
http://okakara.exblog.jp/13555480/

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・・・あれから3年。
新歌舞伎座のこけら落としの切符など、はなっから諦めていたのに、
どういうご縁か、初日第一部の切符がこちらにめぐってきた。
それも懐かしい三階席で・・・。

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単なる偶然といえばそれまでなのだけど、
古い歌舞伎座のいちばん最後と、新しい歌舞伎座のいちばん最初を
まるで棚ぼたのようにして切符を手に入れて観に行けたというコトを思うと、
ああ、世の中にはこういうコトもあるんだなあ〜・・・と。

ようこそ!新歌舞伎座_f0229926_2055588.jpg

入場する前に今回切符をまわしてくださった方々にお礼を言い、
新しくまっさらな場内に入ってゆくとき、きっと私の後ろには、
鬼籍に入られた我が “歌舞伎鑑賞の師匠” もいただろうし、
おそらく「目には見えない、歌舞伎に所縁の深い人たち」も
たくさん見物に来ているんだろうな・・・という気がした。

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歌舞伎を観るのは、だからちょうど3年ぶりだ。
嬉しいことに、馴染みだった外観や、
三階席の壁の模様も天井の雰囲気もほとんど前と同じ。

・・・でも、やっぱり違うところもあるね。
煤けてないし、キレイになったし、観やすくなった。
ところがトイレに行こうとすると、あれえ〜?トイレはどこぉ〜?
身体がまだ馴染まないカンジである。

ようこそ!新歌舞伎座_f0229926_2154430.jpg

新設のエスカレーターで三階にあがると、
狭いロビーの壁面に、歴代の役者衆のポートレート・ボードがある。
その最後の方に居並ぶ面々を見て、みんな思ったに違いない。
ああ、なんでこの人たちがここにいるのだろう?・・・と。

ようこそ!新歌舞伎座_f0229926_21115534.jpg

私の座席は「西の1番」であった。
初日に1番なんて、なにやら縁起がいいではないか?
もっとも、芝居に集中するにはちょいとコツがいるこの席も
今日ばかりは場内をたっぷりと見渡せる「いいお席」である。

階下には、政財界のお歴々、元スポーツ界のあなたさん、女優のこなたさん、
なんとなくやんごとない方々の姿が見てとれた。
そして三階から上は、幕見の強者な見物客から大向こうのおじさんたち・・・。
(『熊谷陣屋』では、あの山川静夫さん、やっぱり東の袖で立って観てらした)

ようこそ!新歌舞伎座_f0229926_21323478.jpg←弁松のお弁当
お赤飯の重ね ♪

幕があいてからの拍手はスゴかった!
あー!この空気!み〜んな待ってたんだ、この日をこの瞬間を!
今日この場にいられるってだけでシアワセだ〜!

3年の間に、役者衆も変化していて、子役が大きくなっていたり、
ここにいればよかったのに・・・と、惜しまれる姿がいくつもあったり。
(『お祭り』の舞台に、勘九郎丈に手を引かれて登場した
七緒八くん、可愛かった ♪)

ようこそ!新歌舞伎座_f0229926_21162169.jpg

客席に波乃久里子さんの姿があった。
幕間に三階のポートレート・ボードにやってきて、見た人の話によると、
「あんたここで何してんのよ、はやく出てらっしゃいよ」と
亡くなった勘三郎さんの顔に声をかけていらしたそうだ。

『熊谷陣屋』で主人公の熊谷直実が坊主頭になって
いよいよ引っ込むというとき、こみあげるものがおありだったのか
波乃さんは吉右衛門さんの芝居を見ながら涙を拭いていらした。
その姿に、こちらまでジーンときてしまった・・・。

ようこそ!新歌舞伎座_f0229926_21475084.jpg←お隣に座っていた
お客さんのネイル ♪

第一部の舞台が終わってから、一階の土産売り場を覗いてみた。
第二部の開場が間近だったせいで全部は見れなかったけれど、
手ぬぐい一本と、資生堂パーラーの缶入りサブレを買って外に出ると、
このあとの第二部で総見するのか、華やかな出の衣装で現れた
新橋の芸者衆が人びとの注目の的になっていた。

ようこそ!新歌舞伎座_f0229926_021377.jpg

この先一年かけて行われるこけら落とし興行。
これからも歌舞伎の未来は大変なことの方が多いだろうけど、
新しいホームグラウンドで、若い観客も役者もともに育っていく、
どうかそんな劇場でありますように・・・。

この度はよいご縁をありがとうございました。
心から感謝 ♪

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おまけ:昨日初日も雨が降ってたけれど、気合い充分。
何人もの方に褒められたハレがましい姿も、
こんなステキな帯を貸してくれた友人のおかげ。
いろんな人たちに感謝した一日。本当にありがとうございました ♪

ようこそ!新歌舞伎座_f0229926_958345.jpg

Commented by りら at 2013-04-03 04:09 x
待ってました!って・・・私は当分行けそうもないのですが・・・
随分と天井が開放的で明るくなったんですねぇ。
前の歌舞伎座をあまり変えずに・・・と設計者のインタビューを見て、嬉しいなぁと思ってました。
次回帰国の折には、是非新生歌舞伎座に行ってみたいです!
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-03 10:25
りらさん
いやあ、幕があがって大向こうの「待ってました!」満場の拍手をお聴かせしたかったです。
今度来日のあかつきにはぜひいらっしゃってください。変わらないようで変わった新歌舞伎座です〜!いろんな課題がないワケじゃないでしょうが、いつかりらさんともお話したみたいに、また三階席がスカスカなんて時期がこないで欲しいですね。
Commented by 香子 at 2013-04-03 10:25 x
真っさらピンの劇場レポありがとうございます☆
期待が高まる~♪
そしてやっぱ、ここは弁松の赤飯弁当ですよね。
本日は昨日よりの雨に加え、風が強い!
めげずに行ってまいります(^0^)/
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-03 10:32
香子さん
>やっぱ、ここは弁松の赤飯弁当ですよね。
そうそう!そう思って、お向かいで買いました〜!!弁松さんも待ちかねた開場ですよね。
今日は嵐な朝ですが、中は別世界。どうぞ幕があがってヒノキの香りがほのかに香ってくる舞台を堪能してらしてください!
Commented by yukiko at 2013-04-03 12:12 x
まあ京都の若奥さま風♪ 雨にも関わらず、三階席まで訪問着の方が多く、若い男性の着物姿もずいぶん見られましたね。

先月の演舞場はそれこそスカスカ、大向こうさんの声も聞かれず寂しい限りでしたが、昨日はまさに「こうでなくっちゃ!」という活気に溢れてましたね。
私も旧歌舞伎座は団十郎さんの助六で終わったので感慨深いものがありました。全体に広々、明るくなった劇場でこんなに豪華な顔ぶれ、演目が見られるのは杮落としならでは、しばらく通うことになりそうですが....(≧∇≦)
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-03 14:15
yukikoさん
>まあ京都の若奥さま風♪
ふふふ、残念ながら「若奥さま」ぢゃあありませんけども(笑)、帯がいかにも京風(ぎをんの出、しかも関西巻きの方が前柄がキレイに出るという)なので、帯揚げは同じくぎをん街、着物は丹後・・・と、あえて京モンをあわせてみました ♪

>しばらく通うことになりそうですが....(≧∇≦)
はい、もう力の限りに通っていただいて(笑)。な〜んて人に言ってばかりいないで、自分でも通えるよう頑張らないとですね!うう〜ガンバ!
Commented by 櫻子 at 2013-04-03 17:03 x
歌舞伎座の変わらぬ姿に嬉しさ倍増でした。
幕間は人混みの中をもれなく劇場内パトロールで、
足が腫れてちょっと痛くなったというお土産付き(苦笑)
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-03 18:12
櫻子さん
>歌舞伎座の変わらぬ姿に嬉しさ倍増でした。
はい、ホントにそうでしたね。自分でもそんな嬉しさを感じました。
せっかくの初日、雨で大変でしたね。今日の午前中みたいな嵐よりはマシだったかもですが、でも傘を差しての移動、大変だったのでは?(それともお車でしたか?)こちらはまた今後おいおいに探検することにして、ホール内を楽しみました。足、どうぞお大事に〜。
Commented by 朋百香 at 2013-04-03 20:32 x
tomokoさま
いや〜、行ってないのに行ったような気分になれた
レポート、ありがとうございました。
tomokoさんの記事を読みながら、目に浮かび
ましたよ〜。伝わってくる舞台と客席の一体感。
本当に「こうでなくっちゃ」ですねぇ。
私も早く行きた〜い!
おきものと帯も、まるで一緒に誂えたかのように
ピッタリですね。
Commented by 神奈川絵美 at 2013-04-03 23:21 x
おおー、素晴らしい一日でしたね。私は五月に行くので、それまではいろんな方のレポート、楽しみにしたいと思っています。
七緒八くんの写真は、スポーツ新聞で見ました(笑)可愛いし、早くも風格があるような気が……。
お隣のご婦人のネイル、洒落ていますね。そしてTomokoさんがお締めになった帯も! すっごくステキです。
ハレの日に華を添えましたね。
それにしても、さよなら公演から早三年とは……過ぎてみればあっという間……。
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-03 23:27
朋百香さん
この高揚感と祝祭気分を、ぜひ朋百香さんもこけら落とし興行で味わってください!それに、やっぱり何度も通わないと新劇場の全体は把握しきれないですよね。うん、何度も足を運ぼうと思ったら、まずはしっかり稼がなくっちゃです。それに私、いまだ桟敷席だけは経験がないので、いつか一度でいいから桟敷席の雰囲気も味わいたいものです〜。
この帯にちょうど同じ黄色が入っていたおかげもあって、好きな色の組み合わせ方が出来ました。ホントにいろんな方が帯を褒めてました。自分のではないのに、なんだかこそばゆかったです。(笑)
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-04 01:08
絵美さん
はい、満喫してきました〜。私などはいまやゆるくしか観劇しない人間だのに(歌舞伎が大好きなことに変わりはありませんが)こんなご縁をいただいたりして、ありがたいコトですよね。絵美さんが行かれる5月は爽やかな季節でしょうから、(植えられたばかりでまだ落ち着きはないかもですが)屋上庭園の緑もそのころには青葉が茂っていい季節かもですね。
>さよなら公演から早三年とは……過ぎてみればあっという間……。
本当に・・・。三年前は私もこのブログを始めたばかりのころでして、まだまだ先だと思っていたらもうこんな。しかも年々加速していきますね。決して沢山でなくていいので、これから晩年に向かわれる(?)吉右衛門さんをそろそろまたゆっくりと追いかけたいキモチでいます。
Commented by はつき at 2013-04-04 07:36 x
「ああ、三年は夢だ…」という感じですね。三年といえど、いろいろなことがありました。梨園にも自分にも。そんな感慨で、幕が開いた瞬間、こみ上げてくるものが。あの場にいられたことに私も感謝してます。今後、歌舞伎座にご一緒する機会があれば嬉しいです。
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-04 08:26
はつきさん
>三年といえど、いろいろなことがありました。
本当にそうですね。はつきさんにも、梨園にも、東北にも、世の中にも。そのみんなみんなが、それぞれいろいろな課題を抱えつつも、未来に向かって進んでいるのですよね。自分も、いまの自分に出来ることをしつつ前へ前へ、と思います。
しばらくぶりの歌舞伎でしたが、吉右衛門さんの舞台、また少しずつでも追いかけたいと思っていますので、こちらこそ、機会がありましたらどうぞご一緒させてください!
Commented by haru_rara at 2013-04-04 10:50
Tomokoさんはゼッタイ行かれたはず、と思っておりました。
素敵な偶然が重なってお目出度さも末広がりでしたね。
この帯のなんと艶やかなこと。お着物の色、とても素敵です。
歌舞伎は大昔に一度観たきり。玉三郎を観た、ということしか憶えていないテイタラクです。
テレビで松井今朝子さんが、歌舞伎の未来について温かくキッパリとお話してくださいましたが、本当はこうして実際に足を運ぶことが伝統を支えるのでしょうね。
いつか、今度はちゃんとして、行きたいなと思いました。
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-04 13:21
haruさん
いやあ〜最初っからこの方、こけら落としの間、まして最初の数ヶ月は行かなくてもいいや、もっと空いてきたら行けばいい・・・な〜んて思っていましたので、まさかに切符がまわってきたときは、なんだかキツネにつままれたような気がしました(笑)。
松井さんのお話、私も見ました。研修生の制度もとても活きてはいますが、なんだかんだ閉ざされた世界でもありますから、止めてゆく人も実際には多いです。だから残って頑張っている人たちをより応援してあげたいなあ〜、と。それに、むかしは男子だけだった裏方にも女子が増えてきていますし、本当に好きで頑張っている縁の下の力持ちの人たちをそっと応援したいなあとも思います。伝統芸能だけではないですよね、工芸、民芸、いずこも抱える問題は同じですね。
もし東京へいらっしゃることがありましたら、いつかちょこっと幕見で覗いていくっていうのもよろしいかと。さすがに遠いですが、幕見だと会場全体を見渡せて面白いですし、長丁場拘束されませんしネ。何よりリーズナブルです。でも、東京へいらっしゃったら、私にも会う時間を是非こさえてくださいませ〜!(笑)気長にお待ちしております〜。^_^ )/
Commented by 楽艸 at 2013-04-08 17:52 x
知子さま~いらしたんですね。
私も初日、気合いいれて一部二部観てました。お目にかかれず残念。。祝祭・・・この初日を心待ちにしていた友人が不慮の事故で亡くなり、奥さまのお供をしての観劇。
本来なら喪服の気分をようよう地味目の色無地で参上しました。
故人がお好きだった役者の登場やシーンではもう奥さまと共に涙涙・・。

ついでにご一緒するといつも買ってくださった鯛焼きを筋書きと共にお供えしました。

一階席、桟敷では 持参のシャンパンをあけてるご婦人がたも見受けられましたよ。
幕間に走り回る呉服屋さん~ 番頭さん~ 

様々な人々の思いを込めての新歌舞伎座の船出に幸あれ!
Commented by team-osubachi2 at 2013-04-08 18:53
楽艸さん
まーー!そうでしたか?!それは会えずに残念でした!会えていたら、私、天井桟敷から手を振りましたのにねえ。そして、お友達が不慮の死とはまたなんてコトでしょ。その方はでも、きっと奥さまと共にいらっしゃったに違いないですね。奥さま、本当にお寂しい思いをされるのは、こういう祝祭が終わったあとではないでしょうか・・・。おいたわしいことです。
こちらは、この初日前日は私の歌舞伎の師匠の命日でした。亡くなられてもう13年になりますが、まさかに中村屋さんと成田屋さんが同じ鬼籍に入られて、この日を迎えるなどとはきっと思いもしなかっただろうなあ〜と思いました。
>様々な人々の思いを込めての新歌舞伎座の船出に幸あれ!
まったくです。人それぞれ、百人百色の心持ちで迎えた新歌舞伎座の開場。またゆるりと見守っていきたいと思っています。
by team-osubachi2 | 2013-04-03 01:07 | 出かける・見る | Comments(18)

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


by team-osubachi2
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