2012年 10月 09日
映画『夜の河』の着物
昭和の映画が好きで、ビデオ時代にレンタル屋へちょいちょい通い
たくさん見たつもりでも、レンタル屋では扱っていなくて、
見るコトが出来なかった作品がまだまだたくさんある。
吉村公三郎監督の映画『夜の河』もそのひとつだ。
今時はDVDになったのをネットでも簡単に買えるのに、
長い間そのまま放っておいたら、過日、友だちが
ケーブルテレビで放送していた『夜の河』を録ったというので
一枚ダビングしてもらって見てみた。
うわ〜〜!昭和30年代に入ったばかりの京都って
こんなにきれいな町なみ、家なみだったんだなあ〜!
・・・と、まずはそこに感動した。
美しい構図やアングルは、もちろんあの宮川一夫さんの撮影であ〜る。
主演の山本富士子さんがもう綺麗できれいで・・・!
華があって、正統な「日本美人」といえる顔かたちのべっぴんさんで、
二本足のうなじ、ぽってりとふくよかな手元に細くて華奢な指先。
着物を着たときの姿かたちや佇まいなどは、
伊東深水の画から抜けて出てきたかのようだ。
ウワサ(?)によれば、このきわのモデルは
卒寿を迎えられてなお艶やかな姿を着物雑誌などで見せてくださる
染織研究家のK先生だということだけれど、
自分の仕事と生きる道を自らのチカラで選び取ってゆくこのきわと、
若き日のK先生を自分勝手な想像で重ねて見ても
違和感を感じないからそうなのかもしれない。
女の腕一本で世間を渡ってゆくのは、
当時としてはとても気概のいることだったろう。
お話は、まあ、ひとことで言ってしまえばメロドラマ(死語?)なのだが、
(相手役が上原謙ってところがなんともまた・・・)
着物好きにとって、この映画の魅力はなんといっても
主人公のきわが着ている着物や帯がすこぶるモダンで魅力的だということ。
無地に見えるグレーのお召に、黄色地に四角い銀擦りがならぶモダンな帯、
淡い灰色に、刷毛で掃いたような青墨色の四角が並ぶお洒落着、
灰紫のグラデーションの格子に、芥子色の無地の帯、
帯の結び方がまたカッコよく決まっていて、
まだ(もう?)29歳という年齢で帯締めはグッと低めに締めている。
羽織丈がまたいい。長すぎず短すぎないひざ丈は私好みだ。
バッグは決まって持ち手のない細長いハンドバッグである。
いまも友だちのお母さんたちの箪笥や、
古着屋さんから出てくるローケツ染めの着物は
まさにこの時代の産物だということがよくわかる映画なのだけれど、
昭和31年の当時で、世間に「着物は時勢の波に取り残されるもんどすさかいに」
と言われてしまっているのを見るにつけ、
そうか〜、着物の生き残りのキビシさは
今にはじまったことではないのよねえ〜と思ってしまった。
映画の中に、主人公きわが恋した教授(上原謙)の研究対象の
赤いショウジョウバエが流れるように群をなして飛ぶ模様の着物が登場するのだが、
私個人的にはすこぶるOKで「好きかも!着てみたいかも!」と思った。
カタチは変わらない着物や帯でも、振り返ってみると
色や模様にはその時代の流行りと好みがくっきりと残るのである。
主人公のきわが着ている着物、どれも私は大好きだ。
物語と不思議な音楽は少々重くてべったりしているけれど、
山本富士子さんの姿と衣装は見ていてワクワクする映画である。
たくさん見たつもりでも、レンタル屋では扱っていなくて、
見るコトが出来なかった作品がまだまだたくさんある。
吉村公三郎監督の映画『夜の河』もそのひとつだ。
今時はDVDになったのをネットでも簡単に買えるのに、
長い間そのまま放っておいたら、過日、友だちが
ケーブルテレビで放送していた『夜の河』を録ったというので
一枚ダビングしてもらって見てみた。
うわ〜〜!昭和30年代に入ったばかりの京都って
こんなにきれいな町なみ、家なみだったんだなあ〜!
・・・と、まずはそこに感動した。
美しい構図やアングルは、もちろんあの宮川一夫さんの撮影であ〜る。
主演の山本富士子さんがもう綺麗できれいで・・・!
華があって、正統な「日本美人」といえる顔かたちのべっぴんさんで、
二本足のうなじ、ぽってりとふくよかな手元に細くて華奢な指先。
着物を着たときの姿かたちや佇まいなどは、
伊東深水の画から抜けて出てきたかのようだ。
ウワサ(?)によれば、このきわのモデルは
卒寿を迎えられてなお艶やかな姿を着物雑誌などで見せてくださる
染織研究家のK先生だということだけれど、
自分の仕事と生きる道を自らのチカラで選び取ってゆくこのきわと、
若き日のK先生を自分勝手な想像で重ねて見ても
違和感を感じないからそうなのかもしれない。
女の腕一本で世間を渡ってゆくのは、
当時としてはとても気概のいることだったろう。
お話は、まあ、ひとことで言ってしまえばメロドラマ(死語?)なのだが、
(相手役が上原謙ってところがなんともまた・・・)
着物好きにとって、この映画の魅力はなんといっても
主人公のきわが着ている着物や帯がすこぶるモダンで魅力的だということ。
無地に見えるグレーのお召に、黄色地に四角い銀擦りがならぶモダンな帯、
淡い灰色に、刷毛で掃いたような青墨色の四角が並ぶお洒落着、
灰紫のグラデーションの格子に、芥子色の無地の帯、
帯の結び方がまたカッコよく決まっていて、
まだ(もう?)29歳という年齢で帯締めはグッと低めに締めている。
羽織丈がまたいい。長すぎず短すぎないひざ丈は私好みだ。
バッグは決まって持ち手のない細長いハンドバッグである。
いまも友だちのお母さんたちの箪笥や、
古着屋さんから出てくるローケツ染めの着物は
まさにこの時代の産物だということがよくわかる映画なのだけれど、
昭和31年の当時で、世間に「着物は時勢の波に取り残されるもんどすさかいに」
と言われてしまっているのを見るにつけ、
そうか〜、着物の生き残りのキビシさは
今にはじまったことではないのよねえ〜と思ってしまった。
映画の中に、主人公きわが恋した教授(上原謙)の研究対象の
赤いショウジョウバエが流れるように群をなして飛ぶ模様の着物が登場するのだが、
私個人的にはすこぶるOKで「好きかも!着てみたいかも!」と思った。
カタチは変わらない着物や帯でも、振り返ってみると
色や模様にはその時代の流行りと好みがくっきりと残るのである。
主人公のきわが着ている着物、どれも私は大好きだ。
物語と不思議な音楽は少々重くてべったりしているけれど、
山本富士子さんの姿と衣装は見ていてワクワクする映画である。
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りら
at 2012-10-10 02:51
x
吉村公三郎、好きな監督なんですけど作品を見る機会がなかなか無くて・・・こちらでもっと見直されればいいのに~!といつも思ってます。
「混血児リカ ハマぐれ子守唄 」は貸しビデオ屋にあったりするんですけどねぇ。
昔の映画を見ると、着物に目がいきますよね。
あと、女優さんたちの身のこなしが勉強になります。
「混血児リカ ハマぐれ子守唄 」は貸しビデオ屋にあったりするんですけどねぇ。
昔の映画を見ると、着物に目がいきますよね。
あと、女優さんたちの身のこなしが勉強になります。
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tomokoさま
わ〜い、見たい見たい!
昭和31年、私は1歳でしたよ(笑)
そうか・・・山本富士子さんはこの頃、もう大人だった
のですね。 私は若尾文子さんとか京まちこさんとか
岩下志麻さんが好きでした。昔の女優さんは銀幕のスターっていうオーラがありましたよね。
古き良き時代だな〜。
わ〜い、見たい見たい!
昭和31年、私は1歳でしたよ(笑)
そうか・・・山本富士子さんはこの頃、もう大人だった
のですね。 私は若尾文子さんとか京まちこさんとか
岩下志麻さんが好きでした。昔の女優さんは銀幕のスターっていうオーラがありましたよね。
古き良き時代だな〜。
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team-osubachi2 at 2012-10-10 08:25
りらさん
吉村公三郎監品は他には「安城家の舞踏会」しか見たことないくせに、監督のお名前だけはよく聞いて知ってるって感じです(笑)。
山本富士子さんが工房のわきで紺絣をもろ肌脱ぎに髪を梳る場面なんて、痩せぎすでない豊かで若いお肌(だけどテレビで見ても細くて華奢なのがわかる体型)がもう水蜜桃みたいにキレイで、つい舐めるように見ちゃうんですよお〜〜(笑)。
昔の映画、やっぱり監督もですけど、結髪さんとか衣装さんとか、着物が普通の暮らしにある時代を肌で知ってる世代の仕事は違いますですよね〜。だから女優さんの着こなし方や所作も今とはだいぶ違うな〜って感じますもんねえ。映画は絵かきにとっても大切な資料です。
吉村公三郎監品は他には「安城家の舞踏会」しか見たことないくせに、監督のお名前だけはよく聞いて知ってるって感じです(笑)。
山本富士子さんが工房のわきで紺絣をもろ肌脱ぎに髪を梳る場面なんて、痩せぎすでない豊かで若いお肌(だけどテレビで見ても細くて華奢なのがわかる体型)がもう水蜜桃みたいにキレイで、つい舐めるように見ちゃうんですよお〜〜(笑)。
昔の映画、やっぱり監督もですけど、結髪さんとか衣装さんとか、着物が普通の暮らしにある時代を肌で知ってる世代の仕事は違いますですよね〜。だから女優さんの着こなし方や所作も今とはだいぶ違うな〜って感じますもんねえ。映画は絵かきにとっても大切な資料です。
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team-osubachi2 at 2012-10-10 08:38
朋百香さん
どこかで見る機会がありましたらぜひ見てみてください。お着物、素敵ですよお〜♬映画中に出てくるものは、まあ、時代のものですから、ある意味「もう古い」デザインではありますが、主人公きわが着ているものだけは今でも通用する着物や帯です。
それにしても、当時の京都に町なみの美しいこと!!池波正太郎さんも30年代の京都に江戸時代の匂いを感じたくてさかんに通った理由が見てとれる風景でした。あの町屋に住み暮らす大変さは、経験のない私には想像の外ですけども、ああ〜なんて惜しいことをしたものだろうと思います。何百年も在って、空襲にも遭わなかったものをどうして保存できなくなってしまったのかしら・・・と。(まあ、おおよそは世間で言われてる通りと思いますが)
どこかで見る機会がありましたらぜひ見てみてください。お着物、素敵ですよお〜♬映画中に出てくるものは、まあ、時代のものですから、ある意味「もう古い」デザインではありますが、主人公きわが着ているものだけは今でも通用する着物や帯です。
それにしても、当時の京都に町なみの美しいこと!!池波正太郎さんも30年代の京都に江戸時代の匂いを感じたくてさかんに通った理由が見てとれる風景でした。あの町屋に住み暮らす大変さは、経験のない私には想像の外ですけども、ああ〜なんて惜しいことをしたものだろうと思います。何百年も在って、空襲にも遭わなかったものをどうして保存できなくなってしまったのかしら・・・と。(まあ、おおよそは世間で言われてる通りと思いますが)
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神奈川絵美
at 2012-10-10 23:18
x
うわー、色彩がキレイですね。主人公はK先生がモデルなのですか。私も思わず、若き日の先生を想像してしまいました。上原謙も、私には渋カッコいいおじいちゃんという記憶しかないので、何ともこういう時代の映像を見るのって、新鮮な驚きがあるのでしょうね。
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team-osubachi2 at 2012-10-11 09:33
絵美さん
K先生の今もお姿から若き日のことを想像してみましたが、やっぱり気骨(とっても優美な気骨、ですが)ある生き方をしてこられたんだろうなあ〜、と映画を見てあらためてそんな想像してみました。
写真を撮ったシーン(3枚目)できわが広げる絵羽もんの着物はさすがにどれも素敵そうでした。昭和31年の銀座四丁目の風景も素敵でしたよ ♬
上原謙さん、ある意味(?)役にピッタリでしたね(結局はきわに去られる)。
K先生の今もお姿から若き日のことを想像してみましたが、やっぱり気骨(とっても優美な気骨、ですが)ある生き方をしてこられたんだろうなあ〜、と映画を見てあらためてそんな想像してみました。
写真を撮ったシーン(3枚目)できわが広げる絵羽もんの着物はさすがにどれも素敵そうでした。昭和31年の銀座四丁目の風景も素敵でしたよ ♬
上原謙さん、ある意味(?)役にピッタリでしたね(結局はきわに去られる)。
by team-osubachi2
| 2012-10-09 23:47
| 着物のこと
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