足袋の思い出

20代から30代前半にかけてしょっちゅう着物を着ていたころは、
色もの柄ものの半襟もよくかけていたので、
それにあわせて足袋も、色ものや小紋柄のものをよく履いた。

それで充分満足したのだろう、
いつしか半襟は白か生成りのものばかりになり、
足袋もそれにあわせて、白か生成りのものばかり履くようになった。

足袋のことで、忘れられない思い出がいくつかある。
そのうちのひとつは、20代もおしまいになって初の個展をひらいたとき、
たまたまご縁があって、それ以前にお会いしていた
社会学者の鶴見和子さんが見にいらして下さったときのことだ。
病で倒れられる何年も前の話だが、先生はもちろんのこと、
このころの私も着物をさかんに着ていたときで、
記念にと一緒にスナップ写真を撮らせていただいた。

足袋の思い出_f0229926_22483944.jpg

後日、その写真を見た私はひとつの失敗を悟った。
いつも颯爽とお着物を着ていらっしゃった鶴見先生の足元は
踊りをなさる人らしい隙のない真っ白な足袋だったのに対して、
私はぼってりとした赤い無地の足袋を履いていたのだ。

・・・お客さんを迎える側の自分がはたして色足袋でいいのだろうか?
別に悪いことはないだろうと思う。
ことさら気にするような問題でもないかもしれない。
でも、私個人にとっては、こういうシチュエーションでの色足袋は
なんとなくきまりが悪いような感じがしたのだ。

以来、人とお会いするようなときには意識して白足袋を履くようになり、
だんだん好みも変化してか、半襟も足袋も、
色柄ものは次第に引き出しから駆逐されていった。

けれども、他の人の足元には寛容でいたいと思う。
かつて私自身も遊んだように、色柄ものの足袋の楽しさや実用性、
人それぞれの好みや似合い方というものがある。
それにいつの日か、また色ものを履きたい日が
来ないとも限らないのだから・・・。
by team-osubachi2 | 2010-09-06 00:34 | 着物のこと | Comments(0)

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


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