先生、左様なら

今日はまた朝から冷たい雨が降っている。
私的行事でバタバタの先週末、訃報のお知らせがハガキで届いた。

私が専門学校を卒業して以来、
実に16年もの間公私にわたってお世話になった
アパートの大家さんのおばあちゃんであり、
また、私には最初の茶道の師でもあった先生が
二週間ほど前に、97歳で旅立たれたという報せだった。

f0229926_14391698.jpg

お洒落が好きで、好奇心にあふれ、
また着物の趣味も着こなしも垢抜けていて、
家元から籍を抜かれたあとも、毎回かならず炭火に釜をかけ
自由に愉しく、さまざまなお茶のお点前や作法を
それでもキッチリと教えてくださった先生だった。
不肖の弟子は、いまやお点前の初歩もすっかり忘れてしまったけれど・・・。

二十歳で入居し、その後勤めていた会社をさっさと辞め、
イラストレーターとして独立した後も
何かにつけ応援してくださり、お家賃を持っていくたびに、
いつもお菓子や果物を添えて
帳面を戻してくださったことも今は懐かしい。

人生の喜怒哀楽をすべて経験し尽くして迎えられた最期は
どのようなものだったろうか・・・。
きっとその瞬間には、思い残すことは何もなく、
ただ早春の光にのってスッと旅立たれたのに違いない、と想像する。

それでは、先生、左様なら。
本当に長い間お世話になりました。いつの日かまたお会いするまで・・・。
合掌。
by team-osubachi2 | 2011-02-28 14:59 | 日々いろいろ | Comments(2)

灘本唯人展のお知らせ

イラストレーション業界の大御所で、私の絵の師匠でもある
灘本唯人先生の個展が、この2月28日(月)より6日間
外苑前にあるギャラリーハウスMAYAさんで開催されます。

メイン会場のMAYAさんでは、サンデー毎日で連載されていた
諸田玲子さんの「お順」など時代小説のさし絵を展示。
また、MAYAさんの後方にあるMAYA2では
灘本先生の蔵書コレクションから画集、写真集、絵本などが
展示販売されます。(入札方式)

今はもうクローズされた灘本塾の我ら元塾生が交替で
MAYA2での蔵書販売をお手伝いいたします。
(私は3/1、3/3の夕方まで会場にいます)
今では絶版となっている日本や海外の面白い画集や絵本もいろいろ出るようです。
時代もののさし絵や、古い絵本などにご興味のある方は、
ぜひぜひ会場にお越しくださいませ!

*『灘本唯人展』(時代小説さし絵と蔵書)
2/28(月)〜3/5(土)11:30〜19:00(最終日は〜17:00)
ギャラリーハウスMAYAにて TEL:03-3402-9849


f0229926_2372021.jpg

*画像をクリックしていただくと大きく表示されます


ギャラリーハウスMAYA
http://www.gallery-h-maya.com/
by team-osubachi2 | 2011-02-27 22:22 | お知らせ | Comments(2)

売る人と買う人

おとといの大人の着物女子の集まりでは、
絵美さんは優しい春霞に、さまざまな色が交差している
紅花染めのいかにも春らしい紬、
朋百香さんはゆうなで染められた明るいグレーの久米島紬、
そして私は泥染めのドッシリ土色の久米島紬、と
その人それぞれの春の装いだった。

同じ久米島紬でも、朋百香さんのゆうな染めのものと
私の泥染めのものとでは雰囲気がまるで異なる。
当然のことながら、織り手さんも、糸もデザインも異なり、
織られた年代も違うのだから、考えてみればあたりまえのことなのだけど、
反物の状態ではなく、カラダに立体的にまとわれた布を見比べて
同じ産地のものでも、布自体の個性ってこんなにも違うんだなあ〜、と
あらためて感心してしまった。

f0229926_16392697.jpg

私の久米島紬は10年ほど前にリサイクルで買ったものだ。
都内のとあるデパートの呉服売り場の一角で
スペースを設けて売られていたリサイクル着物の山の端に
ポッと掛けられて展示されていたこの紬・・・。
どことなく力強さがある布にフッと目が吸い寄せられて、
手にとってよく見れば、深い泥染めの色に
沖縄ならではの絣模様、その絣足の様子もすこぶるいい。
・・・まさか、久米島紬?
寸法も自分にピッタリで、着た様子もほとんどない。
見ているうちにアドレナリン値があがってきた。
値段は?というと、たとえリサイクルであっても
当時の久米島紬としてはありえない値札がついていたので
思わず売り子のおばちゃんに訊いてみた。

「これ、久米島紬ですか?」
おばちゃんは「信州(産)よ、信州!そんなあなた、
久米島がこんな値段で出るハズないじゃないの〜」
「・・・そお〜ですよねえ?・・・これじゃ安すぎますもんね」
はて、信州にこんな紬ってあったかなあ?と疑問に思いつつも、
いったん手を離したあと、今度は別の女性がやってきて
これを見つけて同じ質問をした。「あれは久米島?」
売り子のおばちゃんはふたたび同じ答えを言って、
その女性も「そうよねえ」と言って他所へ行ってしまった。

その様子を見ていたら、私はまた手にとってみる気になり、
ためつすがめつしたあと、思い切ってカケのつもりで買うことにした。
ええ〜い!もしダメならダメで、琉球絣のつもりで着ればいいや!

f0229926_16463211.jpg

後日、この着物を着て歌舞伎座へ出かける途中、
「青山 八木」さんへ立ち寄り、この織り物の正体を視てもらった。
当時すでに何度も久米島へじかに買い付けにいっていた八木さんは
「これ、久米島紬ですよ。っていうか、久米島でしかないんですけど」
とお墨付きのひと言をくれた。
「やった〜!!」と私はカケに勝ったつもりで喜んだのだが、
八木さんは「これを信州だと言って売ってたんですか?
わかる人がどんどんいなくなってしまって・・・」と、
呉服を扱う業界の側の問題を嘆いていた。

そのひと言で、こちらはなんだか急にビミョーな心持ちになった。
そうか、別の面から見れば、そういう問題があるワケか・・・。
どちらも着物が好きで、片方は着物を売り、もう片方は買う。
売る側が知らなかったせいで、あちらは損をし、こちらは得をした。
また逆に、こちらが知らないせいで損するコトもたくさんあるだろう。
この一件があってから、つくづくと思った。
買う買わないは別として、本物をたくさん見て知っておくというのは
とても大切なことなんだなあ〜、と思ったのだった。
by team-osubachi2 | 2011-02-26 00:44 | 着物のこと | Comments(4)

永田町 黒澤

・・・というワケで、前日に準備しておいた着物を着て
昨日は着物仲間であるすいれんさんのご案内で、絵美さんと共に
まずは「永田町 黒澤」というお店を訪れた。

いまやトホホな首相官邸や議員宿舎、ザ キャピトル ホテル東急など
新しい大きな建物にぐるりと取り囲まれた中にあって
とつぜん時代からそのまま取り残されたかのような
昭和の匂いがする建物がお店だった。

f0229926_10383694.jpg

世界のクロサワとのご縁が深かったお店は、
黒澤組の美術スタッフが外観や内装にかかわったそうで、
だからか全体的に映画のセットみたいな雰囲気が漂うお店だ。

通された一階奥にあるお座敷の一室・・・。
政治が今よりもダイナミックだった頃の永田町の料亭らしい造りで
いい大工仕事、いい建具仕事が見てとれる。
小体で瀟酒なお庭と、立派な床の間には
黒澤監督自らが描いた大きなカラー絵コンテ
(てゆーか、まるで絵画!)がかけてある。

f0229926_10493991.jpg

しつらいの立派さに少々ビビりつつ、でも
いただいたお料理がとても美味しく
季節のお料理も手が込んでいて目にもごちそうだったけれど、
なんといっても産直の野菜と
鹿児島黒豚とんかつが美味しかったのなんのって!

f0229926_10564865.jpg

でも、ここは手打ち蕎麦がまた美味しいらしいんである。
我がいやしんぼ人生における痛恨事はただひとつ!
アレルギーでお蕎麦が食べられないコトなのであ〜る。
アレルギーが発覚するまで、ほんの数度、美味しいお蕎麦を経験したために、
食べられなくなってから残念なことこの上ないんである。
着物仲間がいただくお蕎麦を横で眺めつつ、
私は柔らかく風味がいい黒豚とんかつを堪能した。

f0229926_1142996.jpg

しかし、毎度楽しい着物女子会。
女子・・・婦女子全般は、年代にかかわらずいつでもどこでも会話の花が咲く。
つくづくそういう生きものなんだな〜と思う。

さんざんに食べておしゃべりしながら
場所は「永田町 黒澤」から「青山 八木」へと移動。
私は10年近く訪れることがなかったお店だが、
ここに移転するそれ以前から、店主の八木さんの着物に対するポリシーは
常に一貫していて揺るぎがない。
雑誌などで拝見するだけでも、森田空美さんとのコンビネーションで
この10年のご活躍ぶりはいわずもがな、である。
あれやこれや、眼福、垂涎ものの反物や帯を見せてもらい
最近八木さんを贔屓にしている着物友だちのお買い物を眺めて楽しんだ。

f0229926_11214167.jpg

この日の夜、着物友だちと別れてのち、外苑前のギャラリーに立ち寄ってから
国立小劇場で定例のTBS落語研究会へ行ったものの、
連日の寝不足と昼間のコーフンの疲れで、
志の輔師匠、歌武蔵師匠の噺以外はいい心持ちで船を漕いでおしまい。
会場で一緒になった別の友だちと、
仕事で志の輔師匠を撮りに来ていたカメラマン女子と合流し、
軽くお茶をして帰宅したころにはカラダはくったくたにくたびれていた。
さすがにもう若くはないなあ〜・・・。

でも、数日前に確定申告も無事済ませて、
ひさしぶりにまる一日たっぷり遊んで、羽根をのばした気分だ。
さあ!今日からまた頑張ろう!

永田町 黒澤
http://9638.net/nagata/
by team-osubachi2 | 2011-02-25 11:43 | 食べる | Comments(6)

菜の花の色

三寒四温とはよく云ったものだと思う。
こないだまで寒かったと思ったら、
一昨日あたりからまた気温があがってきている。

春もそこまで来ている明日は着物で出かける予定。
お昼間に、大人のきもの女子会でランチをしにゆき、
夜は毎月恒例のTBS落語研究会へ。
袖を通すつもりで引っ張り出したのは、オーソドックスな久米島紬。
日に日に明るくなる春の日差しのもとで着るには
泥染めの色はちょっとばかし重いようだけれど、
でも、春は土と親しむ季節でもある。

f0229926_16401099.jpg

むかし、バスでよく通った新宿若松町にある民芸品店の備後屋さん。
そこで買った先染めの無地紬の名古屋帯はまっ黄色い菜の花の色。
そろそろ派手になってきたかな〜?と思いつつも、
ときおりこんな泥染めや藍染めの着物にあわせて楽しんでいる。

泥で染められた土の色に、こんな菜の花色の帯をあわせて
電車の帯留めをもってくれば、さしずめ気分は南房総の菜の花畑。
るるる〜んるん・・・♪♫
これで私流の春の装いの出来あがり〜!
by team-osubachi2 | 2011-02-23 11:49 | 着物のこと | Comments(6)

フリー稼業の迎春

本日、無事、確定申告を提出。
独立した年から、毎年かならず自分の足で提出しに行き、
ハンコを捺してもらって帰ってくる。
税務署員にチェックされ、ダン!ダン!ダ〜ン!!と
書類に捺印される瞬間がたまらない。
これが、フリー稼業として
自分なりの甲斐性を感じる瞬間なのである。

f0229926_1512734.jpg

今年は去年より早く出来てよかった〜。
これでようやく心置きなく春を過ごせるぅ〜。
by team-osubachi2 | 2011-02-22 15:04 | 日々いろいろ | Comments(2)

何度見ても・・・

先週末の金曜は、所用で都心に出たついでに
お気に入りの出光美術館へフラリと寄ってみた。
帝国劇場のすぐ脇にある小さな美術館だけれど
なぜかここが好きで、銀座や有楽町に出て時間があるときには
ギャラリー気分でちょこちょこと足を運んでしまう。

ただいまは「琳派芸術」展の第二部が開催中だ。
さすがに琳派は人気があるからか、平日の昼すぎとはいえ
わりと地味な普段の展覧会よりも人が多かった。

しかし、琳派はいいなあ〜!好きだなあ〜!
ここはわりと小さな美術館ながら、琳派に限らず、
ちょいと渋めのコレクションがよろしくて
小杉放菴や仙厓義梵なんかも大好きだ。
そして、歳をとるほどに、好きなものが少しずつ増えていく・・・。
いいものは何度見てもいいし、好きなものは何回見てもいい。

無料のお茶を手に、この美術館の展望窓から、
旧江戸城(皇居)の様子をぼんやり眺めまわすのも好きな時間だ。
これからも、都心にでて時間があるときには
ちょこちょこ立ち寄りたいものだと思っている。



f0229926_04150.jpg


*イラストレーションの無断使用および複写・転載を禁止します

出光美術館
http://www.idemitsu.co.jp/museum/
by team-osubachi2 | 2011-02-22 00:04 | 時代もの画 | Comments(2)

焼き大根のさっと煮

先週末、都心へ出たついでに、美術館やらギャラリーを回って帰った。
帰宅すると、もうとっぷりと日が暮れてしまい、
夕飯の支度も手早くやらないと
あっという間に夜が更けてしまうことになる。

野菜箱に大根がまるまる一本あったので、
焼き大根のさっと煮をこしらえることにした。

f0229926_1185768.jpg

皮を剥いた大根をあまり分厚くならないように乱切りにして、
少しだけゴマ油をひいたフライパンで、やや焦げ目がつくまで焼く。
こうすると、大根の煮物も早く仕上がるから時間のないときには大助かり〜!

ほどよく焦げ目がついた大根をお鍋に移して、出汁昆布と水を入れ、
水が温まって煮立つ前に調味料も入れてからひと煮たち。
そのあと、お肉だとか練りものだとか葉ものなど
好みのつけあわせを一緒に炊いて、煮上がったらおしまい。

f0229926_11174286.jpg

この日はぶた肉としらたきを一緒に炊いて、
「肉じゃが」ではなく「肉大根」にしていただいた。
まだまだ寒い日もあったりして、出来立てアツアツの大根は
地味ながらも食卓の主役になってくれるんである。
by team-osubachi2 | 2011-02-20 11:25 | しみじみご飯 | Comments(8)

きいちのぬりえ

先日、近くのシネコンへ映画を見に行って、
軽くお腹を満たそうと降りた階の途中に駄菓子屋さんを見つけたので、
つい吸い込まれるようにしてお店の中に入った。

うわ〜、キケン!さまざまなお菓子や小さなおもちゃが
ところ狭しとあちこちあふれんばかりに置いてあって、
何か一つでも買おうものなら堰を切ってしまいそうだった。
でも、ここはグッ!とこらえて、よくよく検討して一つだけ買い物をした。
・・・「きいちのぬりえ」。

f0229926_8413180.jpg

ちいさい頃、お膳の上や畳の上に腹這いになって
色鉛筆やクレヨンを散らかしながら、
「ぬりえ」の言葉の意味もわからないまま
それこそ夢中になって遊んだ「ぬりえ」。

実際私が遊んだのはもう少し後の時代のものだと思うけど、
パッケージの可愛らしさに惹かれて手に取った。
塗って遊びたい気もするけれど、このままとっておきたい気もする。
ん〜・・・ん!当分の間、おひなさま気分で
机にでも飾っておこう、かな。
by team-osubachi2 | 2011-02-18 08:55 | 買う | Comments(8)

里芋ごはん

もう半月ほど前のコトだ。
毎週届けてもらっている野菜箱のその日の里芋がけっこう悪くて、
思わず食品会社へクレームをつけたくなったけれど、
「でも・・・」と、ひと呼吸おいて、
どうやったら美味しく食べられるかをまず考えた。

痛んだところを取れるだけとったら、
残りは煮ころがしにも味噌汁にも足りない量だったので、
甘辛く煮付けて里芋ご飯にすることにした。

f0229926_2305552.jpg

小口に切った里芋を小さなホーローの鍋に入れて、
出汁昆布と少しの水とみりんと醤油で炊き、
汁が煮詰まって少なくなったら、最後に鰹削り節を入れてもうひと煮立ち。
それを炊きあがったご飯と手早く混ぜ合わせたら出来上がり〜!

去年の暑さの影響で、根菜類もダメージが大きかったと聞く。
わずかでも美味しく食べられて、お腹もふくれたせいか
ごちそうさまを云うころには、不満は納まっていた。
ん〜・・・ま〜いっか。

こんなコトでは、清く正しいクレーマー(?)になるには
失格かもしれないけど、でも、
美味しいと思えるご飯でお腹を満たすと、
ちょっとした不満や不機嫌はどこかへいってしまったりする。
少しでもいいから、美味しいって思えるものを食べるのって
日々の暮らしを穏やかなものにする効果がある・・・かもしれない。
by team-osubachi2 | 2011-02-17 01:15 | しみじみご飯 | Comments(4)