カテゴリ:着物のこと( 417 )

ヤモリの帯留め

一日中曇って、南からジメジメとした湿気っぽい空気が流れてくる中、
カメラマン女子・武藤嬢のお誘いで、昨秋に続き、
劇団花組の楽しいオトコ芝居を観に行ってきた。
(花組ヌーベル『番町皿屋敷』/座 高円寺にて)

お芝居は楽しく観つつも、途中むさぼり寝てしまったりもしたので、
まあ、その話は置いておくとして。
この日の武藤嬢は、キレイな緑色の濃淡と白い線が効いた格子紬に
爽やかな生成り色地にポップな花鳥が型で小紋染めにされた
カワイイ名古屋帯といういでたち。
私の方は、着慣れてきたゆみはま絣に、少し早いが、生成りと藍色で
ざっくりと市松に織られた麻の八寸帯という組み合わせ。
そしてこの日は「ヤモリ」の帯留めをつけた。

一昨年、青山ゑり華さんの店頭で見つけ、すぐに気に入って買った
日野譲さんの「電車」と「ヤモリ」の木彫の帯留めだ。
(レーザー彫刻ならではの細密さとお手頃価格が気に入って、
その後「帆船」もリクエストして作ってもらった)
とくにトカゲものが好きというのではないが、
なんとな〜くオンナっぽくない辛口の雰囲気が気に入っている。

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ちなみに、イモリとヤモリは違う生きものだ。
(イモリは両生類。ヤモリは爬虫類)
都会の住宅街でも、夏の夜などに
どちらかを見たことがある人は多いだろう。
6月に入って、緑の色もだんだん濃くなり、それにともなって
小さな生きものたちの動きがますます活発になってきている。
私にとってはこんな帯留めも、夏から秋の間、
季節の装いを楽しむアイテムのひとつなんである。
by team-osubachi2 | 2011-06-07 22:33 | 着物のこと | Comments(4)

春先のこと、青山ゑり華さんへ出しておいた黒紋付の着物や、
喪の帯の手入れが済んだものを引き取りに行ったさい、
「やっぱり喪の席には袋帯より名古屋帯がよいのでは?」
という話になり、思案の結果、喪の袋帯を京袋(開き名古屋)帯に直してもらい、
ついでながら、切り落とした余り裂で
喪のバッグを仕立ててもらうことにした。

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数日前にそれらが出来上がったと連絡があり、
昨日、受け取りがてら見てみたところ、あがりは上々だった。
紬や小紋といった普段着やお洒落着のお直しを「どうしようかな〜♫」
なんて考えるコトなら、しょっちゅうやっているけれど、
こんな喪帯のお直しとバッグのお仕立てなんて、
お店の側から提案されなければ考えもしなかったコトだ。

当時まだ嫁ぎもしないムスメのために、
早いうちからさっさと喪の一式を誂えた
いかにも富山県人な母親に話をしたら、きっと喜ぶことだろう。
ま、こんな親孝行もあったりする・・・かな?
by team-osubachi2 | 2011-05-24 14:26 | 着物のこと | Comments(2)

家紋を洒落る

先日、Mちゃんの着付け特訓をしていたとき、
Mちゃんが着ていた無地っぽい織りの着物を見て、
「刺繍で何か紋を入れてもいいかもだね」と話をした。

何年か前に大きなお仕事をいただいたさい、
40歳記念に・・・と、人形町の錦やさんで誂えた灰色無地の結城紬には、
私の実家の家紋を刺繍で入れてもらうことにしたのだが
なにせ岡田の家の家紋は、丸に算木(三ツ木とも?)といって
やたらに硬いデザインの家紋だ。
http://bit.ly/ij1Obt

この硬いデザインがどことなく自分の性分に合っている気がして
私は嫌いではない。・・・嫌いではないのだが
わざわざ刺繍で入れるには硬すぎてつまらない。
お茶人さんがよくなさる点々点と輪郭を縫う陰紋にするのもつまらない。
そこで考えたのが、家紋の丸をとっぱらって
算木の部分を少し大きくし、三色の糸で繍いつぶしてもらうコトだった。

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自分なりに考えた三色は「花、草木、水」の色。
それを絵の具で描いて、おおよその色見本にしてお願いしたところ、
こんな洒落紋に仕上がった。
担当さんは「モダンな加賀紋みたいに見えますよ」と言っていた。
優雅でかわいらしい花模様の加賀紋はどうも私には似合わない。
どうで礼装ではない着物だもの。
こんな家紋の遊び方があってもいいだろう。
by team-osubachi2 | 2011-05-20 08:17 | 着物のこと | Comments(6)

青い花・藍の花

天気予報では、今日は
この夏はじめての真夏日だとかなんとか云っていて
朝から気温がどんどんあがっていた。
西向きの部屋の窓にかけようとすだれを買いに
隣駅近くにある荒物屋さんまで買い物に行って
坂道をのぼって帰ってきたら、さっそく汗だくになってしまった。

こんな季節に袖を通したくなるのが藍木綿だ。
先日、世田谷にある妙壽寺でやっていた一衣舎さんの展示会へは
ゆみはま絣の単衣木綿に、紬地の染め帯という気軽な格好で出かけた。

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とっても好きで春によく締める青い花の帯は、
かつて16年間も住んだ杉並区にあったアパートの大家さんが
染織の趣味で描いたローケツ染めの帯だ。
最初、これを買い求めたご婦人が
「何年も前のなんだけど、使わないうちにもう若くなっちゃって。
岡田さんになら似合いそうだし」と一度も締めないままのを
着物を着始めたばかりだった私に下さったものだ。
20年たった今でも締められ、まだこの先も締められる重宝な帯のひとつ。
好みとしては藍染めの縞紬や木綿絣によくあわせている。

さて、私のゆみはま絣は、いってみれば普及クラスではあるけれど、
着るほどにカラダによくなじみ、またあまりシワにもならず、
なんといっても汗を気にしないでいいから
実に気(着)やす〜い着物なんである。
自分で手入れをしながらおばあさんになるまで袖を通すつもりで
ずいぶんと地味なものを選んだものだが、
私のような太い「ボサ眉」の顔にはこーゆーのが映える気がしている。

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先日、浦 令子さんが代表をつとめる「ぬぬぬパナパナ」の
リレー日記に、浦さんの紹介で村井弘昌さんとおっしゃる
藍作りをしておられる方の日記が紹介されていた。

専門的な知識はないが、ときおり藍を作る人というのは
なんだか神職に属しているかのような錯覚を覚えるときがある。
とても地道で地味な作業に、どことなく
崇高なものを感じるのは私だけではないだろう。
(およそ染めや織りにはそんな霊気に通じる部分があるような感じがする)
手塩にかけられた蓼藍すくもは、
やがてどんな染織家や職人さんの手元にいくのだろう?
そしてどんな糸や布に染められるのだろう?
労をいとわず藍を作る人々に、そして布を生む人々に、
幸多からんことを祈りたい。

ぬぬぬパナパナ「ぬぬパナ・リレー日記」
http://nunupana.com/diary/
by team-osubachi2 | 2011-05-10 14:23 | 着物のこと | Comments(10)

リフォームひかえ組

目下、世の中も我が家も節電中である。
個人事業主としての自分も、緊縮財政発令中につき「節銭中」である。
今年の着物のわずかな予算はすべて黒紋付の手入れに費やされ、
もう鼻血も出ないありさまだ。
・・・な〜んて、そもそもそんな予算はどこにもなくて
いつもいきあたりばったりでやりくりしてきた。

私の着物のベースは、実家の母親が
まだ私が着物に興味を持つ以前から誂えてくれたもので、
それに自分で買い足して数を増やしていったものの、
その大半は古着屋さんやリサイクル店で買ったものだ。

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いつか直そうと思って余裕のあるときに買っておいたものの、
私の懐具合が改善されるまで、箪笥にも納めてもらえずに
着物箱に入れられたまま日の目を見ずにひかえている
古着や新古品や襦袢地なんかが何点かある。

この格子アンサンブルは平紬だし、羽裏を二枚用意して
二代目の袷コートにしよう。丈はフルレングスにして。
今あるのはもうボロボロになってきたしなあ〜。
からし色に飛び絞りの小紋は、寸法直してこのまま着物として着るべきか?
でも焦茶色のざざんざ織りにあわせて羽織にしたいのよね〜。
濃桃色と紫の絞りは、カメラマン女子の友だちの家で
いただいてきたんだったっけ。
錦紗みたいに柔らかくて薄いから、これは自分でほどいて洗って
二部式の襦袢袖と裾よけにしようかな〜。
木綿の下に着るのに良さそうだし。(でも、それっていつやる?)
・・・などと、あれこれ使い道を考えている。

どんなに早くても、次に洗い張りに出せるまでには
けっこう時間がかかりそうだ。
ときおり風にあたったりしながらも、リフォームのひかえ組は
それまでジッと箱の中で辛抱強く待っている。
by team-osubachi2 | 2011-04-15 00:13 | 着物のこと | Comments(6)

満開だけど・・・

このあたりはようやく八分咲きの桜も
都内はすでに満開だという。

明日は久しぶりに面白そうな舞台を観に出かける予定で
箪笥から引っ張り出した帯。
うう〜ん、満開の桜とバッチリかぶってしまうが
今を逃すと、もう来年まで出番がない・・・。

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いまどきはめずらしい真っ白い緞子の地に刺された
長艸さんのところの桜の帯。
これを手込めにしてから、もう十何回目の春ではあっても
締めた回数はそれよりも少ない。
花と同様、桜模様の旬もまた短い。

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(追記:この日あわせた着物は、もう25年ほど前に
母親が「ワケあり」品として買った白大島。
赤い極小の蚊絣地に白く二羽の蝶が飛んでいる。
いい大島だけれども、ワケあり部分を避けたため、
断ちあわせが悪い仕立てになってしまったとか。
もっとも、そんなこともおかまいなく袖を通しているが、
私にはめずらしく優しい色目の組み合わせ)
by team-osubachi2 | 2011-04-07 08:59 | 着物のこと | Comments(8)

黒紋付きのこと

昨日、いつもの美容院へ行った帰りに、
青山ゑり華さんへ寄り、お手入れに出しておいた
喪服・・・いや「黒紋付き」を引き取りに行った。

昨秋、実家に帰省したさいに、実家にあった私用の喪の着物一式をひきとり
手元に置いておくことにしたのだが、
日本海沿いの家にかれこれ20年も仕舞われっぱなしだった黒紋付や帯は、
うちで風を通す程度ではどうにもならないほど経年の臭いがひどく、
今後のことを考え、ゑり華さんへお手入れに出しておいたのだった。

こちらも、もうかれこれ20年、着物のことだけでなく、
お仕事でもお世話になっている社長の花岡さんと話をしていて、
今回はじめて気付かされたコトがある。

黒の五つ紋の着物は「喪服」なのではなく、
本来の意味でいえば、これは黒の五つ紋付きの正装着物であり、
「その黒紋付きを、喪の場に着るというだけの事です」と教えていただいた。
ああ〜ら!そ〜なんだ〜、迂闊ぅ〜!!

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そういえば、先日亡くなられた私の最初の茶道の先生(江戸千家)は
一番最後の最後にいただく高位のお免状の授与式には
黒の五つ紋を着たとおっしゃっていた。
「邦楽の方たちなんかもそうですよ」と花岡さん。
あ、そうだよね。うん、無地の黒紋付きに錦の帯という姿は
さぞや格好いいだろうと想像できる。

もっとも、今どきの結婚式など、一般人にとってのおめでたい席に
裾模様のない黒紋付を着るような人はまずいないだろうし、
自分自身はそんな邦楽や茶道の師範になるような世界に
身を置いてはいないので、私がこれらに袖を通すのは、
自分と相方の両親との別れが訪れたときだろう。

昨日はこの他に、手入れのすんだ袷帯が本当に二重太鼓用だったので
これを切りつめて京袋(開き仕立ての名古屋帯)に直してもらうことにし、
切ったその生地を活かして、喪のバッグを仕立ててもらうことにした。
また、これもついでながら喪の草履もお願いしておいた。
つくづく出費だなあ〜と頭が痛くなったりもするのだが、
いつ「その時」が訪れても慌てないよう心しておきたい。
これに袖を通すのは、もっとうんと先でありますように・・・と祈りつつ。
by team-osubachi2 | 2011-03-30 10:10 | 着物のこと | Comments(0)

横段の着物

昨年の暮れ近く、熊本を小旅行したときに
着物ライターさんの紹介でお会いした熊本市水前寺にある田崎染工さんに、
後日、これもご縁だからと思い、リサイクルで買っておいた紬の着物を一枚
洗い張りに出しておいたのだが、それがおととい私のもとに帰ってきた。

買った値段からいっても、そう上等な代物ではないのだろうが、
以前はうすらぼんやりして見えた古着物が、人の手にかかって水をくぐり、
裏もまっさらなものに替えてあらたに仕立てあげられ、
まるで息を吹き返したように元気になって戻ってきた。
絹も本来のツヤを取り戻したように見えて、なんだかとっても嬉しい。
悉皆さんやお仕立てさんの仕事はマジックだな〜!といつも思う。

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この紬は、全体的に薄紫のスモークがかかったみたいな印象の着物で
やや浅い茄子紺、グレー、薄紅色の3色のボーダーが
一見入り乱れているようでいて、
バランスよく一定の間隔で織られた横段の着物だ。
縞や格子の着物が大好きで何枚か持ってはいるのだが、
横段の着物はこれがはじめて。
タテ縞はともかく、ヨコ縞で気をつけないといけないことは
カラダの線、ことに胸元や下半身のラインが浮きあがってくることだろうか。

好きでよく読んだ幸田文著『きもの』の中にも
主人公のるつ子が、だんだん娘らしくカラダが育ってきたときに
ヨコ縞の着物で少しばかり悶着するところがでてくる。
もっとも、胸もお尻も「扁平ちゃん」で中年真っ盛りな私には
その手の心配はもはや無縁だったりするけど・・・。

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ボーダーのバランスやデザインにもよって違いはあると思うが、
それでも横段の着物は太ってしまったら着られない気がする。
果たして自分に似合うのかどうかもまだわからないけど、
いまちょうど体重を少し落とせたところだし、
地震の揺れと世の中がもう少し落ち着いてきたら、
私にはめずらしく桃色の八寸でも締めてお出かけしたいな〜と思っている。

これからもジーンズをはき続けるため、そしてこの着物を着たいがため、
体重管理はしっかり続けなくっちゃネ!
by team-osubachi2 | 2011-03-26 01:04 | 着物のこと | Comments(6)

牽引する若い人たち

去年の秋、五島美術館へ国宝源氏物語絵巻を観にいき、
いくつかの茶室がある広い庭園を歩いていたとき、
一人の女性に頼まれ、その人の着物姿の写真を撮ってあげた。
カメラにむかってポーズをとったその姿に思わず、
はて、どこかで見たような?・・・と、すぐに思い出した。
最近の和装ブログランキングで常にトップを走っている
「きものカンタービレ」というブログの朝香さんという女性だった。

私よりも若いこの女性は、着物のさまざまなことを
アカデミックに、精力的に勉強なさっておいでの様子。
お召しのお着物も、いわゆる「呉服」世界の王道をゆくような
古典的なお着物が多いように思われる。
残念ながら、そういうベタな呉服があまり似合わない私だが、
逆に、人がお召しになっているのを「絵づら」として見るのは面白く、
ときどきこの女性のブログを拝見したりするコトがあった。

その「きものカンタービレ」というブログが、
今度「美しいキモノ」で1ページものの新連載として始まったようだ。
新刊の見本が届いてページをめくる中にそれを発見したとき、ふと、
この女性は、今後の着物業界でのオーソリティになってゆくのかしら?
なれる・・・かもしれない、と思った。

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かたや、ゆうべ私の若い友だちで、我が着付けの弟子でもある
カメラマン女子が、はじめて人に着付けを教えたそうで、
その生徒さんの初の着姿を写メしてきてくれた。

カメラマン女子が私のもとを離れてから、まる3年はたっただろうか。
何かにつけ前のめりに好きなコトをエンジョイする彼女は、
着物を着て出歩いて、おしゃべりしまくる、ただもうそれだけで
まわりの「着物着たいかも」という着物ガールたちの
おおきな刺激になっているようだ。
そんなまわりの着物着たい女子たちの指南役になりつつ、
さらにあちこちで着物の魅力をふりまいている頼もしい弟子なんである。

私が着物を着始めたいっとう最初の頃の
着物研究家さんの一部の方々はすでに鬼籍に入られ、
(もちろん、いまだお美しくお元気にご活躍の先生方もおいでです)
その後まもなく台頭し、おおきなムーブメントを起こされた先生方も
いまだ現役バリバリながら、いつの間にか時が流れて
ちょっぴりずつ世代交替も進んでいるのだろう・・・と思う。

そういう私自身も、ふと気がつけばすでに中年まっただ中。
相変わらず着物世界のために、たいしたコトは何も出来ないけれど、
これからも自分自身のために着物を着て、
また職人応援団として、少しでも職人さんたちに仕事がいくよう
一人でも多く着物の着手が増えるといいな〜と願っている。

いろ〜んな好み、いろ〜んな媒体ややり方があっていい。
これからも、それぞれの世界で、いろ〜んな着物好きさん(とくに若い人たち)が
おおいに活躍して着物世界を牽引していって欲しいものだ。
by team-osubachi2 | 2011-03-06 15:06 | 着物のこと | Comments(6)

売る人と買う人

おとといの大人の着物女子の集まりでは、
絵美さんは優しい春霞に、さまざまな色が交差している
紅花染めのいかにも春らしい紬、
朋百香さんはゆうなで染められた明るいグレーの久米島紬、
そして私は泥染めのドッシリ土色の久米島紬、と
その人それぞれの春の装いだった。

同じ久米島紬でも、朋百香さんのゆうな染めのものと
私の泥染めのものとでは雰囲気がまるで異なる。
当然のことながら、織り手さんも、糸もデザインも異なり、
織られた年代も違うのだから、考えてみればあたりまえのことなのだけど、
反物の状態ではなく、カラダに立体的にまとわれた布を見比べて
同じ産地のものでも、布自体の個性ってこんなにも違うんだなあ〜、と
あらためて感心してしまった。

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私の久米島紬は10年ほど前にリサイクルで買ったものだ。
都内のとあるデパートの呉服売り場の一角で
スペースを設けて売られていたリサイクル着物の山の端に
ポッと掛けられて展示されていたこの紬・・・。

どことなく力強さがある布にフッと目が吸い寄せられて、
手にとってよく見れば、深い泥染めの色に
沖縄ならではの絣模様、その絣足の様子もすこぶるいい。
・・・まさか、久米島紬?
寸法も自分にピッタリで、着た様子もほとんどない。
見ているうちにアドレナリン値があがってきた。
値段は?というと、たとえリサイクルであっても
当時の久米島紬としてはありえない値札がついていたので
思わず売り子のおばちゃんに訊いてみた。
「これ、久米島紬ですか?」
おばちゃんは「信州(産)よ、信州!そんなあなた、
久米島がこんな値段で出るハズないじゃないの〜」
「・・・そお〜ですよねえ?・・・これじゃ安すぎますもんね」
はて、信州にこんな紬ってあったかなあ?と疑問に思いつつも、
いったん手を離したあと、今度は別の女性がやってきて
これを見つけて同じ質問をした。「あれは久米島?」
売り子のおばちゃんはふたたび同じ答えを言って、
その女性も「そうよねえ」と言って他所へ行ってしまった。

その様子を見ていたら、私はまた手にとってみる気になり、
ためつすがめつしたあと、思い切ってカケのつもりで買うことにした。
ええ〜い!もしダメならダメで、琉球絣のつもりで着ればいいや!

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後日、この着物を着て歌舞伎座へ出かける途中、
「青山 八木」さんへ立ち寄り、この織り物の正体を視てもらった。
当時すでに何度も久米島へじかに買い付けにいっていた八木さんは
「これ、久米島紬ですよ。っていうか、久米島でしかないんですけど」
とお墨付きのひと言をくれた。
「やった〜!!」と私はカケに勝ったつもりで喜んだのだが、
八木さんは「これを信州だと言って売ってたんですか?
わかる人がどんどんいなくなってしまって・・・」と、
呉服を扱う業界の側の問題を嘆いていた。

そのひと言で、こちらはなんだか急にビミョーな心持ちになった。
そうか、別の面から見れば、そういう問題があるワケか・・・。
どちらも着物が好きで、片方は着物を売り、もう片方は買う。
売る側が知らなかったせいで、あちらは損をし、こちらは得をした。
また逆に、こちらが知らないせいで損するコトもたくさんあるだろう。
この一件があってから、つくづくと思った。
買う買わないは別として、本物をたくさん見て知っておくというのは
とても大切なことなんだなあ〜、と。

by team-osubachi2 | 2011-02-26 00:44 | 着物のこと | Comments(4)