昨日は表参道のギャラリー5610で開催していた
『大羊居・大彦60年ぶりの兄弟展』の最終日だった。
台風18号から入る湿気の関係かしとど雨降る中を
友だちのカメラマン女子と一緒に見学してきた。

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大羊居(たいようきょ)の野口巧造(明治21年生まれ)と、
大彦(だいひこ)の野口眞造(明治25年生まれ)の兄弟については
いまではネットでも検索できることなのでおのおのお調べいただくことにして、
以前は雑誌などでしか見られなかった名品の数々を
じかに拝見できるとのことでワクワクしていた。

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でも、展示されていた実物は自分なんかが想像していたものよりも
もう全然レベルが違う染織品だった。

私の乏しい言葉ではとても言い表せないので、
備忘録として何枚かの写真で部分部分を撮ったものだけ
日記に残しておこうと思う。
(とはいえiPhoneのカメラでも撮りきれるものではないのだけど)

大胆に粟を描いた黒留袖。(上の写真の左側)

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こちらは訪問着(上の写真の右側)。
なんとまあ、海に潜ったことがあるのかしら?
実際海藻や岩場のお魚はこんな感じでそこに住まっている。

染めにバランスよく刺してある刺繍がまた秀逸。

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小袖へのオマージュのような見事な幕の大振袖の一部。

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小袖のカタチにした栞。15cmほどの寸法で
ちゃんと染めた絹で仕立ててあって、なんと畳紙つき!

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野口巧造作の訪問着「踊る」。
エキゾチックな模様だけど色使いも表情もバランスがいい。

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関係者の方にお話をうかがったところ、
今回のこの展示品はおよそ昭和20〜30年代に制作されたものが多いそうで
期間中、かつて工房で友禅を担当されたという職人さんが
何人か見にいらしたそうだが、いずれも女性とのことだった。

あとになって思ったけれど、あの戦争で若い働き盛りの男性たちはみな出征し、
またあの大空襲などで命を落とした工房の人たちも多かっただろうから
戦後すぐに働きだした職人さんはほとんどが女性だったのではないか?

これは私の勝手な想像だけど、生き延びたベテランの職人さんらの超絶技巧と
女性たちをはじめとする制作への根気、
そしてそれを鼓舞させた野口兄弟の高い美意識と創造性とが合致して
こんな逸品が何点も生まれたのかもしれない。

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紗綾型が浮かび上がる緞子地だろうか、
婚礼用の打ち掛けの細部も見事としか言い様がなかった。

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雑誌「美しいキモノ」さんで見て、いつか本物を見てみたかった訪問着。
野口眞造作 訪問着「衝立に鷹文様 訪問着」息をのむ見事さ!!

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そのお隣に何気に着せつけてあった訪問着も、傍に寄ってよく見れば・・・

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白地に梅が枝の黒のバランスが絶妙で感心する。
さらに裾のあたりをよく見てみると・・・

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一瞬「相良繍い?」と見まごうほど白い小粒のそれは
何と直径2ミリもないほどのビーズ玉!
その隣の編み目に刺された糸の下に見えるのはなんと螺鈿であった・・・。

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持っていったゆるめの老眼鏡じゃもう全然見えなくて、
いつもスマホにぶら下げてるルーペで20倍にして見て
ようやく判別できる超絶技巧。

想像がつくだろうか。
この刺繍をするためには、当然のことながら
ビーズ玉の穴を通す針と、その細い針の穴に通す糸が要るのである。

この一枚の訪問着を見るだけでもビックリマークをいくつ並べて見ただろう。
さりげないところに、もはや感動するしかないような技を尽くしてある。

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別の衣桁にかけられていた訪問着もスゴかった!
四色が手綱に染められた地に、文字が匹田や刺繍で表された一枚なのだが、
何がスゴイって・・・見てわかるだろうか?

左の袖口の先から全身頃を通って右の裾先にいたるまで
手綱の染めがまったく1ミリのズレもなく仕立てられているのであ〜る!
(それがどういうことか、和裁が出来る方なら
もっと肌で実感できるのだろうと想像に難くなく・・・)

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ほかにも「鳳舞桐祝文様百種」といって
同じ文様を実に180種も表現を変えて制作された見本帳とも
実験ともいえる(ある意味、業にも似た?)制作への情熱が
感じられる展示も十数点あって面白かった。

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関係者の方にお話を伺ったところ、最初撮影を許可するか迷われたそうだが、
「でも、(意匠が)出回ったところで真似できるものではないので、
だったらいっそ広めていただいて、一人でも多くの方に
見て知っていただく方がいいと思いました」とのことだった。

不思議なことに、どの着物も資料で見ていたものより
実物ははるかに上品な印象で、技の限りを尽くしてあるのに
決して Too much になることなく、見ているこちらにどうだ!と威張らない。
ごく普通に素晴らしいので、威張る必要がないのである。
きっと職人さんたちも心して仕事をしたのに違いない。

下のこの写真の雀の瞳はわずか3ミリ(もない)ほど。
ルーペでしか判別がつかない銀糸で輪郭をとって中を黒糸で埋めてあり、
その黒い目に生命を吹き込めるかのように、
ほんの一点、0,5ミリあるかなしか白糸が光のように刺してある。

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ところで、全体を撮った写真はもっとないの?とお思いだろうが、
いやあ、しょせんスマホで撮った全体像では
これまで資料で見ていた記憶の中の全体像となんら変わりないので、
こんな真近で拝見できるのも入場料をとらない個展ならでは、と
触らぬように気をつけながら、寄りばかり撮ってみた。

「神は細部に宿る」という言葉が浮かんできた美術展だった。


染織工芸 大羊居
http://taiyoukyo.com

染織美術 大彦
http://www.daihiko.com


by team-osubachi2 | 2015-09-09 15:23 | 着物のこと | Comments(8)