はがき絵を描くー7

だいぶ以前のことですが、ある華道家さんが大きな活け仕事をするにあたって
枝ものを扱う花屋さんに苔むした古い梅の木が欲しいと注文し、
それを引き受けた花屋さんは、そこここの里山へ探しに出向き、
とある里山の農家さんの敷地の先でほどよく苔むした古木の梅の樹を見つけ、
その農家さんにお話して、じっくりと交渉し、ついには樹を切らせてもらい、
花咲く時期を見極め温度調整したのちに樹は無事納品され、
華道家さんにも満足してもらえたところをテレビで見たことがありました。

花屋さんのお話では、ほどよく苔むした梅の木が年々見つけられなくなっているとのことでしたが
育ててすぐに出来る代物でなし、そうか、こんな風に調達していたのかあ〜と
そのテレビ番組を見てはじめて知ったのでした。

そのせいか、お正月など、デパートやホテルの大きな空間に活けられた見事な生け花の中に
苔むした梅の木を見ると、いったいどこから連れてこられたのかなあ〜?なんて思うようになりました。
一度展示された梅の木のその後を想像すると、華やかな場でたくさんの人に愛でられて最後を飾ったと見るか、
自然なまま人里や野にあるのをよしとするかは人それぞれでしょうか。

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つい先日相方が買ってきた「街なかの地衣類ハンドブック」を見てみましたら、
梅の木につく苔は、いえ、地衣類は「ウメノキゴケ」という名前だと知りました。
日本海側の豪雪地帯や岩手の宮古市以北は非常に稀になると記してあります。

お正月やおめでたい場によく登場する松、竹、梅を末広にちらして描いてみましたが、
梅の木にはウメノキゴケみたいな地衣類をぽちぽちと描き入れておきました。


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by team-osubachi2 | 2017-10-12 07:45 | 仕事をする

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


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