菊の帯の思い出

むかしおふくろさまが誂えてくれた着物や帯の中に、お気に入りの八寸帯があった。
誂える・・・というとなにやら贅沢なことのようではある。
が、たとえそれがドのつくような田舎の端っこにあった
ちいさな漁村内の布団屋さん兼反物屋(呉服屋)さんでではあっても、
母自身、地場産業の大手サッシ工場で働いていた自分の稼ぎの中から「娘のため」と称して、
少しずつ好きな反物を選ぶのは購買欲を満たすに充分な悦びがあったものと推察するのであるが、
そんな買い物の中にひとつ、白地に桔梗に朱い菊花の模様の帯が私は大好きだった。

二十代のうちから劇場通いやお茶のお稽古などで散々に締めるうち、
ヤケもし、多少は手垢じみたりもし、すくい織りの柄の部分が縮んだり、
廉価な木綿着物の藍色が白地に移ったりもして、
クタクタになったところで洗って最後にハサミを入れ、お太鼓部分だけを残しておいた。

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思いついて、わずかに保存してある着物アルバムを開いてみれば・・・
あった、あった!ありました。この帯を締めてお茶のお稽古をしている姿の写真が。

姉弟子さんが撮ってくださったのに違いない。ただのお稽古日だったろうか。
地味な秋色小紋にこの菊の帯を締め、もとはおふくろさまのだったという
朱い絞りの帯揚げを合わせるのも大好きだった。

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あ、先生も一緒に撮っていらっしゃる。やあ〜、お懐かしい♪
このおばあちゃまは江戸千家の茶道の先生でありながら、実はアパートの大家さんでもあった。
社会人になりたての二十歳でこのアパートの住人となり、
以来十六年にわたって家族ぐるみで可愛がってくださったことも今は懐かしい思い出だ。

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いつもお稽古のときは着物でいらした。大島でも小紋でもアカ抜けた着こなしで
将来は先生みたいになりたいな〜なんてひそかに憧れてもいた。

先生の郷里は岩手だった。ご長命でいらしたけれど、
たしか震災が起きる少し前に亡くなられたのではなかったか。
大震災後の様子を見ることなく旅立ったのは幸いでした、と娘さんがお知らせくださった。

しかし、こう古いアルバムを辿りながら思ったのは、
以前のフィルム時代の方がどれだけ写真を大事にしていたかということだ。
撮るということも、焼いてプリントで残しておくということも・・・。
デジタル時代の写真は、技術こそはスゴイことになってはいるが、
ワンショット一枚きりを撮る緊張感や、上手く写せたときの悦びや
また失敗したときの挫折感などといった感覚は失われてしまっている。

写真はやっぱり若いうちに撮っておくべきだ。
そしてプリントで残しておくべきものだなあ〜と思った。

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和室に飾り棚を置いたおかげで、ようやくその残した帯のお太鼓部分を
壁かけとして活かせるようになった ♪

明日はもう重陽の節句とか(旧暦では今年は十月下旬)。
カレンダーの上でのことだけれど、ま、わざわざ菊花を買って来て何をするでもなし、
せめてこの帯切れを壁にかけて、ただ「節句の日なんだな〜」と想うための
目印みたいなものにしておくのである。

Commented by 朋百香 at 2017-09-09 08:43 x
tomokoさま
最後はこうして飾って愛でてもらえて、この帯も本望なのではないでしょうか。それにしても、お茶のお稽古のお写真、tomokoさん若い! 私も若い頃のこんな角度のお稽古の写真、あったなぁと思い出しました。
懐かしい思い出ですねぇ。
Commented by team-osubachi2 at 2017-09-09 13:16
朋百香さん
うふふ、捨て魔ではあっても、妙に惜しむものってたまにありますよねえ。
捨てはしなくても、二十代って時期も、もっと愛でておけばよかったですねえ。二度と戻ってはきませんし。
でも、若いときには自分が年を取るなんて思いもしなかったんですもん。笑
朋百香さんの娘時代のお写真、今度よかったらこっそり見せてください。
ブログの日記にアップしてくれてもいいですよ〜。笑
Commented by 香子 at 2017-09-09 19:22 x
2つに結わえたお下げがカワユイです♪
処分熱が徐々に押し寄せてきてるのですが
写真はあると見いっちゃいますねえ。
(写りの良いのだけ残しておこうっと…苦笑)

件の本…若い着物友がそっくり引き取ってくれました。
お役に立ててくれるといいな〜なんて (^-^;;
Commented by team-osubachi2 at 2017-09-09 23:25
いま思えば、やっといて良かった〜!
この年齢で着物にお下げにじゃドン引きものですしねえ?笑

若い方に本がわたってよかったですね!「いつ見ても変わらない」って言われますが、それって「何年前のを見ても古く見えないですよね」って友だちが言ってたのを聞いて、うむ、確かにって思いました。
しかし・・・個人的にはいまの雑誌のデコルテから上の修正がキモチ悪いんですよねえ〜見てて。昔の方がお顔がまだ自然だったように思います。
Commented by sogno-3080 at 2017-09-11 06:36
初々しいTomokoさん、こんにちわ❤
お写真拝見していて、あれ誰かに似ている?っと。
Tomokoさんのイラストの、きりっとした表情の若い女性だわーー。
先生とのツーショット写真も素敵&貴重ですね。

友人たちも皆若い頃に茶道を習っていたみたいです。
それが私羨ましくてねー。今、職場に来ている先生に「一度遊びに
こない?」って誘われて心が揺れています。私の事、のめり込むのが
恐いの。
Commented by team-osubachi2 at 2017-09-11 09:08
sognoさん
むふふ、絵を描く人間ならある段階で嫌でも知るコトになるんです、
自分が描く顔は全部自分に似るってコトを。(^^;;
個人的な感想ですけど、茶道もたぶん同じじゃないでしょうか。
お点前って、その人の性格が如実に現れます。
お稽古の動作を通じて、結局は自分を知ることになるんだと思います。
大丈夫、前のめりにのめり込んでもお月謝は決まってますし、
師範を目指す必要はないし、お道具を買うワケでなし、
身近にお茶の先生と出会われたなら、せっかくですもん、一度見学させていただいて
それから考えてみて、行けそうならご縁に繋がってみるのも良いのではないでしょうか。
私もいつか再開したいなあって思います。
by team-osubachi2 | 2017-09-08 22:59 | 着物のこと | Comments(6)