雨の日の茶室

*3月26日(日)雨

朝から冷たい雨が降っているけど気にしない。
紫の和傘をさして出かけるにはとってもよい処へいくのだから。

向かった先は「都筑民家園」。
公園の脇を進んでいくと、傘越しに見えてきた茅葺きの大屋根・・・あれがそうかな?

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あらま〜!思った以上に良いところじゃない?!
うちからそう遠くないところにこんな良いところがあったとは!

年明けに葺き替えられたばかりだというまだ清々しい茅葺きの母家の手前に見えた
木々の枝先には可憐な山茱萸(サンシュユ)の黄色い花が盛りだった。

私がたどりついたのは民家園の裏手。
どこに茶室があるのかな?と、ちょっと右往左往して、
ひと気のない母家の広い土間を抜け、横丁にあった事務所で茶室がある場所を訊いた。

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何の事はなく、茶室「鶴雲庵」「輪亭」は母家の奥隣りにあった。

今日はこちらでS先生がお茶の稽古をつけられるというので、
茶室の見学がてら、お弟子さんらのお点前で一服頂戴しにうかがったのだった。

勝手口から入って広間の「輪亭」で身支度して、水屋で一席お稽古が終わるのを待った。
S先生と皆さんにご挨拶し、次のお弟子さんが準備される間、
小雨になったのをさいわいに皆さんに混ぜていただき、にじり口から入ってみた。

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床の間にかけられていたのは紫野の雪山が筆の「應諾々」という書。

S先生が禅語の「主人公」と「応諾々(おうだくだく)」についてお話されるのを聴きながら、
「お〜い、自分、どうだ〜?しっかりやってるか〜?大丈夫かあ〜?」
「おうよ、自分、どうにかやってるよ〜、まあ、大丈夫さ〜」
・・・なーんて一人で対話する情景が心に浮かぶ。
(*禅語に親しむ「主人公(無門関)」/http://www.jyofukuji.com/10zengo/2005/02.htm

禅のことも禅語もな〜んにも知らないし、
自分と対話するなんてことはこの方四十をすぎるまでやったことがなかったけど、
いまは毎日のように自分と向き合う、というか向き合わざるを得ない日々だもの。
「応諾々」・・・なるほどなあ。心にとめておこうっと。

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花は連翹(レンギョウ)と雪起し(クリスマスローズ)。

富山の日本海育ちには「雪起し」ときくと、
日本海の沖からやってくる冬将軍と呼ぶ嵐のなか轟く雷鳴のことなんだけど、
この「雪起し」はなんて可憐なんざましょ♡

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「鶴雲庵」と名付けられた小間は三畳台目。

準備のときは照明をつけたけど、点前の稽古のときには消し、
障子あかりだけの薄暗い中、お弟子さんが濃茶と続き薄茶の点前稽古をなさっていた。

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客側は小間にふさわしく、五人だったり三人だったりの少人数。
茅葺の屋根や木々から垂れる雨滴の音、ほの暗い中に浮かぶ茶器や点前する人の手の動き、
釜から立ちのぼる湯気の白さ、練ると漂ってくる茶の香り・・・。

普段は眠っている五感が一分一秒ごとにゆっくりと開いてゆく感じがなんとも心地よくて、
時間も空間もとても豊かに、贅沢に味わわせていただいたなあ〜と思った。

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おかげさまで、とても良い時間をみなさんとご一緒することができました。
お声をかけていただき、どうもありがとうございました♡

いつか古民家の母家の方もゆっくりと訪ねたいものだ。

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都筑民家園・HP

「茶室が出来るまで/Story of a tearoom」(茶室「鶴雲庵」と「輪亭」が出来るまで)


全体の流れをざっくりと紹介している動画だけど、
子どものころから馴染んだ鋸や、とんかちや、鉋がけの音が懐かしく、
各々の分野を任されて働く職人さんらの仕事は見ていて飽きない・・・。
これらの技術がこれからも継承されてゆくことを願うばかり。

Commented by ベル at 2017-03-28 11:29 x
研ぎ澄まされた空間の静謐なひと時、背筋が伸びる思いです。
最近、宮尾登美子著「松風の家」を読み終えた私にとって、茶室やお花、お軸を興味深く拝見しました。 ところで先日コメント致しました「福よせ雛」を、土曜日に見に行きました。
白鳥庭園の茶室に展示してあるお雛様を目前にして、同行した姉が着物姿で派手に転びまして救急車のお世話に。。。和室へのアプローチ(飛び石)は足元注意ですね。
Commented by team-osubachi2 at 2017-03-28 14:07
ベルさん
えええーー?!なんと!お姉さまは大丈夫ですか?
お怪我なさったのであれば、一日も早いご回復をお祈りいたします。

宮尾登美子作品は幾つか読んだだけで、そう言えば、いつか読んでみようかな?なんて
昔思ったきりでいつしか失念(^^;;。まだ「松風の家」読んだことがありません。
この日は偶然雨のお陰で足下に注意がいきました。確かによく見て踏んでゆかねば、ですね。
また、雨のお陰で公園に遊びに来る子供たちが一人もいなかったために
雨垂れを聴けるほどの静寂を得られた、とも。
時と場所にもよると思いますが、現代は和文化も古のままに味わうには
いろんな条件が整う機会も少ないのかもですねえ。

Commented by かぽりん at 2017-03-28 17:17 x
ブログありがとうございます。

いつも心が通う文章に、有難い思いでいっぱいです。
お弟子さん達は、まだまだ自分の点前に精一杯で茶室を楽しむ余裕は生まれてきません。

ちょっと、離れて見ていてくださる方がいることで、私自身とても励まされています。
「応諾々」そうなんです。
自分自身の応援歌。
気づいてくださる方がいて、本当に幸せです。
Commented by 朋百香 at 2017-03-28 20:57 x
tomokoさま
娘時代にいやいやしていたお茶のお稽古。なんともったいない事をしていたのだろう・・・と今更ながら悔やまれます。こうしてお写真を拝見すると、ああ いいな〜と思いますが、そう思える今は膝が痛くなって長く正座が出来ず・・・。
こうして時々、お写真で雰囲気を楽しませて頂いて満足しています。人生ままならず(笑)
Commented by team-osubachi2 at 2017-03-28 22:27
かぽりんさん
こちらこそ、いつも胸に響くお茶をありがとうございます。
お弟子さん方のお点前などを拝見していて、もう自分はふたつの流派もごっちゃになっているし、思い出せないところもいっぱいだしで、もしまだ稽古してもらう側であったら、茶室はおろか、お軸の言葉も頭の中を素通りして、自分なりに解釈するような余裕はなかったかもしれません。笑
ほんの数えるほどでしたが、茶事を体験させていただいたところで茶道とのご縁が切れ、いまはゆる〜いお客として座ってゆったり美味しく味わえたらそれで良しと思いました。
おかげで先生のお茶に感じ入る余裕が生じているのかもしれませんです。笑


Commented by team-osubachi2 at 2017-03-28 22:38
朋百香さん
やっぱりいやいやするのって身につかないですよね。それでも若いうちは身体がのみこんでくれて、のちに思い出しやすいってこともあるのかもしれませんが、でも、まあ、たしかに人生経験を積んで理解が深まるころには身体がきかないっていうことになりますかねえ。苦笑
立礼のような茶室でお客さまが腰掛けていただけるお席があればご一緒できるかもですね?ぜひそういう機会があることを祈ってみます!笑
by team-osubachi2 | 2017-03-27 23:42 | 出かける・見る | Comments(6)

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


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