結城紬と赤い帯

今日の午後、ちょこっと南青山へお出かけしてきた。
ひさしぶりで灰色の本場結城紬を引っ張り出し、
それへ赤い帯をあわせてみた。

やや深みのある大人向きな茜色の生紬の地に、
木版で大きな更紗の花模様を墨色だけで摺った洒落袋帯。
手に入れた当時よりも今の方が似合うような気がした。
(写真では色が出ない〜〜〜)

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かれこれ十年ちょっと前に自分で誂えた無地の本場結城紬は
買った当時でも、自分にはまだ早いということは分かっていたから
数回着ただけでしばらく箪笥で寝かせていたけれど、
あれから十年たって少しは素直に着られる年頃になったかな?・・・と、
袖を通してみたものの、さて、どうだろうか、
実際布にはまだ柔軟でない硬さがあって、また、着る自分にも
何かすこし足りないものがあるような気がしないでもない。

結城紬と赤い帯_f0229926_2239543.jpg

Facebookにこの着姿をあげたら、伝統工芸の世界に造詣が深いある方から
「結城紬、人としての年季が求められますよね。
私は洗い張りまでした結城紬に、いまだ着負けします。
多分、成熟が足りないのです。」というコメントをいただいた。
・・・あ、それだな、と思った。

がしかし、そうは思ったけれども、
これを着ない限り、この結城紬は決して柔らかくはならない。
ちょっぴりジレンマではあるが、己れの未熟さをさらけ出す覚悟で
この結城にもっともっと袖を通そうではないか。
やがて自分が人として練れてふっくらとなったときには(なれるのか?)、
この結城も身に添うよう柔らかくなっていて欲しいものである。

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今日訪れた先は型染作家の津田千枝子さんの
個展が開かれているふたつの会場。
ギャラリー2104では、壁に張られた津田さんの帯の端裂の数々を見ていると
つい口を出てくる感想を通して、見知らぬ人同士でも
いろんな会話がはじまり、そこへギャラリーの様子を見にいらした
津田さんご本人も加わってしばし歓談。
とても愉しいおしゃべりのひとときを過ごした。

そのあとご一緒してすぐ近くの「青山八木」さんへ移動し、
こちらでも“布茶さん”( http://nunocha.exblog.jp )と再会したり、
そのお連れさまや八木さんのお客さま方と一緒に
作品をいろいろと見せていただいた。

津田さんの型染作品はいずれの布も染めもとても素敵なものばかりだったけれど、
さて、帰宅して普段着に着替えてから珈琲を一杯淹れて一服しているとき、
なぜか心にひたひたと寄せてきたのは、素晴らしかった帯の数々よりも、
津田さんご自身をはじめ、ギャラリーでお会いしたお手伝いの方、
布茶さんやそのお連れの方や、後からいらしたみなさんとは旧知の方々の
人と成りや和気あいあいとした場の余韻だった。

ことにこなれた結城紬に、津田さんの帯をさっくりと締めておられた
布茶さんのお連れさまの年輪を重ねてふっくらと優しい着姿に
強く惹かれるものがあった。
ちょっとした動作や言葉のかけ方に現われていたもの・・・
言うなれば “人としての魅力” というものだろうか。

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私も・・・私もそうなれるかしら?なれたらいいなあと思う。
そして自分らしい新しい年代の着物をこれから楽しんでゆこうと思う。
いつか人間の中身と着物の成熟とが合致する・・・
そういうときが来ると信じて。


Commented by sogno-3080 at 2015-12-09 16:03
しっとりとした雰囲気が、良いわあ。
帯の「大人っぽい赤」、惹かれます。

ちらりとのぞく、襦袢の赤はキュートですね。
着物ライフ愉しんでいらっしゃいますね♪
Commented by team-osubachi2 at 2015-12-09 19:01
sognoさん
ぼちぼち赤を身につけても赤負けしない、といいますか、赤からパワーを貰えるくらいに回復してきました。
(本当にダメダメだった去年は赤い色は着られなかったです)
、、、てゆーか、普段用のお襦袢2枚が半襟かかってなくて(^^;; これさいわいと洗い替えの襟のついてた赤いお襦袢を着たというのが真相です。笑
Commented by 神奈川絵美 at 2015-12-09 23:52 x
こんにちは! 私も赤系の襦袢の袖に目が行きましたよ。帯と着物、そして襦袢がしっくり、いいハーモニーを奏でているような印象を受けました。
確かに、渋めの色の結城って、着る側の年季というのか、人間的に熟した、こなれた感じが要求されますよね。私はまだまだだなあ・・・。
Commented by team-osubachi2 at 2015-12-10 00:59
絵美さん
私もまだまだの未熟者です。ですが、自分が未熟なんだって分かっただけ成長しているんだと思いたいですね。笑
藤田嗣治の挿画展を観に行ったとき、圧倒されつつも感じたことは「ああ、自分はまだまだだ。でも、待てよ、それってまだ伸びる可能性があるってコトじゃん!そうだ、自分にはまだ伸びしろがあるんだ。それってなーんていいんだろう!」って。笑
だから今思うんですよ、未熟であるというのはいいコトだなあって。お互いじっくりいきましょうよ、時間はまだまだありますから。
Commented by セージグリーン at 2015-12-10 07:44 x
無地の紬(私の結城も似たような銀ねずです)に、墨一色で更紗模様の茜色のおみ帯、もう私好みもいいところです!私もベナレスシルクのサリーをリメイクした軽い蘇芳の帯がありますので、今度合わせてみます。
紬って、エスニックな布を大抵は受け入れてくれる懐の深さが頼もしいですよね。

どうしてどうして、しっくりお似合いですよ。
でも、ご自身で「まだまだだ」と思われるのですね。
それこそお書きの通り、成長の糧であり、Tomokoさんには伸びしろたっぷりありますもの。
かく言う私めも、還暦過ぎてもチョロチョロ彷徨う魂を抱えた未熟者ですが、えへへ、、、。
Commented by team-osubachi2 at 2015-12-10 08:31
セージグリーンさん
たしか去年はじめの個展のときにお召しでしたでしょうか?鼠の色は明るくも深くもバリエーション豊かでいいですよね。あわせる帯には、和の古典模様はもちろん、アジアも欧米もござれな懐の大きさもありますよね〜♡
いま箪笥にある着物はいずれも大好きなコばかりで、どれも自分にとてもよく似合うと思っていますが(笑)、未熟にも未熟の良さがあると思えるようになりました。そこがこの結城を買った当時と現在との大きく違う部分かもしれません。
by team-osubachi2 | 2015-12-08 23:19 | 着物のこと | Comments(6)

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


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