昭和の友禅の華(江戸友禅篇)

南青山は骨董通りの『青山ゑり華』さんへ伺い、
花岡社長に人間国宝・木村雨山さんと
加賀友禅についてあれこれ教えていただいたあと、
「もしお急ぎでなかったら、ちょっと面白いものがありますから、
これも見てみませんか?」とおっしゃっていただいたので
「ハイ、喜んで!」とふたつ返事で返して畳の上に広げられるのを待った。

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濁りのない淡灰色に現われたのは
キリリとシャープな顔つきをした白牡丹であった。

これはどなたの?・・・と訊くと、「山田貢さんのです」
山田貢さんって・・・「網干紋で有名ですよね」
ああ!それならわかります。
網干の模様は好きできっと何度となく拝見しているハズです。

その人間国宝・山田貢さんのめずらしい白牡丹の色留袖だった。

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江戸の友禅は藍などの色合いが美しい。東京の気候風土にぴったりだと思う。
この牡丹も、京都や加賀の友禅にはないいかにも江戸好みの表現ではないか。

最初に箔が置かれていると思ったおしべの芯や
葉におかれた金色の水玉は、よく見ればそれはすべて
細い金糸の細やかな繍いだった。

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顔を近づけてさらに見惚れたのは、白い花びらの表現。

自分は染織の素人だから、技法の詳しいことはわからないが、
白い胡粉だろうか、不透明な白で際立たせた花びらの中に
糸目糊で抜けている(染まっていない)絹地の線が見えているだけなのに、
まるでエンボス加工(凹凸をつける平面加工)を施したかのように
浮き上がって見える立体感があって、
思わずルーペを出して染めの表面にジッと見入ってしまった。
・・・シ・・・シビレる♡

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むかし読んだ司馬遼太郎さんの『功名が辻』でだったか
山内一豊の妻千代女が京都に留め置かれた時期に、
洛中で綺麗な端布や裂を集めてはその端切れで
自分のお針子たちに継ぎあわせの美しい衣装を縫わせ、
自分は普段通りの着物のままで、その綺羅な創作着物(?)をお針子に着せ
洛中を歩かせて評判を呼びお喜びだったというようなお話を読んだけれど、
(千代紙の語源ともいわれているが)
もしも私も大名夫人なくらいお金持ちで道楽がゆるされるなら、
自分は着なくていいから、ぜひともこんなたいそうな着物を
美しく着こなせる女子に着せてみたい!
帯はどんなのをあわせようか、髪はどんな風に結わせようか、
ああ〜、どんなにか愉しいことだろうなあ〜♪・・・などと、
この色留袖を前にしてそんなことを思った。

f0229926_17411420.jpg←麦の穂もまた
山田さんがよく描かれた
モチーフであるとは
後になって知った

藍の地に染め出された麦の穂の染め帯も拝見したが
糸目糊の線の巧みさ、染め色の微妙な違いにため息が出たところで
この日の取材は完了。
いずれも花岡社長の手元で大切に保管されている
昭和に生まれた友禅の華々を見せていただき、
何度もお礼を言ってお店を失礼した。

ここ数年、個人的な勉強ばかりが続く。
でも、今はインプットするだけでいい。
ゆっくりゆっくりと自分の中で発酵して、
いつの日かアウトプットするときに活かせたら・・・と、そう思う。

外はザーザー降りの雨だったけれど、
見たものの豊かさで体いっぱい膨らんだキモチになった。
・・・よきかな、よきかな ♪


Commented by 神奈川絵美 at 2015-08-21 22:42 x
こんにちは! 私もじーっと画面に顔を近づけて
白牡丹の花びらのおうとつを確認しちゃいました。
おっしゃる通り、江戸好みのちょいスパイシーな
色合いに、白が引き立ちますねえ。
下の、加賀友禅の色と比べると
歴然とした違いが! 勉強になりました。
Commented by gongxifacai at 2015-08-21 23:33
アウトプットの日を楽しみに待っています。
Commented by team-osubachi2 at 2015-08-22 12:20
絵美さん
はい、ギャラリーや博物館でもこんな風に間近には拝見できないので、とても勉強になりました。
もっとも、自分にとっては染織としてではなく、今回は描く技術とその向こう側、目には見えないですけど、そちらの方が大事な学び事でありました。
しかし、友禅の見事さは心がとろけるような何かがありますねえ〜!織の良さはひところに比べて広く浸透した気もしますが、逆にこういう本物の友禅の良さが狭まってしまった部分がありますかね?
勝手な言い分ですが、庶民向きでなくていい、一部の富裕層にでもいい、絶えずのびやかに息づいていって欲しいものだと思いました〜。
Commented by team-osubachi2 at 2015-08-22 12:22
gongxifacai さん
カメの歩みのまま、まだまだトンネルの中を右往左往していますが、いつかはきっと。
(って、いつ、、、?(^^;;)
Commented by 風子 at 2015-08-22 12:42 x
いいですね~ 美しい。
やはり江戸友禅好きです。
富裕層じゃないけど 纏ってみたいです。
こういうの 悪目立ちするとかって なかなか着られなく
なってしまっていて淋しいです。

下の加賀友禅も私のイメージとは違っていて いいなあ、これなら着てみたい、と思いました。
そんなに遠い昔というわけでもないので、変遷というの
はあるのですね。
Commented by team-osubachi2 at 2015-08-22 21:42
風子さん
もうこの一枚だけで何分眺めていられたか、です。笑
お値段ももの凄いですが(ほとんど非売品に近い?笑)その値に負けないくらいのパワーがやっぱりありますですねえ。
もっとも、着るものといえは着るものなので、そこは考えてしまう部分も、、、なくはないですよねえ。
江戸の友禅といえば、9月3〜8日南青山のギャラリー5610である大羊居と大彦展があるらしいですね。楽しみです!
*情報、こちらでもあげておきますね
by team-osubachi2 | 2015-08-21 18:07 | 着物のこと | Comments(6)