昭和の友禅の華(加賀友禅篇)

今日は朝から雨の木曜日・・・。
そういえば、今週の月曜日も雨だったが、その雨の中、
南青山は骨董通りの『青山ゑり華』さんへうかがったのだった。

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それより先のことだが、先日銀座和光で展示されていた
人間国宝・木村雨山さんのあおい紋の小振袖を見て、それまで関心がなかったくせに、
突然全身にビビビビビー!っと強烈な衝撃を受けて帰ってきたのだけれど、
ことに何がって、その色遣いと糸目糊の線の表情にシビレてしまい、
たとえわずかでもいいからぜひ他の作品も真近に見てみたい!と思ったからだった。

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そこで、以前からお仕事でもお世話になっている
加賀友禅を扱うお店『青山ゑり華』さんに相談してみたらば
「いくつか資料の本と、面白い帯が一本ありますよ」とのことで
個人的に取材させていただくことに・・・。

ちなみにここ青山のゑり華さんは、金沢にあるゑり華さんから独立したお店で
現在それぞれの花岡社長兄弟のお父さまは、
これも金沢にある『えり虎』さんから独立してお店を構えられたお人でいらした。
ゆえに、加賀友禅には縁もゆかりも、さらには造詣も深いお店なのである。

f0229926_8402079.jpg←コレコレ!
衝撃を受けた作品。
昔の写真だし
色が全然違うけどネ

見せていただいた木村作品は、花岡社長の私物である塩瀬の染め帯だった。

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お太鼓のポンと描かれた鰈が一尾。
前柄は浅蜊がころころとみっつよっつばかり、なんとも洒脱で心憎い帯であった。

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うかがえば、これは花岡さんのおば君がお母さま(花岡社長のお祖母)から与えられ
何度か締めたのを後に花岡社長が個人的に譲り受けて、
ほどいた状態で保管している「非売品です」ということだった。

さらにいろいろとうかがえば、
国の伝統工芸品としての指定が定められる以前の加賀友禅には
いま現在の加賀五彩による染め色だけではない顔料ありの臈纈ありので、
さらには箔あり(そうだ!金沢こそ金箔の故郷ではないか?!)に刺繍ありで
作者や職人が持てる技術を自由闊達に用いて
思うままに作品を生み出していたらしく、
それをうかがって「ああ!どうりで!」と合点がいった。

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木村雨山さんの作品はたった二点しかちゃんと見ていないのだけれど
発色が現在の加賀友禅とは違うのである。
なんていうか、もっと深くて、もっと強い。

そして、糸目糊の線の表情も均一にキレイな線というのではなく
実に直感的(もちろん技術あっての上)で、とてものびやかなのだった。
細かく、まるでヒソヒソ話をするかのような
かそけき線でさえもおおらかなんである。

そんな伝統工芸品指定より先の前時代(?)に修行した
他の昭和の加賀友禅師さんらの作品も何点か見せていただいた。

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いちがいには言えないかもしれないが
国が伝統工芸品産業という規定の枠にはめて保護した分だけ、
現在の加賀友禅は(良いか悪いかは別として)
それ以前の加賀友禅とはどうも一線を画す結果になってしまったようである。

廃れつつある伝統工芸の類いに関して、単純に「国の保護があればいいのに」
・・・などと思っていた私には目から鱗が落ちるような発見だった。

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ため息が出るような大振袖もひろげていただいた。
ヘタな染めであれば野暮ったくなるような色の組み合わせだのに
衣桁にかけられたこの衣装は見る人を圧倒する。
少女から大人へと脱皮する十代も終しまいか
二十歳になりたてのお嬢さんに着せてみたい♡・・・そんな一枚。

それにしても、なんとまあ難しい赤と緑の遣い方であろうか!?
この色を選択し染める技術とセンスと覚悟の程が伝わってくるではないか。
若いころは無知で見る目もなかったせいで、
こういう本物の良さはわからなかったなあと思う。

f0229926_914545.jpg←これもパワフルな
水野博さんの作

自分が纏いたいとか、趣味じゃないから着ないとかいう些末な事ではなく
ただただ目の前いっぱいにひろがる友禅の色と柄の海に圧倒されながら、
そのくせ好きなだけ溺れていたいと思うひととき・・・。
こういうのを本当の「眼福」というのだろう。
自分の中の引出しが、またさらに豊かになったような心地がした。

(江戸友禅篇に続く)


by team-osubachi2 | 2015-08-20 10:58 | 着物のこと | Comments(0)