ドラマ『ちゃんぽん食べたか』

あれはいつの個展のときだったろう?
若い女子が一人入ってきて、私の駄作をあれこれ見てくれたあと
「どうしたらイラストレーターとして活動できるんでしょうか?
いま絵を描きためてるんですけど、どうしたらいいのかわからなくて」
というような質問を受けたので、自分の活動方法を説明してあげた。

女子はふんふんと私の話を聞いたあとでこう言った。
「実は写真も好きで、私。写真もいろいろ撮ってるんですけど」
・・・というあたりから話がおかしくなってきた。

ほかのお客さまのお相手の間、ちいさな会場をウロウロしては
たびたび私に話しかけてきて、絵に写真に、ほかにも英会話だの
クッキングにも関心を持っていて〜、と、だんだん屈託のない顔になって
話す興味の方向がバラけてきたので
「で、今、何やってるんですか?」ときいたら
「Mドナルドでバイトしてます」と言っていた。
年は27だか28と聞いた記憶がある。半ばあきれながら話を聞いて、
「いっそ結婚したらどうですか?」・・・と、喉元まで言いかけてやめた。

20代もおしまいになって、アルバイトをしながら
いまだ自分は何をしたいのか、自分はいったい何をやりたいのかわからない
・・・という人を目の当たりにしたと思った。

f0229926_10562753.jpg©NHK

さだまさしさんの音楽をちゃんと聴いたことがない。
本も読んだことがない。
でも、さだまさしさんの少年時代をドラマにした『かすていら』は面白かった。
その『かすていら』の続編で、
いま放送中のドラマ『ちゃんぽん食べたか』も私にはとても面白い。
(どちらもキャスティングがいいんだ、また)

子供のころから続けてきたバイオリンはおかあちゃんの夢でもあった。
まだ世の中を知らなくて、親の夢に乗っかってるうちはいいのだけど
でも、東京にバイオリン留学し、高校生ともなると現実の高みが見えてきて
主人公はその現実と、おかあちゃんの期待に応えねばというキモチとに
だんだん押し潰されそうになる自分を感じるようになる。

ゆうべの放送では、そんな主人公がバイオリンと決別するところが描かれていた。
そして、その決別を知ったおかあちゃんが、失望しつつ
自分の夢を子供に強いてきたことも悟るところが(台詞なしに)描かれていた。

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若いうちは何をやりたいのかわかんなくってもいいんだよ。
たとえやりたいことがあっても、天井にぶちあたって
そこで方向転換せざるをえないこともあるし、
やり通したとしても、他の人間のはるかな高みを仰ぎ見る羽目にもなり
その現実を知ってまた悩むんだもの。
どっちをいっても、人生いっぱい悩まずして前へ進むことはできないのだから。

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主人公はこの先バイオリンをやめて、
本当に自分は何をやりたいのかわからなくなる時期がくるようだ。
でも、一所懸命にもがく。必死に悩む。そこが大事なのかも。
おそらく身体も壊すことだろう。
そうして自分の中にある「音楽」を見つけることになるのだろう。

おかあちゃんのバイオリンの夢は、でも、カタチをかえて
ちゃ〜んと主人公の中の音楽を育んでいたんだろうなあ〜、と
時おりテレビに登場するさだまさしさんの姿を見て思う。

しかし、好きだなあ〜私、昭和という背景で描かれた時代ドラマが。

土曜ドラマ『ちゃんぽん食べたか』/NHK
http://www.nhk.or.jp/dodra/chanpon/index.html

Commented by いととて at 2015-07-06 10:22 x
私にはその女子の気持ちは良くわかります。早くに自分のやりたいことを見つけられた人は幸せです。一生わからないままに過ぎてしまう人の方が多いかも知れません。かといって、ほかの人に聞いてわかるものでもありませんが。
Commented by sogno-3080 at 2015-07-06 10:41
この番組、やはりブログ友さんの記事で知りました。途中から
ですが観ています。イマドキのドラマは殆ど観ませんが、これは別。安心してみていられます。時代が重なっていることもあり、そしてまた自分の一番悩んだ時期を思い出したりして、
切ない部分もあります。時代は移り、今はおかあちゃんの立場にもなっている自分。おかあちゃん、(おとうちゃんもだけど)よくぞ仕送り続けました!!私もパート代、すべてそのまま息子への仕送りにあてていたこともあったので・・
あなたの夢が、やがて大きく実を結んだんだよ、と私は強く言いたい(笑)
Commented by team-osubachi2 at 2015-07-06 11:29
いととてさん
うちの弟はいまだわからずにいる類いかもしれません。笑
でも、たとえ仕事ではなくても、自分が好きなことをやるとどういうキモチになるのか最近になって味わっているようです。
なにも好きなこと、やりたいこと、やらなくてはいけないこと、それらが生業と一致する必要はないのですよね。今だったらその女子にまた違う話をしてあげられたかなあと思います。

>ほかの人に聞いてわかるものでもありませんが。
そうそう。自分が何をやりたいか、それってその人がもうすでに持っているものですよね。キッカケは何であれ、自分で気がつくか見つけるしかありません。
Commented by team-osubachi2 at 2015-07-06 11:48
sognoさん
いいドラマですよね、しみじみといつも見入ってしまいます。
sognoさんのコメントを読んで、そっか!と、おかあちゃんの側からのそういう視点、思い至らずにいました。
『かすていら』ではそのおとうちゃんとおかあちゃんの貧窮の様子も出てきますが、東京へ留学させるなんてどんだけ大変なことか(今だって大変な時代と思いますが)想像つかないです。でも、子供にかける「夢」だからこそ頑張れたのかもしれないですね。おかあちゃんが卒業式の帰り道に泣くところ、いろ〜んな想いがこみあげたのかなあと思いまがら見てました。
by team-osubachi2 | 2015-07-05 11:42 | これが好き | Comments(4)