Pray for Beautiful Yemen

先週末のこと、とても哀しい報せを受けた。
在日イエメン人の友だちMの従妹さんが二人、
イエメン国内で起きた紛争のため
サウジアラビアからのミサイル攻撃に巻き込まれて
命を落としたとのことだった。

Mの妻であるRがメールで教えてくれて、空爆の写真と動画を送ってきた。
世界中に流されて誰もが見るニュース映像ではなく、
プライベートに送られてきた私には生まれて初めて見る本物の爆撃の動画だった。


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アラビア半島の西南端にあるイエメンを旅したのはちょうど十年前のこと。
行ってみて知ったのは、このイエメン共和国という国は
オイルマネーで潤う周辺の産油国とは異なり、
エネルギー資源に乏しいこともあって“アラブの最貧国”などという
ありがたくない言葉が冠せられることが多い。
実際農業と漁業と観光以外には
国の産業もこれといって思い浮かばない国で、国外へ出稼ぎに行く人も多い。

こういう言い方をしては変かもしれないが、その貧しさゆえか
途中経由した近代的な都市のドバイとは比べものにならないほど
古きよきアラビアの文化と香りがこの国には色濃く漂っていて、
はじめてそれを見た旅人はたちまち虜になってしまうのである。

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天空から射るように降り注ぐ太陽の光、
厳しく雄大な太古の大地と紅海やインド洋の青い海、
腰布に半月刀を帯刀する男たちと、
ヒジャブを被って何か物言いたげにこちらを見てゆく女たちの瞳。

山々の峰をびっしりと覆う段々畑は静かに雨期を待ち、
暑い午後、険しい崖の上に建つ家々や沙漠の摩天楼の街はひっそりとして
港や市場での売り買いのひとときは人々の熱気があふれる。
いくつもの町を見てまわった。
独裁的な支配者の館、昔の富豪の邸宅、古い大学の町。
はるか古代には乳香とコーヒー豆の出荷でにぎわったのもいまは昔、
すでに廃墟の町と成り果ててさびれてゆくばかりのモカの港跡。

山の麓のある街で、夜明けのアザーンを聞いた。
窓辺にいって外を見ると、塔のある街はまだ黒々として暗かったけれど
紫色をした東の空には鳥の爪のように細い月が低くかかっていた・・・。
貧しさとは決して美しさを見いだす妨げになったりはしないものだ。

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けれども、歴史的背景のもと、現在の共和国になるほんの数十年前まで
この国は北と南に分かれて戦争をしていた。
いたるところで当時の傷病兵を見かけたし、
瓦礫に埋もれたままの廃墟もたくさんあった。
戦後の復興は地方まではなかなか適わない。

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国内には鉄道がなく、移動は飛行機やバス、車に頼るしかない。
大きな道路は諸外国の融資で整備されていて
観光業ではトヨタの4WDへの信頼は厚い。
ある日、そのトヨタを運転していたドライバーの一人と喋っていたら
「いつか日本に行って暮らしてみたい・・・」とポソッと言った。
「どうして?」と聞いたら、
「日本にはあらゆるものがあるでしょ?お金もあるし」
「日本だっていいことばかりじゃないよ」
「でもここ(イエメン)よりはいろんなものがあるよ。
・・・ここには何もない」と言っていた。

もしも日本に行ったら失望するかもしれないよ。
イエメンにだって、いいものやいいところがいくつもあるよ。
・・・でも・・・ドライバーの言いたいことがわかるから黙って聞いていた。
旅人とは無責任な人種なのである。


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それでもこの国の空と大地と文化と、
懐かしみのある人々に惹かれて、春と初夏に二度旅をした。
帰国後、日本で暮らすイエメン人の若い新婚夫婦MとRに出会った。
イエメンのご飯が好きで食べたいというと、
初対面にもかかわらずこの若い夫婦はラマダン中ながら夕食に招いてくれた。
以来十年以上のつきあいになる。
初孫の顔を見にきた夫婦の家族にも会い、互いの消息を訊ねたりもする。

いまふたたび国内に広がった紛争のために
そのMとRの家族や親戚、友だち、そして私が旅でお世話になった人たち皆が
現実として危機にさらされている。

Rからのメールの最後にこう書いてあった。
「祈って。Tomoko お願い」
うん、私にも出来ることはそれしかない。

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信仰心に厚く誇り高い、そのくせ人なつっこくて親しみのある人たち。
気難しいようでもいったん受け入れてくれると懐深く受け入れてくれる。
そのだれもが平和でよりいい暮らしを求めているのに、
さまざまな問題が絡みついて紛争は泥沼のようになっていく。

私は、自分が知っている人たちや、ただ一生懸命に生きる人たちの無事と
自分が見た美しいイエメンの平和のために祈りたい。


by team-osubachi2 | 2015-06-09 11:12 | 旅をする