絵本『猫は生きている』

昨日、すみだシンフォニーホールで開かれた
すみだ平和祈念コンサートで『レクイエム』を聴いて思い出したのが、
去年の暮れに逝った親父さんが、むかし亀戸だかの建具職人の
親方のもとで小僧をしていて東京大空襲に遭ったということ。
今日3月10日は何度もあった東京大空襲の代表的な祈念の日である。

戦争をまったく知らない私にとって、
東京大空襲といえば、この絵本なんである。

早乙女勝元 作/田島征三 絵/『猫は生きている』(理論社)

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私がまだ小学生のころ、うちの親父さんはどこでこの絵本のことを知ったのか
お袋さんに言わせると、彼はこの絵本を自分の経験として
「買わんなりません(買わなくてはいけない)」と言って買ったと聞いた。

親父さんがときどき大空襲のときのことをブツブツと話していたのは確かだけれど
この本を読んでいる姿は私の記憶にはなく、
たぶん家族の中でこれを一番読んだのは私だと思う。

お話も悲惨なのだけれど、なんといっても田島征三さんの絵が強烈だった。

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物語は東京のとある下町に暮らす一家族と
その家に棲みついたのら猫一家のおはなし。
戦争の最中、ある日大空襲を受けて一家は悲惨な目に遭うのだけれど、
早乙女さんの淡々とした語り口の文章に、田島さんの、
これでもかというくらいに激しく激情的なタッチで描かれた絵が添えられている。

今あらためて見てみると、焼夷弾を落とされた町の悲惨さはまるで生き地獄で、
こんな惨劇の有り様は、もはや絵でしか
表現できないんじゃないかと思うくらいに凄まじい。
当時子供だった私の目にも頭にも「ズガーン!」と
ショックが起こるほどの衝撃だった。

怖い!怖い!・・・でもなぜか、どうしてか、この本を取り出しては
誰も側にいないところで一人くり返し読んでは泣いていたように思う。

一家が悲惨な末路をたどってゆく中で、
猫たちもまた必死に行動し、そして生きてゆく。
その、猫たちの生き抜こうとする姿に、子供の私は、
(一家が死んでゆくときとはなにか違うキモチだのに)
自分の感情も理解もできないままに泣いていた。

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いまどきはこういう強烈な絵本は敬遠されがちかもしれない。
子供には残酷だからといって遠ざけるのは間違いだろうと思うし、
逆に自分が感動したからといって、無理に子供に押しつける必要もないけれど、
大人は、こういう本も(ちょっとばかりの勇気を持って)、
子供が自由に手に出来るところに置いておくといいと思う。
昨年亡くなられたやなせたかしさんは、
子供(幼児)には、おはなしの本質を見抜くチカラがあると
おっしゃっていたけれど、本当にそうだと思うから。

30年ほど前に高校を出て東京に移り住むことになったとき、
両親に断りを入れて、この絵本を持って家を出た。
以来この絵本はずっと私の手元にある。

余談ながら、この絵本の絵を描かれた田島征三さんは現在74才。
もちろん今も元気に画業を営んでいらっしゃるのだけど、
こんなスゴイ作品を30才のころに描きあげていらっしゃったのには
つくづく敬服するばかりである。
Commented by 朋百香 at 2014-03-11 10:05 x
tomokoさま
東京大空襲の壮絶な話は母から何度も聞かされ
ました。あまりの熱さに河に走ろうとした時、倒れていた人がグッと足首を掴んで「河にいっちゃ、いけない!」と。
その人が足を掴んでくれなければ自分は他の河に
殺到した人達のように死んでいただろう・・・と、母は
言っていました。
生と死が渾然一体となった時代だったんですね。
話を聞けば、想像はつきますが、それは実際に体験
した者にしか分からない恐怖だと思いました。
Commented by team-osubachi2 at 2014-03-11 14:38
朋百香さん
お母さま、ご無事で本当に何よりでしたね。
自分の想像にも限界があって、本当にそれを経験した人にはまったく叶わないのでありました。うちの相方のお父さんも下町で九死に一生の境目があって、戦前戦中戦後と生きてこられた生き様は尊敬に値するものだと思っています。
この大震災をくぐり抜けてきた方々も(いまなお現在進行中もありますが)きっとそうですよね。お話をテレビやラジオで聞くにつれ、なんてえらいことなんだろうって。。。震災地の復興には、やっぱり日本が戦後立ち直っていったくらいの時間はかかるのかなあ?とぼんやりそんなことを考えています。
by team-osubachi2 | 2014-03-10 10:06 | これが好き | Comments(2)