翠色の帯で『レクイエム』を聴きに

本当なら昨年の暮れごろにオペラシティで聴く予定だった
モーツァルトの『レクイエム』。
ひょんなことから、その日は郷里の富山で、うちの親父どのを送るための
お坊さん達の読経に取って替わってしまった。

後日相方があらためて別の切符を取ってくれ、
今度は新日本フィルによる『レクイエム』を聴きに
ふたたびすみだトリフォニーホールへ行ってきた。

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3月10日は東京大空襲の日。今日はその平和祈念のためのコンサート。
そういえば、暮れに逝った親父どのは、東京大空襲のとき
亀戸の建具職人の親方のもとで小僧として見習いに入っていたらしい。
・・・ふうむ、これもご縁というものかな。

それじゃあ、私は黒の駒結城を着ていこうか。
合わせた帯は・・・ドシッとした翠色の伊兵衛織の八寸。
もちろんこれも古手もの。

なぜか名古屋帯には長く、袋帯には短いという中途半端な長さだったのを
自分で切ってたれ先を決め、単の名古屋帯として締めている。
(さすがに単では、おたいこ部分が多少おぼつかないカンジもあるけど)

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この翠色の帯に、道明の江戸紫を合わせるのが好きだ。
自分の中で、ことさらな色喪にしたつもりもないけれど、
お洒落着として着ることもあるこの組み合わせ。
劇場の天井桟敷あたりに座る人間には、
ハレがましすぎず、地味に沈まず、使い勝手のいいひと揃い。

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さて、ジュン・メルクル氏の指揮による『レクイエム』。
心に沁みるほど素晴らしかった。
クラシック音楽は、ズブの素人である私には知らないことばかりだけど、
どんなジャンルであれ、音楽には本当に不思議なチカラがあるなあ、と思う。

そして、新日本フィルといえば、あの3月11日の大震災の夜に
マーラーの交響曲第五番を演奏したオーケストラとしても有名だけれど、
あの日の演奏を指揮者や楽団員にインタビューした
NHKのドキュメンタリー番組『3月11日のマーラー』を
あらためて見なおしながら夕ご飯をいただいたのだった。

夜、着物や帯をたたみながら、余韻に浸っている。
Commented by cello87 at 2014-03-10 08:44 x
そういえば むかしむかし学生の頃モーツァルトのレクイエムを歌ったことがあります。多分合唱団創立何年かの記念コンサートで オケの費用を夏休みみんなでバイトをして捻出しました。私は何のバイトだったのか思い出せません。サボってしまったのではないかと 少し不安になります。
素敵な色合わせですね。無地の帯って色だけでなく 素材感もあって難しそうです。
今回4日間の東京滞在ですが、着物でやってきました。コーディネートが上手くできるようになれば 替えの帯一本だけで身軽に来れるのになあ。と思ってます。
Commented by 朋百香 at 2014-03-10 09:18 x
tomokoさま
おおー、美しい〜緑。 
緑は好きな色ですが、緑色を着ると顔色が悪く見えるので
洋服では着なかったんです。でも、帯だと顔から離れているせいか
いけるんですよね、嬉しい発見でした。
江戸紫の帯締めとよく合いますねぇ。
伊兵衛織りの帯、柔らかいのでお太鼓がどうなのかなって思いましたけど
この感じならOKですね。
Commented by lilakimono at 2014-03-10 09:30
翠色(この表現も素敵ですねぇ。)に江戸紫の帯締!
ちょっとビックリするくらいよく合ってます。
なるほど・・・・というバランスですねぇ。
新鮮です。

新日フィル、昔々は縁があって聞く機会があったのですが、震災以来久しぶりに名前を聞きました。
音楽の持つ不思議な力・・・
これ、こと音楽だけでなく芸術全般に言えることなのかもしれませんね。
Tomokoさんのお作を拝見して湧き上がってくる気持ち(懐かしかったり、恋しかったり、凛としたり)もそういうものと繋がるように思えます。
Commented by team-osubachi2 at 2014-03-10 10:14
cello87さん
ほお〜、コーラスやっていらしたんですか?!実はうちの相方も昔いっときコーラスをやっていたことがあるそうで(第九を歌い上げたところで辞めたようですが)、彼が『レクイエム』好きなので同行したのでありました。着物旅、どうでしたか?慣れてしまえば荷が軽くて済みますよね。これからもどうぞお楽しみください。
Commented by team-osubachi2 at 2014-03-10 10:21
朋百香さん
ホント、グリーン系は顔色に合わせるのがムツカシイですよね〜!
こんな色目、まずもって着物じゃあぜったい無理ムリ!!でも帯だとなぜか行けちゃいます。
藍色の着物って若い人にしか似合わないって言われたりしますけど、
こんなグリーンや茶の帯だと藍色も年配になってもほどよく着られるので
これからますます重宝するかなって思ってます。
あ、伊兵衛織のこの帯、やっぱり「くにゃん」となりますよ。仕様がないとこ、ありますねえ。ギャラリーにいらっしゃったスタッフのOさんのように、八寸でも二重太鼓にして締めればシャンとしそうですが、なにしろかなり目方がありますから、やっぱり名古屋で締めるのが軽くていいかもです。
Commented by team-osubachi2 at 2014-03-10 10:27
りらさん
この組み合わせ、もとはといえば、若いころにお茶人さん向けの本で、
石川あきさんが色無地のコーディネートされているのを見て
思いついた色あわせです。石川あきさんの色あわせも実に独特で素敵なのでした。いまは無難なのばっかり紹介されていて、グラビアとしては見ていてもの足りないことも・・・。って、実践するかと言われれば、大人しい組み合わせになっちゃうんですけども。笑

>音楽の持つ不思議な力・・・
これ、こと音楽だけでなく芸術全般に言えることなのかもしれませんね。
はい、たしかに。ただ自分は絵を描くせいか、絵とは違う音楽に何かしら、感じる、惹かれる、癒されるものが大きいのかな?って思うことあります。しかし芸術って、どんなものにもその不思議なチカラ、ありますよねえ〜。
Commented by セージグリーン at 2014-03-10 10:34 x
なんと鮮やかなグリーン、ビリヤードグリーンですね。
それもあの伊兵衛織とは、すばらしい。
江戸紫の帯締めが、目に眩しいほどに映ります。
「レクイエム」は、映画「アマデウス」の後半にたたみかけるように使われている大好きな曲ですので、平日の真っ昼間から聴いていることもありますが、理由もなく涙がハラハラ流れ落ちそうになります。
Commented by team-osubachi2 at 2014-03-10 12:37
セージグリーンさん
こんなグリーン、洋服でも身につけることはまずもってないと思いますが、帯だと締めようって思うなんて、和装の世界ってのは面白いものですね。
映画『アマデウス』、何回見ても面白いですね。音楽や歌とは違う役者としての観点からいえば、サリエリ、い〜い役ですよね。もしも自分が役者だったら、演ってみたいって思うに違いないと妄想しています。笑
Commented by sogno at 2014-03-10 17:36 x
Tomokoさんの着姿大歓迎~♪
緑と紫、大好きな組み合わせです。
私の勝手な想像ですが、なんかパリっぽい色合わせ
だなあ、とか思いながら見てました。
音楽も絵も満たされますよね~
Commented by straycat at 2014-03-10 21:06 x
tomokoさま

いいなァ、モツレクですか・・ここしばらくコンサートから遠ざかっているので、tomokoさんの記事を読んで無性に聴きたくなりました。
モツレクは本当に素敵、私もモーツァルトの作品のなかで一二を争うマイ・フェイバリットです。すみだ・・も良いホールですよね。ご主人さまはワーグナーといいモーツァルトといい、何だか私とちょっと好みが似てるような(笑)勝手にシンパシーを感じてしまうわ。お二人でコンサートなんて羨ましいです。
緑の帯、藍や泥にのせるとバッチリですよね♪
Commented by cello87 at 2014-03-11 07:28 x
着物旅も洋服一式買いに走ることもなく なんとか最終日を迎えました。
初心者の私が息子の1Kのマンションの洗面台の小さな鏡で着付けするわけですから 失敗続きです。
外に出て お店の鏡を見て 反省してます。
娘が試着室に入る度に 20分かしてもらえたいかなあ。と頼みそうになります。
旅には着物より道行をもう1枚持ってきたらよかったと思います。食事以外脱ぐことがないので 息子にまで 一回ぐらい着替えたらと言われる始末。紺からピンクの紬に変えたのにですよ。あと半襟を付け替えるか、長襦袢を1枚持ってくるか悩むところです。またいろいろご指導下さい。
Commented by team-osubachi2 at 2014-03-11 08:19
sognoさん
この日は日曜でしたし、相方にちょいとお願いして撮ってもらいました。
帯まわりを中心になるようトリミングして。
>なんかパリっぽい色合わせだなあ、とか思いながら見てました。
アラ、そうですか?嬉しいなあ。
レーベル(ブランド)ものにはまったく興味ないんですけど
パリのチープシック(死語?笑)なお洒落が好きで〜す♬
あ、フランス国旗の配色も好きなのでした。笑
Commented by team-osubachi2 at 2014-03-11 08:28
straycatさん
ああ、ファンの方々はモツレクって言うんですね〜♬
良いものですねえ、『レクイエム』って。
何しろ相方ともどもまだ片手で数えるほどしかライヴのクラシック経験がないのですが、うん、今回もとてもよかったです!
昔カラヤンが来日したときに友だちと一緒に切符をとろうとしたのですが
(まだ電話予約の時代ですたねえ)どうしてどうして。20代のコムスメにはとても叶うものではありませんでした。以来、こそさら有名な指揮者でなくても、名のあるオーケストラでなくても、機会があれば聴いてみたいなあ〜ってほんのりと思ってました。年に一回や二回でも、聴けばやっぱり愉しいですね〜。
Commented by team-osubachi2 at 2014-03-11 08:38
cello87さん
むふふ、旅ならではの経験いっぱいされてよかったですね。私も何度か京都へ着物旅してましたが、狭いビジネスホテルなんかで着替えるには、
床用に化繊の風呂敷を敷いたり、裸足で着物を着付けたり(素足のかかとや甲で着物の裾があたる位置を感じとるため)、鏡を使うのは要所要所の確認だけにしたり、移動の新幹線の中では半幅を利用するのですが、文庫など立体的な結び目では背中がイタイので平たい帯結びにしたり。
襦袢の衿は日数によって、2枚3枚かけておいて、汚れたらはずしていく方式で、とにかく荷物はなるべく軽減する方向で。。。と工夫しながらやってたのを思い出しました。
何事も経験と思いますので、どうぞこれからも愉しい着物旅をなさってください。
by team-osubachi2 | 2014-03-09 22:44 | 着物のこと | Comments(14)

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


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