言葉をつむぐ人たちの傍らで

*7月5日(金)京都は曇りのち晴れ

第一回河合隼雄物語賞、学芸賞の授賞式に出席した。
こういう文芸世界のハレがましい場に出席したのは初めてだ。
待ち合い室でも、集った方々の雰囲気は
私のようなクリエイティブ業界とはまるで違っていて、
身の置き所がなくて落ち着かない。
場内をウロウロするカメラマンさん(女子も何人か)達ですら、
報道とクリエイティブでは雰囲気が違うのである。

飲み物をいただき、テーブルのひと角に座って、
しばしマンウォッチングするうちに、
『泣き虫ハァちゃん』で担当だった編集者さんの姿を見つけて
ようやくホッとした心地になる。
授賞式が始まってからは、ドラマや映画でしか見た事がないような
「文芸の授賞式ってどんなもの?」と興味が湧いた。

まず、物語賞の受賞式に続いて、選考委員講評で小川洋子さんがお話をされ、
小川さんが個人的にとても感じ入ったくだりのお話を聴くうちに
受賞作品である西加奈子さんの『ふくわらい』を読んでみたくなった。
その西加奈子さんは、私よりひと回り若い女性で、
マイクの前に立ったとき、とても緊張していらしたけれど
話す言葉に詰まることもなく、作家らしい表現で
ひと言ひと言丁寧に言葉をつむいで感謝していらした。

続いて学芸賞の授賞式。受賞された藤原辰史(たつし)さんの作品も
これまた選考委員の鷲田清一氏の講評を聴くうちに
台所という環境からナチスにまでどう話がつながっているのかをざっくりとうかがい、
へえ〜、そういう分野の書物ってあるんだなあ〜、と
これまた興味が湧いてきて、読んでみたいものだなあ、と思ったりした。
(ホントに読むかはわかんないけど・・・ ^_^ ; )
受賞作『ナチスのキッチン「食べること」の環境史』を書かれた
藤原辰史さんもこれまたまだ30代後半にさしかかったばかりの若い方で、
京都大学人文科学研究所という面白そうなところにいらっしゃる。
スピーチにはユーモアがあり、人柄が感じられるお話ぶりもとてもよかった。


*赤いお盆を持っているのが今回受賞者のお二人↓
言葉をつむぐ人たちの傍らで_f0229926_9273934.jpg


お二人の受賞の様子と各氏の挨拶やスピーチを聴くうちに、
言葉だけで表現する世界というものがあって
そこに生きる人たちはこんな風に言葉をつむいで生きているのだなあ〜
・・・という感慨を持った。

その感慨を自分の中で感じていたら、そのうちに
ああ、私はこういう人たちのつむぎ出した言葉の世界に添える絵が描きたい!
「私はやっぱり挿し絵をやりた〜い!」・・・と
心の中で声をあげている自分を感じたのだった。
ああ、そうなんだ、自分はそういう分野で生きていきたいんだな。

この気持ち・・・、この、自分の中から訴えてきた
私自身の本音をはっきりと聞けただけで、
今回京都まで足を運んだ甲斐があったというものだ。
自分の気持ちを再認識する機会をいただけたコトに深く感謝した会だった。

西加奈子『ふくわらい』/朝日新聞出版
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14077

藤原辰史『ナチスのキッチン「食べること」の環境史』(水声社)/Amazon
http://amzn.to/12eaFJP
Commented by 香子 at 2013-07-08 10:28 x
文芸の香りがしますねえ、イイ、イイ♪
挿絵のお仕事いっぱいされてくださいねえ (^-^)/

↓京大は行った事はありませんが、以前京大にお勤めだった友人から
ブルーのグラとフリーハンドの京都の地図柄の楊柳のハンカチを
いただきました。これがあれば迷子にならないねと笑い合いました☆
Commented by fuko346 at 2013-07-08 12:35
こんにちは
御無事でお帰り お疲れ様ですた~ (*^_^*)
良い刺激を受けられたようで 何よりです。
そういうことって ほんとうれしいものですものね。

↓京大にはご縁があって 非公認(?)の院生も一年したことがあります。
学食もちょくちょく利用させてもらいました。
次回はぜひ どうぞ~~~。
Commented by team-osubachi2 at 2013-07-08 14:27
香子さん
はい〜、初めてでしたが、こういう場の空気、とっても新鮮ですごくいい刺激を受けてきました。河合先生とのご縁、あらためてありがたく思いました。
京都大学のお土産、相方に他にあったものを説明したら、「お金渡しておこうかとチラッと思ったんだよね〜」って、いろいろ(カードセットとか)あったら嬉しい!ってのがあったそうですが、今回はたまたま相方も出張に行ってましたのでね。お小遣い貰いそびれちゃいましたよお〜(笑)。ま、またいつか一緒に行けたら京大覗いてみようと思います。もち、私は学食狙いで(笑)
Commented by team-osubachi2 at 2013-07-08 18:07
fukoさん
お土産だけでもなんだかエラい重く感じましたが、ギリギリ猛暑のはじめだったおかげで、なんとかへこたれずに帰宅できた〜!って感じでした(笑)。

おお、京都大学の学食、いただいてたんですね?!去年、相方と関西学院大学へ見学に行ったさいも、あそこにも洒落たレストランがあるんですが、相方ともども「学食食べたい!」ってことでそちらをエンジョイしました。ここ日吉にも慶応の学舎がありますが、いっぺんそこへも行ったろ!と思いつついまだ決行できていません。
京都大学も次回は行くど〜!(笑)
Commented by 神奈川絵美 at 2013-07-08 23:52 x
おかえりなさい~! 一連の京都旅行記、読ませていただきました。
akeさんとは初対面だったのですね。テンポの良いお話ぶり、目に浮かぶようです。
>ひと言ひと言丁寧に言葉をつむいで
私、2年ほど前にエッセイストの岸本葉子さんと
お話する機会がありまして、やはり非常に丁寧、かつ
理路整然と、それ以外ないと思うような的確な言葉を選んで
お話になっていたのがとても印象的でした。
やはり、人に文章や言葉で何かを伝えることを天職とした人は、
人一倍、言葉に対して誠実でなくてはなあ、なんて思ったものですし、今もこの記事を読んで思い返しています。
ところで京都、暑くなかったですか? ここ関東も、いきなり真夏の気候になりましたよね・・・。
Commented by team-osubachi2 at 2013-07-09 11:32
絵美さん
ただいまデス〜。先週末は横浜の方が湿度高かったように思いましたけど、この土日で京都も横浜もどっちも同じ事態になったかもですね。着物着て日傘差して歩くだけなら別に着物旅でいいんですけど、夏は荷物が多いと四倍も八倍もくたびれますよねえ〜!でも楽しかったです。
岸本葉子さんも心と体のこと、身をもって会得された言葉を持っていらっしゃるイメージがあります。
>言葉に対して誠実
なるほど、そうかもしれないです。その人の中から出てくる言葉って強いなあって思うコトがよくありますが、そういうコトなんですね、きっと。
では自分は?と問うと、う〜むむむ、自分の絵に対しては、誠実というよりいつだって精一杯 (苦笑)。もうこれでいくより仕方ないかもですが、歩いてゆくです、これからも。
Commented by cello87 at 2013-07-17 11:14 x
河合隼雄さんは7年程前 神戸で開催された1000人のチェロコンサートに文化庁長官としてみえてました。レセプションの後の懇親会でフルートを演奏されました。その日の為に練習をされてたようで 東京からご自分の先生も連れてみえてデュエットも披露されました。素晴らしい方が文化庁長官をされているのだなあと期待してましたら それからすぐ倒れられた事を新聞でしり とても残念に思いました。語学も堪能でいらして ロストロボービッチやシュタルケルとのトークも楽しかったです。
Commented by team-osubachi2 at 2013-07-17 14:37
cello87さん
そうでしたか、河合先生のフルートお聴きになられたことがあるのですね。7年前ですとちょうど倒れられる前のことですね。ご家族そろって音楽に造詣が深いご一家で育たれたようで、一度だけ取材のさいにお目にかかったのですが、本当に根っからのお好きでいらしたカンジがしました。
http://okakara.exblog.jp/14047082/
(もしご興味がありましたらお時間のあるときにでもお目通しください)
ユーモアたっぷりの軽妙な言葉が次々と出てきました。今週19日がちょうどご命日です。お懐かしいです。コメント、ありがとうございました。
by team-osubachi2 | 2013-07-08 09:54 | 日々いろいろ | Comments(8)

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


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