『遺体』映画と本、監督と原作者のお話から

昨日から3月とも思えないような陽気だけれど、
2年前の今ごろはとても寒かった。
2011年の3月11日に起きた東日本大震災のその後の報道特集が放送されたり
追悼のイベントがあちらこちらで催されている。

映画『遺体 明日への十日間』はまだ見ていないけれど、
原作となった本『遺体』は去年読んでいたこともあり、
http://okakara.exblog.jp/17279696/
先週末、青山のシナリオ・センターで、
その映画『遺体』を撮った監督/脚本の君塚良一さんと、
本『遺体』を書いた原作者の石井光太さん二人のトーク
「僕が『遺体』を通して本当に伝えたかったこと」
という会があったので聴きに行ってきた。

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2011年の11月にでたばかりの『遺体』を読んだ君塚さんは
数日後には周りに相談し、それからすぐに石井さんに連絡をとり、
年明けには会って話をしたそうだ。
石井さんは、とにかく現場に行っていただきたい、
フィクションと違って現実を描くということは
被災者の思いを描くということだから、とお願いをしたそうである。

夏になって、釜石を訪れた君塚さんは、
現地の人たちと石井さんとの信頼関係に配慮しながら
原作に登場する当事者の方々全員に会い、話をしたり手紙をやりとりして
これを映画化することについてどう思うかを丁寧に聞いてまわったそうである。
そして、誰も「ノー」とは言わなかったことで、映画制作に入っていけたのだとか。
石井さんは、そんな君塚さんの様子に
当事者の思いを「背負ってくれた」と感じたそうだ。

反対の声がまったくなかったワケでもない中で、
実際に被災地へ行ったカメラマンさんたちが自分たちには出来なかった
(カメラを向けられなかった、報道できなかった)ことだから
ぜひ頑張ってくれという声もあったという。

制作が始まってからというもの、体育館の中の様子は、
作りものとはわかっているスタッフでさえも立ち尽くし、
カメラマンもレンズを向けられないようなキモチになって悩み、
ダミーとはいえ何十何百という遺体を準備した美術さんも泣き、
俳優も毎日リハーサルなしの順撮りで“追体験”しながらの撮影だったそうである。

いつもいつも君塚さんをはじめ、みんなが「これでいいのだろうか?」という
背負ったものへの問いかけの連続で、とにかく大変だったというお話だった。

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原作者である石井さんは、自分は悲惨なコトを書いたのではなく、
あの体育館で起きたこと・・・遺体に声をかける人のあたたかさや、
遺族を支える言葉の強さや優しさ、温もりを書いたのだという。
言葉というのはすぐに消えてしまうものだから、
誰かがこれを伝えないと消えてしまう、これを消してはいけない、
という思いで書いたのだそうだ。

石井さんは「忘れてはいけない」という言い方が
正しいとは思っていないとも言っていた。
「忘れる」ということと「前に進む」ということは違うと言う。
また、遺族や被災した人たちの傷が癒えるというコトはないだろうし、
傷にフタをするか、見ないで生きてゆくかしかないところへ、
外の人間が「傷が癒えますように、いつ癒えるでしょうか」
なんて安易に言ってはいけないんだと石井さんは言っていた。

「この映画を作るのは早いのでは?」という意見や質問もあったそうだが、
この震災を知らない次世代の人たちが「知りたい」と思ったときに
報道記事だけでなく、言い伝えだったり、本や漫画だったり、
選択肢のひとつとして映画も有効なのだと言っていた。

ある青年が、石井さんに本を返してきて、
「津波で家族を失くした。自分は現地にも行っていない。
本も辛くて途中で読むのをやめた。でも、映画を作ってくれてありがとう」
と言ったそうである。
今も石井さんは、その後の様子を見るために東北へ通っている。

映画の収益はすべて寄付金になるということなので、
自分も近々見に行こうと思っている。

映画「遺体 明日への十日間」
http://www.reunion-movie.jp/index.html
Commented by sogno at 2013-03-09 08:29 x
映画にしてくれて本当にありがとう!
そして記事にして頂いてありがとうございます、と言いたいキモチです。3.11が近づくと気持ちがざわざわと落ち着かなくなります。明日は復興を応援する、復興デザインマルシェ(東京
ミッドタウン)に出かけようと思っています。
Commented by team-osubachi2 at 2013-03-09 18:29
sognoさん
まだ映画を見てはいないんですが、テレビで西田敏行さんのインタビューでも聞きましたが、西田敏行さんの心情から出た相葉が靴を脱いでシートに上がるシーンは、千葉さんご自身が「本当はそうしたかったんです」というエピソードに、石井さんが、映画になることで現実には成し得なかったコトが出来た、現実と映画がつながったと思ったそうです。
私たちにはあっという間の2年でも、被災地には長くて雲をつかむような実感のない2年という方々も多いのだろうなあ、と思っています。石井さんも君塚さんも、思うだけでもいい、自分に出来ることをやるのでいいんだとおっしゃってました。これからも関心を寄せていこうと思っています。
それから、東北を訪ねていきたいものだと思っています。
Commented by 神奈川絵美 at 2013-03-09 22:43 x
こんにちは。メディアでどんなに、何万人の方が亡くなり何十万人の方が家を失ったかということが報道されても、それが一体どんな光景だったかを知る機会は、あまりなかったように思います。そういう意味で、この映画は貴重だし、制作側の思い切りも感じます。記事の最後の方、家族を津波で失った青年が現地にも行けず本も読めない、という気持ちは痛いほどわかります。私たちはつい軽々しく、困難を乗り越えて…なんて言葉を使いがちですが、乗り越えるもなにも、その「ふもと」にすら近づきたくない気持ちを、理解しなくてはと思います。
Commented by りら at 2013-03-10 06:00 x
私もその番組を見ていました。
そして、連日放送されているNHKスペシャルで知らなかったあの災害の現実を見るにつけ、心が締め付けられるような思いをあらたにしています。

「嫌な気持ちになることからは遠ざかりたい」という風潮が大きくなっているようですが、現実を知ることからしか生まれない鎮魂や希望もあるのではないでしょうか?

他でも書きましたが、この映画、こちらの映画祭に招聘して欲しいものです。
Commented by team-osubachi2 at 2013-03-10 12:31
絵美さん
本当ですね。報道で知ることもひとつの手段ですが、実際ボランティアなどで現地に行った友人知人に聞くお話の方がとても現実感のある内容だったりして、自分なりにアンテナを張って情報を集めるのが一番なのですが、それでも被災地や被災者や犠牲者の身内や友人ら当事者の人たちの本当の心の内は、自分のような部外者には想像してもわからないのだと思うのでした。君塚監督が言ってらしたように、思うだけでもいい、なぜなら思っている力が周りを動かす力に繋がっていくのだと聞いて、そうだなあ、これからも自分なりに関心を持ち続けていたいなと思いました。
Commented by team-osubachi2 at 2013-03-10 12:43
りらさん
つい先日のニュースの中で、柳田邦男さんがこの政権交代と円や株の動きに浮き足立っている経済のことと震災とのことをおっしゃってましたが、自分も(せいぜい自分なりにですけど)現状を知って、出来ることを考えていきたいと思いました。
>現実を知ることからしか生まれない鎮魂や希望もあるのではないでしょうか?
石井光太さんはそういう意見の持ち主です。私も同意見です。でもそれって本当は一番しんどくて難しいコトなんですよね、きっと。
嫌なコトを見ないで目の前にある良さげなものに飛びつくほうが簡単なんですもん。逃げる方が楽なんですもん。でも、そうやっちゃうと、ツケは必ずあとでまわってくるんですけどねえ。この国のこれからの行方、どうしたらこの大難関を糧としてくれるでしょうか?見守りたいと思います。
Commented by 香子 at 2013-03-10 23:39 x
厚手のハンドタオル持参で観に行く予定です。
Commented by team-osubachi2 at 2013-03-11 00:06
香子さん
はい、私も手ぬぐいとティッシュ紙を忘れないようにします〜。
by team-osubachi2 | 2013-03-09 00:18 | 日々いろいろ | Comments(8)