モノクロームの楽しみ−2

若いころ、読む小説はもっぱら時代劇ばかりで、
仕事ではじめて小説の挿し絵を描いたのは、
たしか藤堂志津子さんの連載小説でだったと思う。

担当の編集者さんとの打ち合わせで、
現代小説はお読みになりますか?ときかれて、はじめて気がついたことがあった。
現代ものとはいえ、私が愛読していた小説はどれもこれも
すでに故人となられた作家さんのものばかり・・・。
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なんと自分が読んだ「現代もの」と思っていたものは
せいぜい昭和に書かれたもので、それはつまり前時代のものなのだった。

さすがに流行りの昭和30年代はまだ生まれていなかったのでよくはわからないが
自分が子どもだった頃の富山の田舎では、
ほとんど30年代と変わらない暮らしぶりだったのではないだろうか。
記憶にある古い家電は、まさに昭和30年代のものだったし、
流行りものの伝播は今より格段に遅かっただろう。

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それにしても、昭和時代の好きなモノクロームの映画をたくさん見ていると、
自分が生まれる以前なのに、なぜか懐かしさを覚える。・・・なぜだろう?

さすがに身内のモノクロ写真なんかを見ると、
えらく古ぼけていかにも前時代な感じもあるくせに、
昭和も終わる頃の自分のカラー写真を見ても、郷愁はあまり匂ってこない。
むしろ、少し前くらいに思っていたのに、
何十年も前の事と認識して愕然とする事の方が多い。

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郷愁を描こうなどとはまったく思わないのに、
なぜか自分の描く絵は「懐かしい感じがしますね」と言われることがとても多い。

個展の制作のためにあらためて読んだ向田邦子さんの作品も
人の心の中には普遍性がありながら、
お話の舞台が昭和のど真ん中の時代のものだからだろうか、
描いていても違和感が生じないのだった。
昭和のものは、ある意味、もう「時代劇」なんだなあ〜と思うこのごろである。


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by team-osubachi2 | 2012-09-06 08:03 | 人を描く | Comments(0)