ざざんざ織と伊兵衛織で

ずっと以前、まだ若くて井の頭沿線に住んでいたころ、
下北沢のレンタルビデオ屋さんへせっせと通って
(まだDVDなんてなかった)
黒澤明だの小津安二郎だの溝口健二だの成瀬巳喜男だのといった
名監督の映画を借りてきてはくり返し見た時期があった。

林芙美子作品はだから小説では一度も読んだことがなく、
いずれも成瀬作品の映画でしか知らない。
神奈川近代文学館で『いま輝く林芙美子』展をやっていると知り、
昨日、文学好きのカメラマン女子を誘って見にいってきた。

「放浪記」で知られるような林芙美子さんの生い立ちから晩年までの
たくさんの写真や日記、手書き原稿や書簡など資料も多く、
挿絵をやりたいと思っている私にとっても、出版された数々の本の装幀や
「めし」の挿絵など、見どころが多かった。
ああ〜、こんなの見てると、また成瀬映画を見たくなってきたなあ〜。

f0229926_7371411.jpgphoto by Naomi Mutou

ところで、着物好きの間でよく知られているざざんざ織と伊兵衛織。
名前は違っていても、元は同じ織りものだ。
どうして二つに分かれたのかは知るよしもないが、
どちらも頑固そうで手強いカンジのする紬である。

一本の糸が通常よりうんと太くて重いので、単衣に仕立てて着る着物だが、
いずれも一尺ちょいほどの見本裂から柄を選んで
オーダーしてから織られるために、
身丈がオーダーをした人それぞれの身長にあう長さしかない。
だから古着市場に出回るリサイクルものは
(内揚げがない)身丈の短いものがほとんどで、
ありがたいことに、カメラマン女子や私のようなおチビ系女子には
ちょうどいい寸法のものが多い。もちろん手に入れるか否か、
決断するにはそれ相応に悩んで算段することになるけれど・・・。

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先日のこと、カメラマン女子が銀座の某店で
格子の伊兵衛織りを手込めにしてきたということなので、
さっそく「じゃあ今度着てきて〜♪」とリクエストした。
深い灰緑色の地にベージュの格子がはいった着物で、
あわせた帯は少女漫画世界のようなバラ模様。
黒地を埋め尽くす白いバラの中に赤や黄色や青翠色のバラが飛んで、
パンチが効いている名古屋帯だ。

こちらは、藍や深緑色のやたら縞のざざんざ織りを着ていった。
一昨年だったか、洗い張りに出しもし、ツヤも増してきて
以前よりだいぶ柔らかくなってきた。
普段は生成り無地の八寸ばかりあわせているので、
たまには気分を変えて、秋らしい色のバティックの帯を締めてみた。
むかし買ったままに持っていたバティックの布も
帯にしたとたん活躍しはじめたから、これは帯にして正解だったかな。

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横浜市のはずれに越してきてまだ2年にもならないが、この日
神奈川近代文学館のある「港の見える丘公園」をはじめて歩いた。
園内には秋のバラがシーズンをむかえていて、
いい香りが漂う中でスケッチしている人たちもいた。
咲き乱れるバラに、西洋風の庭園に、古い洋館のたたずまい、
それから緑あふれる丘の上から見下ろす港埠頭やベイブリッジ・・・。
そうかあ〜、ここは横浜なんだなあ〜〜♪
楽しい着物さんぽをした一日だった。

神奈川近代文学館/『いま輝く林芙美子』展(11/3まで)
http://www.kanabun.or.jp/index.html

YouTube/ざざんざ織り・平松実(昭和54年)12分間
http://www.youtube.com/watch?v=PLzjP8y5yBI
Commented by ake at 2011-10-20 10:32 x
文士風,いや女性だから、閨秀作家風コーデがステキです。

こういう展示がある首都圏がうらやましいです。文壇から批判された芙美子、この作品「ナニカアル」で見方が変わりました。桐野作品からはいつも衝撃を受けています。


http://book.asahi.com/clip/TKY201004010230.html
Commented by team-osubachi2 at 2011-10-20 11:28
akeさん
ありがとうございます〜。プロが撮ってくれる写真ですし、せっかくなのでブッてみました〜♪(笑)。

桐野さんの『ナニカアル』(URLに感謝!さっそく見てみました)のこと、同行したカメラマン女子が展示を見ながらお話してくれました。
私自身は作品を読んでもおらず、なぜ文壇から突き上げられたのかもよく知らないのですが、林芙美子さんの、なんていうのか、生きるパワーがとにかく強くて、その出自や生き方や作品の個性(人気も含めて)って、もしかしたらキツく批判した方々自身の心中深くにあるコンプレックスに抵触しちゃったのかしら?と思ったりしました。
写真で見た、養子さんや訪問先の子供たちに触れる林芙美子さんはとてもいい顔をされており、デスマスクのスケッチもあって、生意気な言い方かもですが、どんな最期であったかを、その笑顔やスケッチに見て取れた気がしました。なかなか興味深かったです。
Commented by すいれん at 2011-10-20 19:42 x
tomokoさま
きゃ~、憧れの伊兵織りですね! tomokoさんの縞も素敵だし、武藤さんの格子も素敵! 武藤さんのお写真もいいですね。
私の伊兵織りはいずこに・・・?
Commented by 神奈川絵美 at 2011-10-20 21:20 x
こんにちは! 伊兵衛織は私の憧れなんですが、おっしゃるように生地がしっかりしていて、こなれるまで時間がかかるのかなーなんて二の足を踏んでいます(ま、予算もないのですが 笑)。カメラマン女子さんの青系の伊兵衛は、見るからに「飽きがこなさそう」な、不変の美しさを感じます・・・。
Commented by ke-nosuke at 2011-10-20 21:55
なんてノーブルな横顔なんでしょうか…(((♥)))
Tomokoさんの横顔、初めて拝見したものでビックリしました。
思わずデッサンをとりたくなるような…。
それにしても個性的なこの着物をさらっと着こなせるなんて、サスガですね。

そんな素敵な一瞬を切り取れる武藤さんの取合せもまた趣が違ってイイですね♪
お!籠にピント合っちゃいました。

昔、銀座の小さなギャラリーでの伊兵衛織の展示会を見に行ったことがありました。
あの時、無理してでも買っときゃよかったなあ…。


Commented by team-osubachi2 at 2011-10-21 00:20
すいれんさん
武藤嬢の1枚目の伊兵衛織りなんてもっと個性の強い太縞なんですが、この格子の方が着こなしやすいかもです。しかしプロが撮る写真はやっぱり大きく違いますですね。さすがです。
すいれんさんの伊兵衛織は・・・さて、どこにおわしますかしらん?京都・・・だったりして?(笑)いつかよい出会いがありますように。
Commented by team-osubachi2 at 2011-10-21 00:36
絵美さん
新しい伊兵衛織はかなり硬いです。武藤嬢の格子はまだ新しいので、ゴワつきがあります。
大橋歩さんなんかも新しい伊兵衛織に手こずっていらしたようですよね。年齢がいってから硬いものを着こなすのはちょっとしんどいコトのようでして、布がこなれるためにも少しも早く着始めることをオススメします〜。でも、絵美さんのようなヘビーユーザーなら、ぼちぼち始められば、5〜10年後にはツヤツヤのしっとりとした布になるのではないでしょうか。来年3月の桃林堂ギャラリーにいらしたときにでもいかがでしょ?織り上がるまでは半年くらい待つそうです。それくらい時間かかりますよね。
Commented by team-osubachi2 at 2011-10-21 07:06
ke-nosukeさん
いやあ〜、自前で撮る写真だったら載せないんですが、プロの腕前はやっぱりさすがなので、横向きだけちょいと記念に(?)。しかしアゴは長いわ、髪はボサボサだわで、色気のないことおびただしいですね。(笑)
伊兵衛織、私もむかし日本橋丸善のギャラリーで見ましたときにさんざん悩みましたが、とても買えませんでした。今もプロパーでは買えませんですが、古着に出回らないような色柄など見本裂の束を見てると、も〜あれも欲しいこれも欲しい!と煩悩に苦しみますですね。いつかいかがですか〜?
Commented by ひろまき at 2011-10-24 12:51 x
おぉ!初めてご尊顔を・・・ こちらのブログで初めてtomokoさんを知ったので(スミマセン)予備知識なかったのですが・・・ちょっと、想像とちがっていましたー。 
なんか、勝手にきくちいまさんのような「コロコロン」とした方、を想像しておりましたが、実際はこんなに凛とした空気漂う方なのですね~。
さて、ワタクシ、きもの歴も浅く、織物には詳しくないのでそこのところのコメントは避けまして。 バティックの布からしつらえたという帯に目が釘付けになりました。 確かにこれなら出番が多そうです! 
それからこちらの公園はけっこう近所です。 今週末はハロウィンでにぎわいそうです。 静かなときにバラを愛でに出かけることにします。
Commented by team-osubachi2 at 2011-10-24 15:10
ひろまきさん
恐縮です〜。実際の私はけっこう男顔でして、親戚から男兄弟とも間違われたことがあるほどです。なので、フェミニンな色や柄が似合いませんのです。無いものねだりで憧れた時期もありましたが、さすがにもう諦めがつきましてございます〜(笑)。
バティックの布や他のアジアの布、何本か帯にしましたが、コレが一番活躍してくれそうです。何百年も前からそうしてきたように、着物と渡来の布って所縁が深いぶんだけよくあいますよね〜。
港の見える丘が近いとは!こちらもはるか向こうにみなとみらい方面が見えてはおりますが、横浜市ってのも広いものですねえ〜!
Commented by ひろまき at 2011-10-25 10:31 x
tomokoさま
着物好きのイラストレーターorものかきさん、で初めて知ったのがきくちいまさんだったので、イメージが凝り固まっておりました。
なるほど男前さんです!そして、やわものより織りものってのもナットクです。 私は洋服でも「縞、格子、ドット」は持ち合わせがほぼ無く、なので縞の紬というのはきっとこの先着ることがなさそう、と思っておりましたが、こうしてひとさまが凛と着こなしていらっしゃるのを見ますと「あら。縞も良いかも」などとまた浮気心が芽生えるのでございます。
お住まいは「あの」、あたりかしら・・・。これまでの記事でもそう見当がついていたのですが。私も「その」あたり、ランドマークのてっぺんがちょいと見える、とこらへんにかつて住んでおりました。山下公園やみなとみらいよりも都内に出るほうが楽なのでは。 私もココに越してきてやっと「横浜市民」を実感しております。
コメント、マズかったら非表示でかまいません。
Commented by team-osubachi2 at 2011-10-25 15:34
ひろまきさん
染めの縞などいかがです?お召しになりますか?染めの縞もの、なっかなか程の良いのがなくて、私などにはかなりムズカシイです。染め縞を着こなす女性は、それこそ紬などのもっさりよりは、よほどスッキリと女の色香が漂う人じゃないかしらん?って思いますデス。
この丘の上の暮らしにも慣れました。横浜も遠くないんですけど、ついつい都心方面に出ちゃうので、横浜はまだまだ未知数でございます〜。
Commented by ひろまき at 2011-10-26 13:00 x
染の縞・・・夢二の世界です。現代モノのキモノやさん(く○りさんとか)に売ってそうです。けどなぜかやっぱり惹かれませんの。スラリ体型の方がスッと着こなしていらっしゃるとホント、ハッと息を飲みますわね。 江戸前の「粋」な感じですね。
う~ん・・・。根っから関西人の私はやっぱり花鳥風月、百花繚乱・・・とまでは言わずとも、はんなり、なのが着ていて心踊るんでございますの。
by team-osubachi2 | 2011-10-19 07:44 | 着物のこと | Comments(13)