母のお下がり

『母譲りのきもの』という本をキッカケに、
久しぶりで箪笥から引っぱり出してみる気になった母のお下がりの付下げ。

明るい鳥の子色の地に、何の花か、糊置きした線の中を
赤紫とチャコールの色で濡れ描きにしたような手描きの一枚。
さすがに半世紀も前のものであり、近くに寄ってよく見れば、
いかにも昭和時代からの経年が感じられるが、
水彩にも似たやわらかい筆遣いが好きな着物だ。

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昭和30年代当時の田舎のごくノーマルな農家から
嫁いできたときの母の着物はわずかばかりで、
後年、年齢相応の大島や礼装を一式あつらえた以外は、
長年手入れもされずに箪笥に眠ったままだったせいか
どれもずいぶん傷んでしまっていた。
その中で唯一、この着物だけは染めも生地もしっかりしていて、
なおかつ、内揚げが少しばかりあったおかげで
ギリギリ“はぎ ”なしで着られるとわかったときは嬉しかった。

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たいがいの女性はそうかもしれないとは思うのだが、
うちの母も、傍から見れば人当たりもよくやさしいところがあっても
気丈な分だけ我が強く、すこぶる情の強(こわ)いところもある。
本人は「娘時代はそんなコトなかった。
この家に来てから強くならざるを得なかったんだよ」と言い張るのだが、
もしかしたら、その気性が祖父には見えていたかもしれない。
嫁入りが決まって、せめてその角を少しでもやさしく見せようと
(まあ、そこまで思ったりはしなかっただろうが)
祖父はこれを持たせてそんな母を嫁に出した。

母のお下がりはなにもこの着物だけではない。
我の強さは、娘である私もしっかりと受け継いでいる。
(帯には多少アリでも)花柄の着物をことさら欲しいと思わない私は、
こんなことでもなければ花模様の着物には無縁のままだったろう。
私自身、若い頃よりいくぶん角がまるくなった(と思いたい)分だけ
以前よりはこの着物が似合うようになっただろうか?

近年は同系色でまとめたり、白っぽい帯合わせが流行りだけれど、
どちらかといえば、あえて昭和チックに黒帯や朱帯をあわせるのが好みだ。
やはりどこかにグッと引き締める色を持ってくる方が
性分に合っている気がしている。
Commented by sogno-3080 at 2011-09-26 09:56
優しい雰囲気のお着物ですね。
ぜひ纏われて街にお出かけ下さいませ!
やはり女性が着物を購入する(してもらう)ときは、それなりのストーリーがあるようですね。その思い入れの分だけ、やはり着物は
特別!っていう気がする時があります。
私もこれまでずいぶん沢山の人の話をたーっぷり聞かせていただきました。
Commented by すいれん at 2011-09-26 10:42 x
tomokoさま
tomokoさんがこういう おきものをお召になったところ、拝見したことありません。ぜひ拝見したいものです。
Commented by team-osubachi2 at 2011-09-26 14:09
sognoさん
お茶をやってた頃はこんなやわらかモンをちょいちょい着る機会もあったんですが、それにしてもこんなやさしい雰囲気のを着ると、なんだか借りてきた猫みたいになっちゃいそうで〜(笑)。ま、そこがこんな着物の狙い目でしょうか。ですが、今度はいつ袖を通せることやら、です。
着物にまつわるエピソードはそれこそ百人十色ですね。私も他の人たちのエピソードを聞くのが好きです〜♪
Commented by team-osubachi2 at 2011-09-26 14:19
すいれんさん
紬や木綿といった普段着はともかく、こんなよそゆき、いつ着るんだろう?ていうくらい、今は機会が少ないですね〜。今度のお出かけに?いやいや、「花」がかぶらないような機会がいつかありましたら・・・。
Commented by 神奈川絵美 at 2011-09-28 21:44 x
こんにちは! 眺めているだけでも気持ちが丸くなりそうな色柄のお着物ですねぇ。思い切り昭和風に、黒っぽいアンティーク帯を持ってくるとこれまた良い雰囲気かも、なんて勝手に想像してしまいました。
私の母は…うーん、何枚か着物はあるのですが、どれも「ああ、母の好みだな」という想定内のものばかり。変身願望とか、なかったのかなあ。。。
Commented by team-osubachi2 at 2011-09-28 23:13
絵美さん
こんにちは。着物も帯も受け継ぐ方もいらっしゃいますが、うちの母親の帯はとても締められたものじゃなかったです〜、いやはや(苦笑)。古い着物を今に着るにはやっぱり帯など新しいものをあわせると爽やかになるようですね。
絵美さんのお母さんは、絵美さんから見てその想定内というところがお母さんの人生、お母さんらしい歩みだったのでしょうか・・・。どんな思いで着物を誂えるものなのか、いろんな女の人の胸の内、そっとうかがってみたいものです。
by team-osubachi2 | 2011-09-25 15:44 | 着物のこと | Comments(6)