石井妙子「おそめ」

昨年の暮れごろだったろうか。
書店に平積みされていた文庫本のカバーに写っていた
着物姿の女性の横顔に、ふと惹かれるものを感じて買った一冊がある。

石井妙子さんの「おそめ」(新潮文庫)は、昭和の戦前から戦後にかけて、
京都や銀座の夜の街に、大輪の花を咲かせた伝説のマダムのおはなしだが、
その世界にはまったく縁のない私は、
これを読むまで「おそめ」という実在したマダムのことは
まったく知らなかったので、たいそう興味深く読んだ。

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生まれ落ちたときから、まわりの男たちに思い慕われ、玉石のように扱われ、
花のように美しく育っていく「おそめ」こと上羽 秀。
京都のみならず銀座にも進出した「おそめ」のお店には、
昭和30年代からの政財界、文化芸能世界のキラ星のような人物たちが
こぞってやってくる様子が描かれている。

その分だけ、他の女たちから受ける妬みや嫉妬は半端なものではないのだけど
石井妙子さんによると、この古風で口がかたい上羽 秀という女性は、
少女のように天真爛漫で一途なところがあるようで、
好きな男と一生添い遂げたことを心から喜んでいたようだ。
宿縁でもあったのだろうけれど、上羽 秀という女性が惚れ抜いた男というのは、
のちに任侠映画のプロデューサーとして
世に知られるようになった男性(あの富司純子さんの父親)である。

綿密な取材によって紡がれた石井妙子さんの文章を目で追いつつも、
私の頭の中はまるで「おそめ」という題名の
昭和時代の映画を見ているかのような錯覚をおこした一冊だった。

*イラストの無断使用および複写・転載を禁止します

石井妙子「おそめ」/新潮社
http://www.shinchosha.co.jp/book/137251/
Commented by 神奈川絵美 at 2011-03-02 23:47 x
こんにちは! Tomokoさんの記事を読んで、私もこの本、求めてみたくなりました。
一見華やかなのに、その実古風で口がかたい女性というのは男心をそそる、とどこかで読んだような・・・。
Commented by sogno-3080 at 2011-03-03 06:25
ビックリ~
私もこの本、つい一週間前に読み、ブログにも載せようかな、なんて思っていたところでした。
Tomokoさん、モノクロ、インパクトありますね!!
映画の一場面みたい。おそめさんの横顔、あまりにも
似ているので感激しています。
Commented by team-osubachi2 at 2011-03-03 13:00
絵美さん
このおそめさんの時代から後、時が移り、夜の世界の移り変わりも出て来るので、場所は違えど、若かりし頃にあの世界の一部を垣間見ている絵美さんにもオススメです。
Commented by team-osubachi2 at 2011-03-03 13:06
sognoさん
へええええ!偶然ですね~!この本、いたるところで絵が浮かんだんですけど、自分的にはこれが一番描いてみよっかな~と思ったシーンでした。読んでても、まるで映画みたいでしたよね。妹さんでなくても思う人は多いかもしれません、そら惚れるハズやわ、って。(笑)
Commented by すいれん at 2011-03-04 09:21 x
tomokoさま
おそめさんは有名なので、なんとなく知ってましたが、富司純子さんのお父様の事はしりませんでした。でもこの頃の話って、自分の父母なんかとも重なって、なんかちょっと重いです。懐かしさもあるのですが・・・。
Commented by team-osubachi2 at 2011-03-04 10:44
すいれんさん
私のような部外者は、ただ面白いとのん気でいられますが、でも、一歩この世界の内側にかかわる人たちや縁者にとっては、複雑な思いをするかもしれない本だなあ・・・とも思っていました。私の友達の祖父母も実名で登場したりしています。石井さんは、誤記や事実認識に誤りがあれば、すべて自分ひとりの責任と記しています。覚悟の要る事だったろうな、と思います。
by team-osubachi2 | 2011-03-02 14:16 | 人を描く | Comments(6)