むかし夢みた・・・

先月だったか、一度だけネットオークションで単衣の紬を買って以来、
ときどき良さげな物を見つけたりすると、
ただ眺めて、値段のつり上がる様子を見て遊んだりしている。

ある日、そのオークションに、見るからに上質そうな真綿紬地に
すくいで抽象的な花柄が織り出された未使用らしき洒落袋帯が、
畳紙の店名とともに紹介され出品されていた。
見た瞬間、思わず入札しそうになった。
出どころの呉服店の名前は「紬屋吉平」。
もうずいぶん前になくなってしまったけれど、
銀座の老舗のひとつだったお店だ

20年ほど前、着物デビューしたてだった私にとっては、
銀座の有名な呉服屋さんや小物屋さんの敷居がとても高かった。
中でも、当時『家庭画報』で美しい高橋恵子さんをモデルにして、
毎月洒落た着物と帯を紹介していた紬屋吉平は、
(ページを切り取って、長い間大事に保管してたっけなあ)
画壇や文壇の人々との交流話もたくさんあって、
名だたる着物好きの女性たちの憧れのお店だった。

銀座通りからちょっと入ったところにあった小さな間口のそのお店は、
20代半ばのかけだしのイラストレーターなんぞが夢みたところで
足を踏み入れられるようなお店ではなかった。
もちろん、ちゃんと心して入れば、たとえ買えなくても
いろいろ教えてもらえただろうに、今思うと惜しいことをしたものだ。
もっとも、当時の私にそれだけの器量がなかったのだから、
しょうがないと言えばしょうがないお話なのだけど・・・。

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その紬屋の名物女将であった浦沢月子さんがまだ現役でいらしたとき、
当時、ときどき私にお仕事をくださった着物スタイリストのWさんに、
あるとき女将さんのことを訊いてみた。
「月子さんは、すごくお洒落で好奇心もあって、どこか茶目っ気のある
カワイイ感じがする方よ〜」と言っていたけれど、
今あらためて、女将さんを紹介していた本で、そのあでやかな着物姿を見てみると、
スッキリと垢抜けていて、清潔感があって上品でお洒落だな〜と思う。
でもって、なによりも着物が大好き!といった風が、
20年も前の写真のほがらかで明るい笑顔から伝わってくる。

やがて、お店を閉められたあとの女将さんのかすかな消息を、
後になってスタイリストのWさんに聞いたのもつかの間、
それから着物業界は大きく斜陽して、
銀座の呉服商の顔ぶれもだんだんと変わっていった・・・。

ネットオークションに出ていた洒落袋帯は、開始6万円の値がついていた。
最終日に見てみたら、一人だけ入札があったから、
おそらくその人が落札したことだろう。
シックで洒落た花柄は、いまの私の年齢でも充分いけるような感じだったけれど、
こちらの懐事情もいろいろあることだし、
やっぱりご縁がないみたいだなあ〜、と見送った。
Commented by すいれん at 2010-10-28 09:46 x
tomokoさま
素敵ですねぇ~、浦沢月子さん。 こ~んなお祖母さん(失礼)に
なりたい! 粋にきものを着て、本当にお洒落ですね。歳をとると、きものを着る事自体が億劫になるのに・・・。 尊敬してしまいます。
Commented by team-osubachi2 at 2010-10-28 23:43 x
すいれんさん
ねえ〜、本当に。私もキレイなお婆さんになりたいな〜!なんて憧れました。そしたら、何人もの方々から「なにもそんなに慌てなくてもいいから」と云われまして・・・(笑)。
すいれんさんのコーディネートも、年齢を重ねたお洒落感があって、素敵だな〜って思います。慌てずに、後を追わせていただきたいと思います〜!
by team-osubachi2 | 2010-10-28 00:02 | 着物のこと | Comments(2)