トックリバチの陶芸

生きものの世界は本当に驚異的だと思う。
去年の暮れ、新宿副都心のあたりから、横浜のはずれにある丘の上に越してきて、
日々、身近なところでさまざまな小さき生きものを見られるようになった。

ハチの一種で、トックリバチというのがいる。
彼らは集団化はせずに、一匹ずつそれぞれに巣を作るのだが
草の茎や壁面に、唾液と土をこねたもので
それはそれは見事な「徳利」型の巣を作るんである。
(テレビで見たのだけど、これをそっと外して釜で焼いてみた人がいて、
焼き上げてみたら、ちゃんと立派な素焼き徳利が出来ていた!)

その徳利の内部に卵を一つ二つほど生みつけ、卵が孵ったあとの食料として
蛾の幼虫を狩って仮死状態にしたものをその徳利にたっぷりと仕込んでおく。
むかしテレビでこういうハチがいることを知って以来、
いつの日か見てみた〜い!とずっと願っていた。

トックリバチの陶芸_f0229926_2258597.jpg

まだ残暑が残っていた9月下旬のことだ。
洗濯ものを干していたら、目のはしに何かが映ったので
ハッ!として見てみたら、なんと物干し棹のホルダーに、
なんと私が夢見ていたトックリバチが、
知らない間にこしらえた半徳利の巣にとまっているではないか?!
きゃ〜!嬉し〜っ!!

見事な徳利の口に開いた穴の口径は約1.5ミリ。
よく見ると、徳利の中に生みつけた卵のために、麻痺状態にした芋虫を、
親バチは鋏状のおおきなアゴを使い、全身をふるわせながら、
ちょっとづつ押し込んでいく・・・。
私が見ていた1時間ほどの間に、親バチは3度幼虫を運び入れた。

トックリバチの陶芸_f0229926_22583358.jpg

この後、不注意にも私は穴の寸法を計ろうとして
徳利の縁をわずかに欠いてしまったのだが、
その直後、今度は泥団子を抱えてきた親バチは、
なんと欠けた縁をいったんキレイに溶かし、それを再利用して穴をふさいでいった。

トックリバチの陶芸_f0229926_22575570.jpg

親バチは、この場所がどうも度々揺れるところ・・・とでも思ったのか、
それからセッセと二日間にわたり、半徳利と物干し棹ホルダーとを
強固に泥で固めて、見た目は唯の土塊にして仕上げたのだった。
(最終的にはホルダーと同じ銀色に仕上げた!!)

しばらく様子を見てみたけれど、10月中に孵る様子はなかった。
どうやら卵はこのまま越冬するみたいだ。
年が明けて、あたたかくなった頃になれば、
この土塊から新しい成虫のトックリバチが巣立つだろう。
その場に立ち会いたいものだと願っている。
Commented by すいれん at 2010-11-05 09:51 x
tomokoさま
生きものの世界って、おもしろいですよね。
うちも野性の日本蜜蜂が住み着いて、いろいろ観察出来て楽しかったです。残念ながら、猛暑や台風の被害にあい、今はいなくなってしまいましたが、来年の春、また帰ってきてくれると信じて、楽しみにしています。とっくり蜂、みてみたいな。
Commented by team-osubachi2 at 2010-11-05 13:45 x
すいれんさん
本当に生きものの世界って、面白いですよね。彼らの世界を知れば知るほど、人間も彼らと同じ(以上でもなく、以下でもない)生きものなんだな〜って思います。でも人間て、どうして彼らより自分たちが優れているなんて思ったりするのかなあ、と不思議に思います。
日本蜜蜂がお庭に来てくれるなんて羨ましい!来年もまた来るといいですね〜。トックリバチ、民家のトイレの換気扇なんかにもよく来るみたいですよ。うふふ、こんな話題が出来るなんて、なんか嬉しいです。
by team-osubachi2 | 2010-11-03 22:07 | 生きものの世界 | Comments(2)

イラストレーター岡田知子の、暮らしと、着物と、お絵描きの日々


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