熊田千佳慕さんの目線

つい数日前までセミたちの合唱はもの凄くやかましかったのに、
このごろは一時より少し静かになったような・・・。
やや出遅れたセミたちが、いま懸命にお相手探しをしているようだ。

子供のころ、夢中になって読んだ絵本があった。
毛並みがつやつやしたライオンやキツネといった動物たちが、
表情ゆたかに物語の中で動いていて、飽きもせず、
くり返しくり返し読んだものだった。

その絵を熊田千佳慕(くまだ ちかぼ)さんという人が描いたものだと知ったのは、
いまから12年ほど前のことだ。
それから千佳慕さんの展覧会を見に行くようになったのだが、
大好きだった絵本の原画をはじめて見たときの嬉しさは、
何にたとえたらいいのかわからないくらいだ。

先週も、横浜高島屋で開かれていた展覧会へ見に行ってきたが、
細密な点描で描かれた絵は、退色を感じないほどに色鮮やかで、
綺麗に保存されてきた数々の作品は、
とても何十年も前のものとは思えない。

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千佳慕さんの目線はとても低い。
毎日の日課で、地面や道路に腹這いになって虫や花を観察するために、
時には“行き倒れの老人”と間違われたことも度々あったというくらいだ。
その目線で描かれた虫たちや花は、紙の上でイキイキと生きている。

いまは地球規模で、環境や生物のことがさかんに語られ、
かしましく伝えられるようになったけれど、
自分のすぐ足元にある自然に目をむける人は、案外少ないかもしれない。
千佳慕さんの絵は、自分のまわりのちいさな生きものの姿にも、
宇宙とつながる大自然を感じることが出来るということを
教えてくれているような気がする。

行き倒れどころか、千佳慕さんはかぞえ99の歳まで長命を保ち
去年8月、銀座での展覧会の会期中に亡くなられた。
映像で見ると、お元気だったころ、展覧会に来る子供たちに
ていねいに、嬉しそうに虫の話をなさっている。
清潔感のある、横浜生まれのお洒落な紳士の姿だった。
Commented by 神奈川絵美 at 2010-08-20 09:27 x
こんにちは! わぁこれは凄い! 写実的ですが写真ではあらわせないような温もりを、タッチから感じさせます。
足元の自然…そうですよね。うちのすぐ近くに六大学の一つがあるのですが、歩きタバコやごみのポイ捨てが多くて…みなそれなりに受験戦争を勝ち残って、社会問題にも関心があるはずの子たちだと思うのですけどねぇ。
Commented by team-osubachi2 at 2010-08-20 10:07 x
絵美さん
昨夜はメールの返信をありがとうございました〜。
いえ、このセミはiPhone で撮った写真なんです〜。転送を経てアップしたみたところ、なんだか絵みたいに見えるなあとは自分でも思いましたが、大雑把な私にはとても千佳慕さんのような細密画はとてもとても(逆立ちしても無理)・・・。^_^;
でも、千佳慕さんの絵に対する姿勢、学びたいものだと思っています。
by team-osubachi2 | 2010-08-19 08:38 | 生きものの世界 | Comments(2)